レティシアとファイヤーワークス(中)
「レティシア、ありがとうね」
マリーのお礼。
私がフェルディナンドに声をかけて連れてきてくれたから、ということらしい。
いえいえ、偶然出会ったもんだから声は掛けたけど。マリー本人への興味の結果、先生が来たんだよ。ソフィアが言うように遺跡関係で私が餌になったんじゃない。ていうかあの人私のこと覚えてなかったしね。
もうじき日が落ちる。
予約していた席は、3席2列の島席で耐性の問題で、前列にマリー、先生、ソフィア。後列に彼氏、アイちゃん、私。めっちゃ要らない子だ。
打ち上げが始まるまでに食べ物や飲み物を買い込んでおこうと、会場中が騒がしい。隣のカレカノもソワソワしてるようだ。
「言っとくけど、二人でどっかシケ込んだら警察呼ぶからね」
「何言ってるのレティシアちゃん。変な想像しないでよ、私達屋台見てくるだけだよ」
信用ならんよ。
私もギルを探しにいこうかしら。たぶん来てるんだろうし。
「先生、私ビール買ってきますけど先生もビールでよければついでに……」
「特1隊員、先生の分は私が買ってくるからお構いなく」
ソフィア、あなたもついてくるのよ。マリーと先生に遠慮して何も話せてないから、活躍の場を作ってやろうというのに。
っていうか本当のいらない子はソフィアだったか!
「行くよ、ソフィ!」
FP稼ぐチャンスでしょ。ランク上げるどころか下がっちゃうよ。
マリーはなんだかポヤポヤと上の空だ。あれね、学校と違って、隣にいるってのでもう一杯なんだろね。
ソフィアを無理矢理引っ張り出した。こっちも舞い上がっていて、ポイント稼ぎを忘れてたみたい。
「ねえ、マリーってガチガチのガチ勢?」
「ええ、筆頭はもう私達ノーマルガチ勢よりも頭二つ三つ抜き出てるわ。レティシア、貴女の最大の敵になるかもしれない女なのよ。まあ貴女がマジで先生に興味がないってマリーもわかってるから、どうにもなってないけど」
「貴女たちは何を目指しているの?結婚?」
「ま、まあね……」
もじもじソフィアも可愛い。
「へえ、ソフィアもそういうのあるんだ」
「レティシアみたいなお子さまにはわからないだろうけどね……と言うか、もうヤバいでしょう。いろいろ」
確かに、もうピチピチでキャアキャア騒いでいればいい歳でもない。心は少女だけど。
この星は性別問わず結婚願望が強い傾向にある。私達もいずれは結婚して家庭を持つということを当たり前のように思っていたし。
「私だって興味ない訳じゃないけどね。……うわぁどこも並んでるね。手分けするか」
「レティシアみたいに綺麗だったらな……」
「いや、美しすぎるのも悩みあるのよ」
なかなか声は掛けてくれないし、たまに来てもおつき合い目的だし。
「ほら、ソフィアはドリンクの列ね。速く戻らないと筆頭がゴール決めちゃうよ」
「わかった。ありがと」
「あ、私のは自分で買うから!」
さあ……みんな肉で良いよね。
欲望のまま買い込みすぎた。
見かねたお店の人が手提げの袋に入れてくれたけど、それでも両手一杯。
「ビールが買えない……」
一旦拠点に戻るか。
「レティシア」
この声は。
「ジャーヴィ」
「重そうだな。半分持とう」
おっと、強引に奪い取られるが、こちらの動きには最低限合わせてくれている。
「ありがとう」
「ジャーヴィ君は今日は友達と?」
見たところこの間の制服ではない。彼女と?と言ってやりたいところだけど、外すと面倒になりそうだ。
「ん~」
ジャーヴィが急に顔を近づけてくる。ワイルド系イケメンにそんなことをされると、さすがの私もドキドキしてしまう。
「仕事中なんだ、警備の。私服でな」
「へ、へぇ~」
ちょっと、ヤバいっす、ジャーヴィさん!近い近い!
「あ、すまない……」
「う、うん……」
お兄ちゃん、私も青春してるよっ!
「ねえ、あと一つお店寄りたいんだけど。いいかな」
「構わないよ。これも立派な仕事だ」
そろそろ開始時間が近づいてきて短くなってきたドリンク店にの列に一緒に並ぶ。たまにジャーヴィを睨み付けてくるのは同僚さんだろう。
「ビールと、レモンスカッシュ下さいな」
「はい、こっちジャーヴィ君のね」
仕事中を考慮してノンアルドリンクをジャーヴィに渡す。
「仕事ついでに、席まで送ってよ」
「え?これ……」
「私だけがドリンク持ってちゃ不自然でしょ、お仕事。お礼にはちょっと安いから、また今度お礼させて」
自分から誘うというのはやっぱり恥ずかしいので、彼を置いてずんずん進んでいく。
「あ、おいレティシア!」
「ここよ、ありがとう。そこの椅子においてくれる?どうせ戻ってこないだろうから」
同じレイアウトの座席がいくつも並ぶ中、迷わず戻ってこれた。
「あ、レティシア遅かったね……そちらの方は?」
ソフィ、アンタまたなんて目をしてるんだ。
「荷物持ってくれたの。友達よ。今日はボディガードだよね」
「ふーん」
「じゃあ、俺は戻るよ。また今度」
「うん。ありがとね」
ジャーヴィは逃げて行ってしまった。アドレス交換したかったのだけど。
よいしょと椅子に座って一杯飲む。ソフィアの視線がちょっと痛い。
「なかなか始まらないね、花火」




