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254/259

翠と橙(みどりとゆず) vol.254 「…私なんて、4度目です。霞は3回。」

そんな龍興を隣で、

「お父さん…。」

紅葉。

「いえね。この人。とにかく末の娘だけは…、自分のホテルに迎えたいって、大学時代から…。姉のふたりは…。」

蘭を見ながら、

「この通り、自由奔放に、自分の好き放題、やりたい事をやってますから…。」


黙って聞いている雅樂。


「親の言うとおりに、やっていりゃあ、それでいいんだ。」

龍興。

「ほらみろ。聞けば、4年も付き合ったヤツと、別れたというじゃないか。」


絃、頭の中で、

「…あっ、ユウマだ…。ぷふ。」


蘭、

「何言ってんのよ。1度や2度の失恋が何よ。そりゃ、お父さんとお母さんは、見合いで一発だったかも…知れないけど…。…私なんて、4度目です。霞は3回。それに比べれば、ゆずなんて…。…凄いよ。…良い人と、巡り合えた。」


絃、頭の中で、

「…正確には…、再会…なんだ…けど…。」

笑いを堪えるように…。


雅樂、済まなそうに、

「あの~~。あっしが…こんな事…、言える筋合いじゃ~ねぇ事、分かっておりやす。ですが…、娘さん…。いや…、ゆずちゃん。どうか…長い目で、見てやっちゃあ~くれませんか。」


その声に龍興、

「えっ…???」


「いやね…。ゆずちゃんも…そうなんだが…、ここにくる客の中に、ゆずちゃんと同様に、常連の客…、女の子たち3人おりやす。とにかく、この女の子たちが、贔屓にしてくれているせいで、この店ぁ、もう、お客さんに喜ばれて喜ばれて。それに、みんな、良い顔、してくれてんです。」

雅樂、ひと呼吸置いて、

「そんなお客さんたちの心って言うのか…、裏切らねえで…欲しいんですわ。」


その声を聞いて龍興、

「あっ。」


「いやね。もぅ~~。彼女たち、お客さんに名前まで憶えられて。…あっしは…、つくづく、この店作って、良かった…って、思っておりやす。…かかかか。御蔭で、店、盛り上げて頂いてますわ。それに、ウチに住んでるふたりも…、仕事終わったら、疲れているはずなのに、店、手伝ってくれてる。」




口を尖らせて龍興。




「しかも…、その手伝ってくれてる姿に、お客さん、また嬉しいんでさぁ~~。」


その話を聞きながら絃、にっこりと、何度も頷いて。


そして蘭、

「もしか…して…、お父さん…。ホテルの事ばっかりで…、お客様の事…考えて…いないとか…。」

そして、

「もしそうだったら、何がホテルの常務取締役総支配人よ!!!!」

いきなりテーブルをバン!!!そして立ち上がり…。


雅樂、いきなり仰け反る。


絃、頭の中で、

「…恐っ!!!」


紅葉、可笑しがって、鼻の下に指を。

「ぷふ。」


そんな妻の顔を見て龍興、

「ふん…。」


「だ~~から、言わんこっちゃない。お父さん、あなたの負け。いい加減…諦めなさいな。…くく…。」

そして店主と店員を見て、

「いえね、この人。ホテルの専務取締役と張り合ってるんですよ。昔っから。」


雅樂、絃、

「は…ぁ…。」


紅葉、

「実は、そのホテルの専務取締役にも、娘さんが3人いらっしゃって。真ん中の娘さんが、一昨年、ホテルに入社したばかり。それに負けまいと、ゆずを一生懸命、ホテルに入れたくってぇ~~。」


蘭、

「娘を自分の仕事に使うな!!!」


雅樂、絃、

「あっ、あ~~。はぁ~~。」


紅葉、

「ゆずが、しっかりと…みなさんに、愛されてる。可愛がられている。私ももぅ~~。それで充分。あんなに目立たなくって、友達もいない、そんな子だったのに…。」


その声に蘭、

「母さん。」


雅樂、

「大丈夫でさぁ~~。けけけけ。」








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