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翠と橙(みどりとゆず) vol.094 「ご迷惑でなければ、もう少し、時間…拝借できれば…。」

千慧、笑みを博陽に。


博陽、さりげなく美耶子に視線を…。

「ジェシカさん…。」


千慧、

「はい。」


「ご迷惑でなければ、もう少し、時間…拝借できれば…。」


千慧、そんな博陽の顔に優しい笑みを…。

「構いませんが…。」




レストランの店先で停車している車に乗り込む5人。


「ジェシカさん。…杉浦さんって言ったかしら…。」

助手席で美耶子。


後部中央の席で薫郎、

「あっ。はい。」


「あなた…、料理…、出来るでしょ。」


その声に薫郎、左隣の千慧をチラリと…。

「あっ、はい。」


「どの程度…お出来に…???」


薫郎、少し声を濁らせ、

「…どの…程度…。…って…。え…と。高校の頃から…だから…。6年…???」


その瞬間、右隣りの橙が、

「えっ!!!」

そしていきなり口を両手で塞ぐ。


千慧はにっこりと。


博陽、

「ほぅ…。」


美耶子、

「高校の頃から…。」


「えぇ…。ある人から仕込まれまして…。」


千慧、

「ぷっ。」


美耶子、

「ある人から…仕込まれた…???」


千慧、

「田島川社長、この杉浦、実は、高校時代から、焼き鳥屋に居候しているんです。まっ、居酒屋タイプの焼き鳥屋ですけど…。自然に、その店主から料理を叩きこまれたという…。」


博陽、大通りに出て、車を走らせて、

「へぇ~~。」


美耶子、

「道理で…。ソースを褒めてくれて、ありがとう。会社以外の人と食事をしても、料理を褒めてくれた人なんて、あなたが初めて。」


その瞬間、薫郎、

「うそ。え~~~。あんなに美味しいのに…。」


右隣で盛んに首を縦に振る橙。


「料理を食べていても、話題は仕事の事ばかり。」


千慧、

「……。」


薫郎、

「そう…でしたか…。」


数秒の沈黙。


「僕だったら、食べて、美味しかったら、素直に、旨いって、言いたいですね~~。作ってくれた人の顔も…みたいですから。」


美耶子、

「そうね。うん。」


博陽、

「さて、到着しました。」


千慧、

「あの…田島川…専務…???ここ、御社の…???」


博陽、

「えぇ…。私どものビルです。フレバー。」


美耶子、ドアを開けて、

「是非、中、見てらして~~。これから、長い付き合いに、なるかも…知れませんから。」


その一言に千慧、シートに座ったままで、右手を握って、小さくガッツポーズ。

薫郎、隣の橙の顔を見て、ニッコリと。

橙、思わず真ん丸の目。



エントランスの自動ドアから。そしてエレベーター。2階から丁寧に3人に案内する博陽。

案内されながらの3人、常に真剣そのもの。

中には、3人が三様で社員に質問もしたり。しかも、その質問に快く応える社員たち。


そして大凡45分。




再びエントランスで美耶子、千慧とがっしりと握手して。

「いつでも連絡して。」


千慧、

「ありがとうございます。これからもよろしく、お願いします。」


薫郎と橙ともがっしりと握手して美耶子、

「お会いできて、嬉しかった。」


薫郎、

「こちらこそ。ありがとうございました。」


博陽、

「では…、参りましょうか。」


3人、

「はい、ありがとうございます。お願いします。」




駅前で博陽と別れて駅の中に…。


構内を歩きながら…。


その時、薫郎、「すぎうら…。」が聞こえて、すぐさま後ろを…。


いきなり自分に倒れこむ橙。


薫郎、

「ゆず!!!ゆず!!!」

薫郎、すぐに橙を抱きかかえて、周囲を…。


千慧も慌てて、

「ゆず!!!ゆず!!だいじょ。ユッキ、あそこ。」




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