翠と橙(みどりとゆず) vol.070 そして頭の中で…、「コブ…できてる…。」
薫郎、自然にペンを持ったままの手で、
そのまま右手中指で首の後ろをカリカリと…。
そして自然にその上の方に…。
「えっ…???」
目をパチクリ。
「うそっ!!!」
その声にまた営業スタッフ、
「…ん…???」
薫郎を見つめ、その目に薫郎、左手を振りながら、
「いや…。なんでも…。」
そして頭の中で…、
「コブ…できてる…。」
思わず顔を下向きに、左手の平を額に、
「かかかか。参ったな~~。」
そんな風に感じながら、また、さっきの、自分の体の上の橙を思い出して…。
そして次に頭の中に浮かぶ顔、翠。つぶやくように、
「みど~~。出てくんな~~。もぅ~~。かかかか。」
毎晩、ダブルベッドの上でのふたり。
数年、同棲生活ではあるのだが、実際、当然肉体関係がある…。
と言ってみても、周りがそう考えるほどの関係には至っていない。
確かに、共にじゃれあいながら体を合わせることもあるにはあるのだが…、
それ以上の進展はなく、いつの間にかお互いがまどろみの中に落ちていく。
そういう意味でも、薫郎にしても、翠にしても、とにかく眠りに入るのが早い。
大凡5分で寝落ちするという意外性の持ち主の、ふたりと言う事である。
その理由に、先にシャワーとバスを使った後には、次に誰が使おうとも、
片方はベッドの中で眠りに落ちているという事になる。
そして、もう一つが、仕事を部屋には絶対に持ち込まない。
これはふたりのルールでもある。
トイレから戻ってきた橙に、
「あっ。あっ。あっ。ナイスタイミング。ゆず、ゆずゆずゆず。これ、アトリエの稲川室長に持ってって頂戴。早くしてって、催促きちゃった。」
尋音。リングに掛けられた数枚のパターンを3つほど…。
橙、
「はい。」
自然に両手が出て…。
尋音、
「はい。お願~~い。」
翠、
「あ~~ゆず~~。ついでって言っちゃあ悪いんだけど~。アトリエの帰りに、Mのボディ、持ってきてくれる~~。」
橙、
「は~~い。分かりました~~。」
そして、パターンを見ながら振り返り、ドアに向かう。
「…と~~~~。」
薫郎。
その瞬間、橙、顔を上げてまん丸い目をして、大きな口を開けて、
「ひゃ~~~。」
尋音、翠、
「ふん…???わお。」
薫郎、すかさず体をのけずらせながら、橙を避けるように、体を一回転させて。
右手にはコーヒーが入っているカップ。
薫郎、
「ヤッベ~~。」
それを見ていた千慧、
「ナイス、ユッキ!!!」
手を叩いて。
「いい動き、してんね~~。」
翠と尋音、そして奈都に万美も、
「お~~。お~~。お~~。素晴らしい、条件反射。かかかか、お見事。」
薫郎、
「ひぇ~~。ほぅ~~。」
橙、びっくりして、また薫郎に、
「すみません。ごめんなさい。」
薫郎、
「いやいやいやいや。まさか…。かかかか。」
礼人、飛香、永亮、
「えぇぇぇ…???何か…あった…???」
翠、
「かかかか、ゆず~~。気を付けて、早くお願い~~。」
その声に橙、後ろを振り向いて、恥ずかしそうに、自分の頭を右手でコツン。
そんな橙に右手で手を振っての翠、にっこりと。
ドアを開けて橙、しょんぼりして、
「…なんで立て続けに、2回も…。このおっちょこちょい。」




