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レティシアと無限牢獄

 私は基本的に毎日お休みなの。

 仕事は不定期。学業は週3くらい。最近知り合った人が同じ学校らしいので、そっちの講義に顔出しても面白いかもしれない。

 私はいつも徘徊しているわけではない。たまにはこういうのんびりすると決めた日もあるの。

「……」

 上品でセンスの良い音楽。洋食屋のおじさまに教えてもらったプレイリストそのままだ。

 今日の読書は、何度も読んだけどお気に入りの作品。古代地球の貴族の物語を現代風に翻訳したものだ。主人公の男が美貌と財力で思うままに生きていく。女好きで自信家だ。失敗して流刑に合うんだけどその先でまた女性をたぶらかす。アンタ反省って言葉知ってる?とまあ、このあたりはわりと好きなんだけどね。晩年はそれなりに反省して……るよね。

 ドリンクは、ブランデーって思った?あれからはだいぶ控えていて、最近はお茶にハマりかけてる。このお話は色んな香りが出てくるから、香りの強いお茶にはせず茶葉の爽やかな香りがそのまま出るものにした。たっぷり作ってポットごとアイスペールに突っ込む。

 私のお気に入り、私よりも大きいビーズクッション。私は無限牢獄と呼んでいる。これを程良い角度に合わせて、読書開始だ。

 待って、エアコンも風が直接当たらないように……。

 

 ……。

 ……。

 男って馬鹿なのね……そんなの友情でも何でもないよ、犯罪幇助!

 ……。

 ……。

 乱れてるわ。友達の彼女よその人!

 ……。

 ……。

 ……「ざまあ」の展開なのに!毎回可愛そうになる。騙されるなレティシア!

 調べたことあるけど、この流刑先ってこの時代でも結構豊かな土地なのよね。それを田舎呼ばわり……。

 ……。

 のど渇いた。

 いつの間にか姿勢が崩れて、ポットがちょっと、届かない……。よいっっしょ。

 何とか上半身を立て直し、カップにお茶を注ぐ。ああ、冷え冷え~。

 ……。

 ……。

 正妻ピンチねぇ。それでもあんまり妻同士の関係がドロドロに思えないのは、訳者の良心か?

 ……。

 ……。

 この時代の人って、思いこむと死んじゃうのよね……。貴方がそんなに思い詰めなくていいのよ。……あれだけの人がこんなにあっさり亡くなるなんて。殿許すまじ!

 私はディスプレイを胸に置き、姫の最期を考える。

 ……トイレ。

 おっと。また姿勢が……。埋もれちゃって、上体を起こすのは無理だ。右に回転。

 カチャ。

 やべ!ポットだ。反対、左に……こっちは深くて回転ができないですって!?

 変に動いたから上半身が仰け反ってしまって、ポットに手が届かない!

 仕方ない、後転だ!腰に負担はかかるが、両足を勢いよく持ち上げる。膝は額に……それは逆上がりか!痛!ふくらはぎに硬柔らかいものが当たる。ソファーだ、ソファーが邪魔で後転にならない。

 これはまさしく無限牢獄!

 身体を捩ると尿意が……ちょっと、シャレになりませんわよ!ちょっと!ちょっと……!


 私は、泣きはしないけど、大いに落ち込みながら床を拭いている。

 何度目かの後転チャレンジで、結局ティーポットを蹴倒してしまった。早く拭かなくちゃお茶の色って取れにくい!でもまずはトイレ!濡れた靴下が~脱げない!ああ、服もクッションも濡れてる。

 悲惨な光景を横目にトイレに向かう。これ以上の悲劇を起こさないために!

 濡れた服もクッションカバーも全部洗濯機に突っ込んだ、パンツ一丁で……上も付けてはいるが気分はパンツ一丁だぜ!で床を拭く。

「はぁぁぁぁ」

 今日初めて口から出た音は、ため息だった。

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