レティシアと復活の時
「胸モロ出しで過ごして良いなら、マリーんちに行きたい」
「あ?バカなの?」
沸点が低いな。
「裸族はうちも困る」
彼女たちが一緒に住むといっても、何週間か。私が正常運転……通常ではなく、になるまでの間だけらしい。
何故か妙にさっぱりした朝。
いつも通り起きて、キッチンでお湯を沸かす。
ベランダのハーブを適当にむしり取って軽く洗いお鍋に押し込んでお湯を注ぐ。
顔を洗い歯を磨き、散歩用の軽装に着替えて、お鍋のハーブティーをポットに移し替える。
いつもの流れ作業だ。
空を見ながら、少し暖かいお茶を飲んでいると、マリーが起きてきた。
「おはよう……」
「おはよう、マリー。よく眠れた?」
「うん……」
「お茶を入れておいたから飲んでてね。戻ってきたら、朝ごはんにしよう」
「レティシア、どこか行くの?」
「朝はいつも、お散歩してるのよ。そんなにかからないから支度してて。行ってきます」
なんだその顔は。いくら朝だって、ボケボケすぎだぞ。
「だいぶ寒くなってるな……。今日は冬用を出さなくちゃ」
散歩のコースは単純。近くの川の土手まで行って、ストレッチして帰ってくる、それだけだ。
土手に上ると広々とした河川敷を見渡すことが出来る。ここは秋には白とピンクの花がいっぱい咲くのだ。
「……覚えてない」
それなりに出歩いていたのにな。周りが全く見えていなかったということなんだろう。
久しぶりに身体を伸ばす。うーん、バキバキいってる。
戻るとマリーがシャワーを済ませたところだった。
「ただいま。ソフィアは」
「まだ寝てる。……レティシア、変に張り切ると、もたないよ?」
「ご心配なく。日の出前に起きて、散歩して、後はのんびり。街に来てからはずっとこんな感じだよ。……パンが切れてたな。シリアルでも構わないよね」
ソフィアは遅くならないと起きてこないらしい。人にいろいろ言っておきながら、お主の方がだらけた生活ではないか。
「ごめんねぇ、明日からはまともな朝ご飯にするから、今日はレーズンとヨーグルトで我慢しておくれ」
「うん、……これで十分よ」
マリーはもそもそとシリアルを食べている。あんまり朝は強くないのかね。
少し寒いけど、ベランダを開けさせてもらって、ハーブどもを切りそろえていく。今朝のお茶は苦かったから。
「ごちそうさま」
「はーい」
刈ったハーブの葉っぱは網の袋に入れて、リビングに吊しておく。
「マリー、まとめて洗うから、下げおいてくれればいいよ。さて、ソフィアが起きてこないなら、私もシャワーしてしまおう」
「やっぱり、この時間が好きなのよね」
シャワーを浴びてさっぱり。リビングだけに聞こえる程度で音楽を流して、少し香りが強いめの紅茶をいただく。私の席からは空がよく見える、大きな窓がある。今日は何故かモジモジしてるマリーも見えるけど。
「マリー……私が思ったよりまともな暮らしをしてたのに驚いているんでしょ?」
指摘されてビクッとするマリー。
「ま、まともというか、しっかり大人な朝をしているのが意外で……。私たちが面倒見て上げようかって思ってたから」
「たぶんその効果で、戻ってるんだと思う。私からはありがとうしかないよ」
朝から友人と静かに笑いあえる生活。こういうのも良いな。オチ担当もいるし。
「今日は、学校は?」
「昼前の一コマだけだね。レティシアは今日はこない?」
「今日は冬支度するよ」
『あ~!』
二階から絶叫が聞こえた。
「オチ担当が起きたか。確かに、飛び起きる時間ね。私が相手するから、マリーは学校の準備してきて」
「そうさせてもらうわ」
バタバタと階段を駆け下りてくるソフィアと入れ違い、マリーは部屋に戻っていった。
「お、オハヨー!レティシア!」
「おはよう、ソフィア」
「どうして朝からそんなキラキラしてるの!?」
そこかい。
「まずは顔洗ってきなさい。時間もないからシャワーもしてきて」
「はい!」
「いや~、レティシアの意外な一面だ」
「でしょう?」
はよ食べろや。
「あなた達は街暮らし、私は丘で農村暮らし。起きる時間はもうね、身にしみて変わらないというか」
朝が好きってこともあるんだけど。
「それに、昼は酒飲んで徘徊、夜は追い出されるまで店で飲んだくれてたら、どこかでまともな生活してないとさすがの私も参るよ」
「確かに」
納得していただけたかな?
「さぁ、もう行きなさい。お昼は自分達で準備してね。気が向いたらそっちまで行くけど」
「「はーい。行ってきまーす、レティシアママ!」」
ママと言うな。自称少女だ。




