レティシアとファイヤーワークス(後)
『……以上の企業の協賛で……』
始まった、やっと。
困ったことに、待っている間に水分を取りすぎたため、ちょっと今悩ましいことになっている。
「ねえ、ソフィア。今からお手洗いに行ったら、絶対間に合わないよね?」
「この、第一幕とかには間に合わないだろうけど、ラストには十分間に合うよ。今のうちじゃない?」
「……一緒に行きませんか?」
一人で行くのは少し勇気がいる。
「私は大丈夫」
「そっか。……行ってくるよ」
「ん、気を付けてね」
ちなみにマリアンヌはもういない扱いだし、アイちゃんに関しては本当にいない。
トイレコーナーは座席からも屋台からも少し離れたところにあるけど、そんなに遠くはないし数も十分ある。星都の協議会が主催の大会だから、綺麗で上等の簡易トイレが設置されている。でもなんか、「待たれる」ことが落ち着かないのだ。
幸い列はできていなくて、すんなり入室できて問題なく用を済ますことはできた。
「ふい~。落ち着いたわ」
席に戻る足で、冷たいドリンクを補充しに行く。ぬるいのって、妙にトイレが近くなると思うのだ。というか、短パンへそ出しが根本の原因かな。ちょっと浮かれすぎた格好に反省だ。
「レティシア」
誰だ?トイレと屋台の間の比較的人が少ないところで声をかけてくるとは、変態だろうか?
「あ、ギル」
「やっぱり来てたんだね」
「う、うん。友達とね」
なんかさわやか好青年風だ。無害なイケメンチック。最近思い知ったのだけど、私はこういうのに弱いかもしれない。近辺にはギルしか該当者はいないのだけど。つまり会えて少し嬉しいということだ、おそらく。
「そっちも友達と?」
「それは秘密だよ」
なんだそれ、意味が解らん。
「それにしてもレティシア。とても大胆な格好だね……眩しすぎてちょっと心配だよ」
やっぱり!やりすぎてしまった!
「ちょっと来て」
ギルに手を引かれて、引っ張られるままに付いていく。
「ほら、これ羽織って」
ギルが手渡してくれたのは、薄手のパーカー。ここは、運営の拠点かな。
「夏ですけど、湖畔の夜は涼しいですからね。体調崩す人もいるんですよ。それは帰りに返却し得下さいね」
受付の女性が優しく教えてくれる。
「それにしても、ギルバート君もこんな可愛い彼女いるんだったら、お客さんしてればいいのに」
彼女!
「だよね、でも単位がね」
「それね~」
彼女ってのを、否定しろよ!
「今大丈夫だから、彼女と花火見てきなよ」
「いいかな。そうさせてもらうよ」
「でもそこまで時間あげられないからね、暗闇で襲うなよ~」
「「!」」
「二人して真っ赤になっちゃって。初心だねぇ」
襲うって、それって……。
「行こう、レティシア!」
「ハイ!」
強引に手を引かれて、ここを離れる。心臓がもたない。
「あ~レティシアちゃんか。確かにね……」
気づかれてるし!
急ぎ足で、結構来た。
会場からは少し離れてしまったし、その……結構薄暗い。
「びっくりしたね」
「うん」
あの、手を繋いだままなんですけど。いいけど。
「彼女って、間違われてしまってごめんね」
「……まあ、仕方ないかも、とは思うよ」
それって。
花火が始まっている。
ギルのつぶやきは聞こえないふり。
「戻ろう。せっかく席取ったんだから帰らなきゃ。ここもいい景色だとは思うけど……。ギルに襲われそうだし」
「いや、僕はそんなことは」
繋いだ手に少し力を込めてギルを引っ張っていく。
「ああ、手を……」
「ま、友達だし。手ぐらいいいじゃない?」
湖畔の砂地をゆっくり歩く。
明らかに緊張しているギルの手を感じると、少しいたずらしたくなった。
繋いでいる腕に、ぴたりと身を寄せる。
「ちょっと暗くて怖いから、ギルにくっついておこう」
花火のクライマックス前にはみんなのところに戻ることはできた。
ギルとは到着前に別れた。
「温かかったな、ギル」
彼の腕の暖かさを思い出す。私のドキドキも伝わっただろうか。
そんなことを思い出していたので最後の連弾は見逃してしまった。不覚。




