レティシアと雪の星都
今日は雪が降っている。
こんな暖かい所でもたまには降る事は知っていた。だけど今日が特別寒いのかと言われれば、そんな感じもしないけど、降る以上はそれなりに寒いんだろう。
こんな日はやることは一つしかない。そう、散策だ。
プルプル寒がりなお嬢さん達にも声はかけたが、
「寒いから行かない」
そりゃ冬だもん。
「濡れるから行かない」
融ければ当然水になるけど、違うでしょ?
この子達、うちに来てもう一月近く経つけど、私にお世話されているだけだ。
あの子達のおかげで気は引き締まるが、私だってダラダラしたい。あの子達とうとう下着でウロウロし出したからね。
明日あたりママたちに連絡しよう。
今は、雪が止む前によく見ておくことが最優先。
傘はいいや、靴だけはお気に入りの黄色いビニール長靴。子供っぽいとは思うけどね、実際子供用だし。
実家にいた頃一回だけ雪が積もったことがあって、その時も黄色い長靴で。
「お兄ちゃん、そんな事したらお姉ちゃんにすっごく怒られますよ。……ほら」
誰だって雪玉を背中に入れられたらああなるよね。え?なんで私まで怒られるのよ!
お姉ちゃんは怒って雪玉を投げつけてくる。黙って見てた私も同罪?
「ちょっとやめて~!」
雪玉を華麗によけたら、背中が誰かにぶつかった。
「あ、ごめんなさい!」
怒ってないかな?振り返るとギルバート君が立っていた。
「……ギル」
「やあレティシア、おはよう」
「うん、おはよう。ごめんね痛くなかった?」
「全然。レティシアは何してたの」
「雪を見てたわ。サントルで積もるのは珍しいのよね?」
「レティシア、君は……いや。雪はあるけど、なかなか積もらないよ。僕が覚えてるのは、三回くらいかな」
植栽に薄く積もった雪で、小さな雪玉を作る。
「一晩でこれじゃ、雪玉投げなんてとうてい無理ね」
「冷えるよ。どこか温かいところに行かないか?」
「……もうちょっと見ておくわ。滅多にない光景なんだから」
「わかった」
「ギルは、怒らないのね?」
「怒らないよ」
ギルも寒いだろうに、しばらく一緒に雪の降る街を見ていた。
「出来れば、春までにはもう少し仲良くなりたい」
「どうして?」
「暖かくなったら、君の育った村に一緒に行きたいな」
「……町よ、訂正して。そうね……春はまだ寒いかもしれないけど、悪い時期じゃないわ。お父さんとお兄ちゃんはきっと怒るから、お母さんとお姉ちゃんとだけ会いましょう。お姉ちゃんはすごく綺麗で。仔牛がいるかもしれないわ。お兄ちゃん、ちゃんと世話してくれてるかな。それからね、丘の反対側に湧き水があるんだけど……」
「あ、起きた」
ここはどこだ。
「レティシア、わかる?あなたのお家よ」
あれ?ギルと雪見てたはず……。
「ギルバート君と雪見デートのあと、カフェに入って寝ちゃったんだって?さっきギルバート君が持ってきてくれたんだよ」
「デートかは知らないけど、雪見てたらギルバート君が来たのは覚えてる。カフェで寝たかな?ギルバート君何か言ってた?」
カフェなんて行ったかな?まあいい、私はリビングのソファに寝かされていた。起きあがるけど、またなんかモヤモヤしてる。最近は治まってたのに。
「まあ寝不足だとしたら、君達のせいだし……あ、ママたちに報告させてもらうからね、今の生活っぷり。パンツのままでうろついてますって!」
「ちょっとやめてよ!私はスカート探してただけだし!」
お洗濯物は全てお部屋に届けさせていただいておりますよ。
「私は……気が緩んでいたことは認める。だから内緒にしてて、お願い」
「マリー!ずるいぞ」
なんと醜い……。
大げさに崩れ落ちているソフィアを撫でながら、宣言しよう。
「でもさ、もうお終いにしようか」
たぶん無理なんだろうね、街で暮らすのは。
「居候を追い出して、独りでやり直して、一ヶ月様子を見て……」
それも長いかもね。
「駄目なら実家に帰るよ」
「それは駄目!」
「独りになってはだめよ、レティシア」
「そう、せめて春まで、冬の間は一緒にいさせて」
二人はどうしてこんなに必死なんだろう?私を帰したくない?私と離れたくない?
「ね、レティシア、私達ととりあえず春まで一緒にいて頂戴」
なんだ、可愛いところあるじゃない。思わずニヤケてしまう。
「しかたないな……そんなに私と一緒にいたいのなら、春までだからね。ここにいても良いわよ!……今殴りたいとか言わなかった?え?話が繋がらないんだけど?何?私何かした?」




