翠と橙(みどりとゆず) vol.078 「彼氏と彼女って、あの4人に教えているもんじゃない。」
「それにしても…。」
カウンターを拭きながら柴乃、
「ゆずちゃんがね~~。会社の人、連れてくるなんて…。巽~~???」
カウンターの中でグラスを洗いながらの巽、
「へっ…???…あぁ~~。さぁ…???」
「当然、巽とゆず、彼氏と彼女って、あの4人に教えているもんじゃない。」
そんな柴乃に、
「えっ…???いやいやいや…。そんな、そんな…。」
「ば~かね~~。それくらい意識しちゃうものよ~~。珂帆さんだって、そう言ってたから。」
プライベートルームに入っている珂帆。
そのプライベートルームの方をチラリと向いて巽、
「……。」
「あっ。そういえばさ、巽が高校時代に病院に入院した事…ある…???って、聞いた女性、いたよね…。」
巽、
「へっ…???」
目をパチクリさせて、
「あ~~、あ~~。はい。」
「なんだったんだろうね…。」
巽、頭の中で、
「…みど…。」
今や、あの時の女の子とは全く変わって、
芯のしっかりした女性に変わっていた逢坂翠を思い出して、
「全く、別人。はは。変わったよな~~。…10年か…。」
柴乃、
「…ん…???何か言った…???」
巽、
「…ん…???はは…、いや…。」
そしてにっこりと。
店のドアが開く。
近くにいたスタッフ、
「いらっしゃいませ~~。」
ゆっくりと歩く客。
「ヨッ、こんちは。先日はども。…予約は…してないんだけ…ど…。」
柴乃、
「いらっ…。あっ。いつもお世話になっています。ありがとうございます。あっ、少し、お待ちくださいませ。巽、お願い。」
巽、
「あっ。はい。」
そして客に向かって、
「こちらにどうぞ。」
そして…。
「3名様で…。」
「おぅ。頼む。遊馬君、先日はどうも、歓迎会。ごちそうになりました。」
巽、そういう男性に、
「いえいえ。こちらこそ。ありがとうございました。」
そして3人を先ほどの橙たちのいたテーブルに案内する。
「こちらです。」
「ん~~。素敵。良い席ね~~。ありがと。」
女性。
「うん。ここは、ウチの会社でも、ちょくちょく利用させてもらってるんだ。」
男性。
「ありがと、遊馬君。素敵な席だ。」
巽、
「ありがとうございます。」
「あっ、遊馬君。珂帆…いる…???忙しかったらあれだけど、時間あったら…。」
もうひとりの女性。
巽、
「はい。もう既に、別のスタッフが、知らせているみたいですけど…。」
「さっすが~~。」
「ごゆっくりどうぞ。」
男性、
「ありがと。」
そんな巽と入れ替わりに柴乃、ウォーターポットを持って。
「いらっしゃいませ。いつもお世話になっております。まもなく、本条参りますので。」
「しっかし、びっくりした~~。帆霞の妹のお店がここにあるなんて。素敵なお店じゃな~~い。ねぇ~~。」
女性。
グラスに水を注ぎながら柴乃、にっこりと。
「そっか~~。帆霞の妹のお店なら、利用しちゃうよね~~。菫も敦哉さんも。」
男性、
「ん…、まぁ~~。はははは。」
「…って、言うか、菫が敦哉さんに教えたんでしょ、ここ。」
女性。
「まね~~。さすが、鋭いね~~忍~~。」
もうひとりの女性。
この3人、院瀬見惇哉と妻、菫。そしてもうひとりの女性が…、三笠忍。
総合デパート「ロンド」の社長秘書である。




