翠と橙(みどりとゆず) vol.089 いきなり、「みど。」と呼ばれ、翠、ドキン。
いきなり、「みど。」と呼ばれ、翠、ドキン。
巽、自分でも今、自分の口から飛び出た言葉にびっくりして、
「あっ。ごめんなさい、あ…逢坂さん。」
翠、
「あ…、はい。」
巽、頭をコクリと…、
「伝票に…、サイン。」
恥ずかしそうに。
翠、目をキョロキョロと…。そして、
「あっ。そっか…。ごめ~~ん。」
巽の前に両手を合わせて。
2枚の画像を取り上げて、にこやかに呉羽、
「ふ~~ん。」
そしてドアの方に自然に目が…。
「みど…。遊馬…くん…???」
そして奥の席からもデスクでふたりを見つめる姿、諸橋陽詩。
隣の阿久津美祢に、
「ねね、阿久っつぁん。みど、みど、みど、みど。遊馬君と。」
肩を叩かれ美祢、
「へっ…???えぇぇぇぇ…、何…???」
巽、
「すみま…せん。ここに…。サイン。お願いします。」
右手で、髪を少し掻き上げた風に翠。
「あ…っと~~。ボールペン~~。」
巽、すかさず自分の胸ポケットに右手を。
「あ~~。大丈夫、大丈夫。」
傍にあるペンスタンドからボールペンを抜いて。
その途端、ペン先がペンスタンドの淵に当たって、コロコロと。
翠、
「わっ。」
巽、
「おっと。」
床に落ちるペンスタンド。しかも、中の数本も散らばって。
翠、すぐさま落ちた場所に。
「ごめんなさい。」
それと同時に巽も、
「おっとっと。」
そしてお互いに拾ったボールペン。
巽、カウンターの底の方に、
「かかかか。こんなところにも…。」
翠、
「ごめんなさい。取れる…???」
「え~~。はい。こ…。」
戻った矢先に、翠のオデコに自分のオデコがコツン。
翠、
「あた。」
巽、
「わっ。」
巽、後ろに仰け反るように、
「ごめんなさい。すみません。」
翠、
「あった~~。はははは。ごめ~~ん。かかか。なんでオデコ、ぶっつけるかな~~。このおっちょこちょい。」
そしてお互い、立ち上がって、お互いがお互いに何度も謝っている。
カウンターから消えたふたりの姿を追いかけてスタッフたち。
そしてカウンターの上に再び現れた翠と遊馬を見つけて、
「何やってる…あのふたり…???」
奈都、
「変なの~~。」
最年長の音羽、
「何やってんの…???漫才…???」
「かかかか。漫才って…、音…。おっかし。」
その音羽とは1歳違いの…とは言っても、生まれが一週間違いの桑畑榛名。
「いや、だって、みどにしては珍しいじゃない、ユッキ以外の男性と…。」
翠、
「すいません。」
ペンスタンドを元の位置に戻して翠。
「ここ…ですよね。」
巽、
「すみませんでした。僕の方こそ…。はい。そうです。ここ。」
そして自分の名前を書いて、翠。
巽、頭の中で…、
「…かわいい字~~。」
翠、
「はい。」
巽、
「はい。確かに。ありがとうございます。」
「うん。じゃね。」
右手を上げて翠。
巽、
「あっ。」
「…ん…???」
「また、いつでも、ルッポラに…。お待ちしております。」
その巽に、
「あ~~。はは。うん。ありがと。」
その瞬間、翠、両手をパン、
「あっ、そうだ。」
巽、
「ふん…???」
「遊馬君、ちょっと待って。ナイスタイミング。」
自分のデスクに駆け足で翠。
後ろを横切る翠に万美、
「ん~~???どした~~みど~~???」




