翠と橙(みどりとゆず) vol.095 「ふふ。こいつ、かなり緊張してたな~~。物凄い震えてる。」
少し意識が遠のく橙。
両腕で橙を抱きかかえてようやく待合室まで。
椅子に座らせ、千慧、橙を抱きかかえて、
「ゆず。ゆず。」
右手で橙の頬を二つ、三つ。
ゆっくりと目を開ける橙。
千慧、
「うん。気が付いた。」
薫郎、
「ひぇ~~。びっくりした~~。」
橙、
「マネージャ…。」
そして左隣を見て、
「ユッキ。」
その声に薫郎、思わずドキン。
千慧、その声に薫郎を見て、
「ふふ。」
千慧、橙の右半分を抱きながら、そして右大腿から膝を優しく撫でて、
「ふふ。こいつ、かなり緊張してたな~~。物凄い震えてる。これじゃ、立てないよ。」
橙の頭を撫でながら、
「ふふ。ゆず~~。こいつめ…、可愛すぎ。」
薫郎、オデコに手をやり、
「ひぇ~~。ふぅ~~。ゆず。大丈夫か~~。」
橙、千慧に抱きかかえられながら、
「あんまり、脚…感覚…ない。…でも、気持ちいい。へへ。」
橙を抱えながら千慧、
「こら、こいつめ。」
橙のオデコを右拳でコン。
「あと…。20分。ユッキ~~。」
薫郎、
「えぇ~~。了解。」
ようやく自分の力で椅子に座っていられるようになった橙。
スマホでメールを打つ千慧。
そして薫郎、
「さて。」
千慧、
「おぅ。」
薫郎、橙の前に背中を向けて。そして膝を折って。
「ゆず…、恥ずかしいかもしれないけど…。新幹線の中まで、我慢して。歩けないでしょ。」
千慧。
橙、
「すみません。」
そして、
「ありがと、杉浦君。」
薫郎、
「おぅ、任せな。」
そして橙を背中に、そして立ち上がり、
「重~~~。」
橙、背中から、
「うそうそうそうそ。」
「かかかか。冗談だよ。」
「もぅ~~~。ばか。」
千慧、
「はははは。かっわいい~~。まるで、恋人同士みた~~い。」
その千慧の声に、橙、薫郎、顔を赤くして。
「……。」
「冗談なし。力…抜けるし。」
千慧、
「ごめ~~ん。」
千慧のラインの着信音。
「おっと。ボス。くくく。良くやった。ご苦労。気を付けて。うん。では…。…って、なんで、文末に猫の足のマークなのよ。…ったく~~。ペッタンって。」
「ユッキ。ごめんね~~。迷惑掛けて。」
薫郎の背中で橙。
「な~に言ってる~~。当然の事だろ。」
「ほんと…、重くない…???」
初めて感じる男性の背中。そして、薫郎もまた、翠以外に感じる女性の体。
そして首筋から伝わる橙の息、仄かな甘い香り。
「重い。」
その瞬間、首に回した両腕で、薫郎の首を絞める橙。
「い~~き、出来ねぇだろ。」
橙、
「こら~~重い、言うなぁ~~。」
「…って、そっちが重いかって聞いたくせに。」
「もぅ~~。」
けれども、薫郎に背負われながら橙、薫郎の背中の上で、
「ユッキ~~。気持ちいい~~。」
「えっ…???」
後ろでそんなふたりを目で追いながら、
「ほ~~んと。恋人同士みた~~い。」
その瞬間、翠を思い出して、
「ぷっ。みどには悪いけど…。許せ、みど。」
千慧、
「…って…。えっ…???ほんとに…ユッキと、みど。今、どうなってんだ…???同棲…してて…。」
腕組みしながら…、
「ふ~~ん…???」
座席シートに体を任せた、その5分後に、目を閉じて、寝息の橙。
薫郎、
「早っ。みど並み。5分で…。」
千慧、
「かなり、疲れたね~~。…って、みども5分で…???」
薫郎、
「はい…。」
千慧、
「うそでしょ。」
そして頭の中で、
「…おまえたち…。夜…どうなってる…???」




