レティシアと海辺の朝
寒くて目を覚ますと、知らない海辺だった。
そりゃ軽くパニックだよ。何とかして記憶をたどる。その前に、ん、着衣の乱れなし。貴重品ある。ポーチもある。まあ、襲われたあと丁寧に再梱包されたという可能性もあるけど、それはないことを祈っておく。
そうだ、昨日は確か海までヒトデを探しに来ていたんだ。途中で探すのをあきらめて、街へ飲みに出かけた。あとは推測だが、酔い醒ましに海辺を歩いていたら、寝てしまった。
無防備すぎる。あり得ないうかつさだ。
変な格好で寝ていたから、体が変な感じで固まってしまった。じっくり時間をかけてストレッチ。
今は日の出前の一番寒い時間帯だ。
もう空全体は白くなっていて、もうじき日の出がある。サントルの街は東側が山なので、お日様は山の上からオハヨウサンする。もしかしたらもう地平線より上に昇って来ているのかも。
昨日は風があって波立っていた海も今日の朝は穏やかで、まだ底は見えないけど、今ならヒトデだって見つけられると思う。もう全く興味は無くなっているんだけどね。
太陽が稜線から出てきた。冷えてしまった体に、光が当たる。暖かい。もう少し暖まったら動き出すことにして、しばらく海を眺めていよう。
遠くの岬にもすっかり色が付いた。
薄い海霧が水面に漂っている。
こうやって無理にでものんびりしていると、忙しなかった最近の私は何をしていたんだろうとか考え出してしまう。ヒトデに人としての内面の美しさを求めるなんてどうかしてたよ。
「ヒトデはヒトデ」
店を探して食べ物を調達したらまた戻ってこよう。一日ここで海を見てるのも良いかもしれない。
ふと端末を見ると、メールに着信が山ほど来てる。
なにか急ぎの用事かしら?クラスの皆に、誰だ?これ。あ、ギルバート君まで。最新はマリーで、私が目を覚ます直前だわ。
何か、皆私を捜してるぞ?
記憶はないけど、一通だけマリーに返信してる。
『私レティシアちゃん。海にいるの。夜の海は吸い込まれそうに綺麗ね』
んん?なんか勘違いされそうな文面だな。
返信のあとに着信があるけど、寝てしまったのだろう、出ていない。
これ、完全に行方不明者捜索だよね……。
とりあえず無事を連絡しとかないと。
『おはよう。飲みすぎて海辺で寝ちゃってた。ごめんね~ (ノ≧ڡ≦)☆』
送信!うわ、着信だ。はやっ。
「おはよう、マリー。うんうん、大丈夫だよ。どこだろう?怒らないでよ」
申し訳なさはあるが、別に助けて欲しいとか言ってないし。でもしおらしくしとくのがいいに決まってる。
「いろいろ考えたんだけどね。悲しいことがあって。ウロウロしてたのよ」
あんまり詳しくいうと電話越しに怒られるから、断片的に少しずつ語ってみた。美について自分なりに考えてはいたのよ、ヒトデなんてバカな結論に至ったけど。見つからなかったのは間違いなく悲しかったし。
マリー、なんか泣き出したぞ?
「マリー、電池きれそうだから、いったん切るね。自力で帰れるから。じゃあね」
……感謝の一言を入れておくべきだな。
「ありがと、マリー。大好きだよ」
コレでいいだろう。
おなか空いたし、どこかで顔も洗わせてもらえないかな~。




