翠と橙(みどりとゆず) vol.090 万美、「カウンターの下で、何やってたの…???」
翠。引き出しの中、ゼムグリップで止められた数枚のカード。
2、3枚抜き取って。そしてまた巽の元に。
「ごめんね、時間取らせて。」
巽、
「いえいえ。」
万美、
「あ~~。いつもの…カードか…。かかかか。確かに。」
尋音、
「さすがにみど、抜け目なし。」
奈都、
「あ~~。私も欲しい~~。もう使っちゃったから~~。」
万美、
「はい…???」
翠、巽に、
「はい、これ。詳しくはゆずに聞いて。」
そう言って、翠、
「あれ…???」
途端にクスリと笑って、
「かかかか。まだゆずにもこれ、話してなかったんだっけ…。」
巽、
「はぁ…???」
「焼き鳥、雅楽の割引券。」
「や…き…とり…や…???がらく…。」
その言葉を聞いて、数秒後、巽、
「あ~~、あ~~。」
ようやく思い出して…。
翠、
「へっ…???」
巽、
「あ~~いえ…。あっ、はい。ありがとうございます。」
その瞬間、巽、顔を顰めっ面にして、
「く~~。やっば~~。しまった~~。」
右手で頭を掻いて…。
翠、
「ん…???」
巽、
「あっ、いえ…。このタイミングで…。はは…、実は、ルッポラでも割引券、配ってるんですけど…。お店に来た人たちにだけ…。今、僕、持ってなかったんだ~~。あ~~ん、もぅ。」
「あ~~、いやいや。それなら、この前の…ゆずの歓迎会の時、レジの人から幹事…、尋音が頂いて、みんなに、配って…。私、持ってますけど。」
その声に巽、
「あ~~。はははは。そっか。はい。えぇ~~。そうでした。かかかか。すっかり忘れてた。そうでしたね。」
「ありがとうございました。」
「いえいえ。なんだか…新鮮。」
「えっ…???」
「いや…、だって、いつもは逢坂さん…、以外の人、ばっかりだから…。」
「あっ。あ~~。そっか…、私…デリバリー、利用してないから…。まず無縁。」
「ねぇ~~。…だから。」
そして翠に一礼をして、
「ありがとうございました、毎度で~~す。」
翠、ドアを開いた巽に、
「ありがとね~~。お疲れ様~~。」
そして、
「はいはい。まだ、取りに来てない。」
「はいはい。私の…これ。サンクス。」
音羽。
「漫才、お疲れ。」
その音羽の声に翠、
「は…あ…???漫才…???誰と…???」
万美、
「カウンターの下で、何やってたの…???」
翠、
「あ。いや…。ペンスタンド…おっことしちゃって…さ…。ペン…拾いながら、あっち向いて、こっち向いて…、その挙句に、頭をゴツン。」
万美、腕組みをしながら、
「ふ~~ん。」
口を真一文字に、そして椅子に座ったまま、翠に、背中をエビぞりに薄い目で翠を見つめて。
翠、
「な~~によ、その目ぇ~~。」
万美、そして今度は口を尖らせて、そしてにっこりと、
「な~~んでも…。くくくく。はいはい、姉貴殿、チーフ殿、お昼お昼~~。」
「な~に言ってる~~、その姉貴はやめろ~~。同い年で、学年が違うだけだ~~っての。」
そんな万美と翠に一緒に連れ添うように、
「はいはい~~。ごっはん~~。」
尋音。
そして、その3人の数メートル後ろで3人に追いつこうと、そろそろと歩く姿。
その1時間ほど前。
「初めまして、株式会社アンジェリーナ、ジェシカの山根千慧と申します。」
目の前の女性に名刺を渡す千慧。
「ごめんなさいね~~。お待たせしちゃって…。」
籐の椅子に深々と座ってその名刺を受け取る女性。
その女性の代わりに千慧に名刺を渡す隣の男性、
「株式会社フレバー、専務取締役の田島川博陽と申します。」




