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レティシアと冬支度

 鍋という料理を知っているかしら。

 味に決まりはなく、具材も決まりはない。

 えっ、そんな何でもありを一つの料理と呼んでいいのか?って思うでしょう?あるの、実際にそういう料理が。その鍋という料理には二つだけルールがある。一つは「お鍋で一緒に煮ること」もう一つは「美味しくなるようにすること」。

 最後のはいわゆる紳士協定であり努力義務。でもこの心を持たず遊び半分で調理することは、文明のほぼ全ての人民に生涯軽蔑されるであろう……。


「あ、来た」

 私は大学の門前で二人を待っていた。手に持っていた本をカバンにしまうと、テクテクと二人に近づく。 

「レティシア?」

「よ、お勤めご苦労さんです」

 びっくりする二人に少しおどけて挨拶する。

「キャラ違うよ」

「そうなの、どんなだったか思い出せなくてね、メイキング中なの」

「……覚えて、ないの?皆のこと」

「しっかり覚えてるよ。でも、皆の知ってるレティシアと今の私では、違和感感じる子もいるのかな~って」 

 よくわからないが、そうなんだ。でも変な話をして、また心配かけるのも悪い。

「それはともかく、買い物しててそういえば好き嫌い逢ったかなって思ったわけ。二人、食べられない物はなかったよね。それの確認だけなんだけど。それと、朝は何派?」

 二人に真剣な顔をさせてしまっている。しまったな、よく考えて話す内容だったか。

「二日続けて油っぽいのはイヤ。朝は二人ともバゲット派よ」

「胡椒は白より黒が好きです。マリーはイチゴジャム。私はマーマレード。これは間違うと一日口をきかない自信がある」

 変なこだわりのある子たちだ。ネタだろうか?

「わかった。じゃね、晩御飯は「お鍋」だよ。早く帰ってきてね」


 バゲットは早い者勝ちだ。

 こればっかりはレプリケーター製よりも本物の焼きたてが良いに決まっている。

 私のナンバーワンは、商店街のキッシュ屋さんのバゲット。いたって普通の細長いパンだ。二人とは生活圏が違うから、このお店も知らないと思う。どんな反応をするか楽しみだ。キッシュはベーコンとほうれん草、季節のキノコ。サラミソーセージやチーズも買い込んでおこう

 鶏のもも肉は一口大。ジャガイモとキャベツ。ミルクは大きめの瓶で。

「もしもし~マリママですか?レティシアです。はい、はい、いえ助かってますよ~。で、マリーがイチゴジャムじゃないと嫌みたいなんで、どこのお店の……ああ、そうですね。マリーもなかなか可愛いですね……」

 ワインはお家に運んでもらうことにして、私も帰ろう。


 冬支度は済んだ。

 衣類は一式入れ替えた。

 カーテンは厚手の物に取り替えた。サンルーフのガラスは減光じゃない元の物に入れ替えてもらった。お布団も羽毛の厚手を持ってきてもらったし、あとは……。そうだ、床暖房!合わせてテーブルは低くして。快適ゴロリン、レティシアのお家!完成です!

 早く帰ってこないかな!


(レティシア……?寝ちゃってるよ)

(すごいな?朝とすっかり感じが変わって……)

 ああ、帰ってきたのは。床暖房の魔力にやられて寝てしまっていたんだわ。

「お帰りなさい、二人とも」

「「ただいま」」

「模様替え大変だったろ」

「おやつを買ってきたわ。頂きましょう」


 後は皆でゴロゴロぬくぬくを楽しんだ。

 おっと、今夜のお鍋は「もも肉のミルクポタージュ鍋」でした。締めのパスタまで美味しく頂きましたよ。

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