翠と橙(みどりとゆず) vol.253 厨房から出てきた絃、「あっ。」
次の日の夕方。まだ準備中の雅楽。
ドアが開いて…。
「こんにちは~~。昨日はどうも~~。」
厨房の中で、
「あ~~。まだ…準備中で~~。」
雅樂。
「すみません。なに…。」
厨房から出てきた絃、
「あっ。」
いきなり雅樂に振り返って、
「雅樂じぃ。」
手招き。
雅樂、
「あぁ~~???」
そして椅子から立ち上がり、玄関の方を…。
「あっ。」
店に入って来たのが、橙の姉と両親。
雅樂、頭を掻いて、
「ゆんべはどうも…。」
絃、
「どうぞ、どうぞ。…まだ…準備中で、何も…。」
そんな女性に蘭、
「ううん…、大丈夫、ありがと。うん。ふふ。それにしても、可愛い店員さん。」
絃を見ながら。
「これなら、お客さん、喜ぶよね~~。」
絃、右手を振りながら、
「とんでもないです~~。」
蘭、
「なに、突っ立ってんのよ、失礼よ、ふたりとも…。」
龍興、
「あ…。あ~~。」
紅葉、
「おとうさん…。」
雅樂、絃を見て、頭を傾げながら…。
けれども、笑顔で、
「ゆうべは…どうも…、ありがとうございました。…でぇ…???」
蘭、
「あらためまして。ゆずの姉の、久留須蘭と申します。週刊シャンディアの編集者をしております。そして父の木葉龍興、そして母の木葉紅葉。」
そして、
「準備中とは知りながら、お邪魔して…。」
雅樂、
「いえいえ。」
「ゆずが…、父に、好きな人が出来た。もしかしたら…、その人と、今後は一緒に生活していくと思う。お父さん、お母さん、ごめんなさい。許してほしい。…な~~んて、メールが来たの。いきなりだったから、ふたりともび~~っくり。」
その話を聞いて、雅樂、
「あっ。あ~~。」
絃、真ん丸い目をして…。けれども、思わず、
「ぷっ。」
話を続ける蘭、
「もしか…したら…、仙台での、彼…かな…???…って、思って…。…確か、杉浦薫郎…君。株式会社アンジェリーナ、ジェシカの営業。そして焼き鳥屋…雅楽に住んでいる。もう一つの顔が…、料理人。」
口を尖らせて、
「凄っ。」
絃。
「都内で、ホテルの経営に…携わっております。」
雅樂に名刺を渡して龍興。
雅樂、
「これは…どうも…。」
名刺を見て、
「ホテル東京ロンドネ、常務取締役・総支配人…、木葉…龍興…。」
その名刺を隣にいる絃に預けて。
そしてその名刺を絃が見て、
「…ホテル東京ロンドネ…。」
見た途端に、小さな声で、
「うそ。ここって、高級ホテル~~。凄っ。」
「…全く…、親の言う事は一切…。好きな事…し放題。」
腕組みをしての龍興。
「今度は、自分勝手に、好きな人、出来た。その人と生活…。とん~~でもない。親を見くびってばっかり。」
その声に蘭、
「お父さん。」
その声に龍興、瞬間、蘭に詫びるように、
「あっ、あ~~。すまん。」
「私は、大賛成してるの、ゆずの事。」
蘭。
「ゆずって、子供の頃から、全く目立たず、それに、おとなしい子として、生きてきた。だから…当然、全部、大学も、親の面倒で…。男の人になんて、全く…興味すら…してもらえなかった。」
雅樂、絃、
「……。」
「そんなゆずが、今…。かかかか。凄い変わりよう~~。仙台でも…、はは。偉かった。…しかも、今じゃ、あの…、東北にフレバーありの、田島川社長にまで、気に入られてるんだから…。」
にっこりと蘭。
「そんなゆずが好きになった人。杉浦薫郎。私は…ふたり…応援するけどな~~。」
龍興、不貞腐れた顔をして、
「ふん。何を…バカな…。」




