レティシアと栗
栗をもらった。
ソフィアが学校でもらってきた。当然マリーも。今3人で暮らしているのも知られているので、私の分も。優しいな。
でも生なんだ。どうしろと?
昨日は無計画にもって帰ってきた2人に腹立てて、ご飯のあとから話してやっていない。朝も準備だけはしてあげたけど、あとは部屋にこもって顔も見ていない。いってきますとは聞こえたけど、返事なんてしない。
食事の後片づけをして、洗濯して、掃除。
ベランダから室内に入れたハーブを切りそろえて、切ったものは洗って干し網に並べておく。
今日も寒い。どこからか集まってくる外の落ち葉をまとめて捨てると、ひとまず朝の仕事は終わり。
「栗はどうなっているかな」
昨夜のうちに水を張ったお鍋に入れておいたから、下準備としたら十分な時間だと思う。虫なんか出てきてたら、食べる気なくなるよ。
幸いみたところ、虫もいなかったみたいで、水を換えて火にかける。塩は割とはっきり入れておこう。
ゆでる時間を待つのは気にならない。
ベランダで揺れる洗濯物を見ながらお茶を飲んで、空を見ながら、今日のご飯を考える。栗を冷ます間に散歩がてら街に行こうかな。
鍋を火から下ろしてあら熱をとる間、洗濯物を取り込んでおく。名前は書いてないけど何となく分かるもので畳んで部屋の前に置くことにしている。下着はよくわからないので、適当に置いたらなんか言い争っていたのを見た。すっごい派手なのがあったんだよ、その日。
栗をざるに空けると、私も出かける準備をする。栗にあやかって、マロンコーデのロングスカート。薄い髪色が、服の色に埋もれないような絶妙の色使い。伸びた髪は猫ちゃんの髪留めでまとめて、首には月夜にもらったペンダント。
朝まで怒っていたので、学校方面に行くのも気まずい。今日は信号機占いで街まで行こう。
運良く露店でちょうど蒸しあがった豚饅頭に遭遇。饅頭三つと紹興酒ソーダをもらって折り返しだ。
帰って栗と格闘せねば。
マーケットでトマトと挽き肉と生チーズ。生クリームとお砂糖を買う。
わたしは栗に集中するから、晩ご飯はあの子たちにお願いしよう。ミートソースくらいは出来るだろう。
洋食屋さんに挨拶して、前の店でシフォンケーキをホールでもらって。
帰ると夕方前。そろそろ戻ってくるかな?
シャワーをして着替えると戦闘開始だ!出来ればおやつに間に合わせたい。
栗を半分に切ってスプーンで実をほじり出す。一番大変な工程だ。これが終わればあとはだいたいの時間が読めるからね。何も考えずに作業すると割と早く終わるんだけど、ここで愛情を注がないと何となく作業だけのお菓子になりそうだ。
「モエモエきゅーん」
しまった、魔法を使ってしまったよ。
あとはレシピ通りなので割愛だ。ラムが強めに利いていい感じ!こしてる時間はないから今日はこちらのマロンクリームをシフォンケーキに塗ります。
完成。あとは冷蔵庫で凍えているいいわ!
「「ただいま~」」
「お帰りなさい……」
わざとのツンツンだよ。
「あの……栗はごめんね。勝手に押し付けちゃって」
「……」
後ろを向いているから、私のニヤニヤは見えていないだろう。つくづくサプライズには向かない性格ね。
「で、迷惑かけるかもだけど、明日一緒に栗のお菓子でも作らない?」
あ、そうだった。そのほうが絶対楽しい。どうでも良いことに腹を立てて、変な意地張って。私はバカだ。
「もう遅いわ……」
「レティシア……」
「だってもう、美味しくできてしまったのですから!」
冷蔵庫からケーキを取り出した私は、渾身のドヤ顔を披露する。そうでもしないと情けなくて泣いちゃうよ、
「す、すごい」
「レティシア、あんた何者?」
「……ねえ、マロンペーストがまだかなり残っているから、明日皆でカップケーキでも焼かないかな?」
「……そうね」
「……楽しそう」
「バカレティシア!」
「なんでそんなにセロリを入れるの!」
感動の和解のあと、皆で作るミートソース。野菜がいっぱい入ったほうが美味しいよ?どうして文句言われるの?さては、こいつらセロリ嫌いだな?




