翠と橙(みどりとゆず) vol.069 「…どうしよ、どうしよ、まだ、心臓…ドキドキしてる。」
橙の向かった先を見て飛香、
「私も~~っと…。」
「ちょっとコーヒー飲んでくるわ。」
礼人。
薫郎、
「あぁ…。」
そして、歩きながら、右手の平を見て、
「え~~~。」
そして、唇に指を当て…、
「俺……。ゆず……。」
トイレの中で橙、鏡を見ながら、
「…どうしよ、どうしよ、まだ、心臓…ドキドキしてる。」
左胸に右手を当てながら…。そして…、
「杉浦…くん…。」
生まれて初めて、父親以外の男性の体に触れた橙。
確かに巽とは長年付き合ってはいたが、未だにファーストキスの経験すらなかった。
自分の左胸に手を当てた次に、自分の唇に…。
その瞬間、トイレのドアがガチャリ。
「ハイ、ゆずさん。」
飛香。
その声にドキリの橙、
「あっ。あ~~飛香さん。」
鏡を見ている橙に飛香、
「ゆずさん…。大丈夫だったの…???ユッキさんとバン。」
両手を広げて両手を打って。
橙、
「あっ。あ~~。うん。いきなりだったから、びっくりしちゃった。」
そして、
「私が急いでて、それに、仕事の事も考えてたから、前…良く見てなかった。そんなんで、角曲がって、バン。」
飛香、
「かかかか。そっか~~。今…新しい企画だから、みんな、めっちゃくちゃ…忙しそう~~。」
橙、
「うんうん。」
数秒の沈黙の後、
「私にこの仕事…、出来るかな~~…、な~んて…。」
鏡の中の飛香、少しはにかんだように、そして橙を見ながら…。
橙、
「へっ…???」
「うん。ほら。ゆずさんみたいに、東大出、それに、仕事も凄いもの覚え良いって、みんな…。」
そんな飛香に橙、懸命に両手を振って、
「いやいやいや。そんな事、ないよ、全然。私なんて、ようやく、大勢の人たちと一緒に仕事できるようになったって…。以前なんてこんなんじゃ…。とにかく、物凄い、地味だったんだから…。」
そして舌をチロリと出して、
「自分で言うのも…なんなんだけど…。」
変顔をしながら橙。
「この会社に入って初めてだよ。友達も出来たし。」
飛香、
「えっ…???」
「私…、今まで、友達と言う友達…、いなかったから…。飛香さんは…たくさんいるでしょ。」
そんな橙に飛香、
「う…うん。まぁ…。何人か…。」
「そっちの方が羨ましいよ。いろいろと話しが出来て。…一緒に、頑張ろ。私、飛香さんとも、友達…、なりたい。」
「いい…の…???」
「当~~然、当たり前。」
飛香、少しだけ顔を赤くして、
「うん。ありがと。…ふふ。ほんとは、男子だけの仕事場…、ちょっと…きつかったんだ。」
「あ~~。営業はねぇ~~。飛香さん以外、全員、男子…。」
そこまで言って、
「あっ。山根マネージャーがいる。」
飛香、
「うん。でも…、あの人は…とにかく…別格。」
橙、
「かかかか。そっか~~。うん。だよね~~。」
既に自分の机で仕事をしている薫郎に礼人、右肩をポンと叩いて、
「ユッキ、おま…、どっか…打ってなかったの…???」
その声に営業スタッフ、
「…ん…???」
薫郎、
「へっ…???あ~~。いや…、別に…。」
礼人、
「ふん。…で、ほんとに、ゆずちゃんと、バ~~ン…???」
両腕を広げて、両手をパン。
薫郎、
「ん…???ん~~。まぁ…。いきなり…だったからな~~。」
礼人、
「ふ~~~ん。」
腕組みまでして礼人。
「……って、礼人、一体何…???」




