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243/259

翠と橙(みどりとゆず) vol.243 「私には、大切な人だから、絶対に怒んないでって…。」

少し畏まった感じで翠。

新聞を見ながらの雅樂。


翠、

「雅樂じぃ…。あのさ…。実は…。」

薫郎の顔を見て、

「わ…私たち…。ユッキと私。」


雅樂、

「…なんでぃ…。」


翠、小さな声で、

「あの…さ…。私たち…ふたり…。」


「おめぇら、お互い、好きな人…出来たってか。」

ぶっきらぼうに…。


「う…、うん。」


「なんだって。みどには…あの、遊馬って人。ユッキには…あの、ゆずちゃんって子…???怒んないで、聞いてあげてよね。」

最後は声高に。


翠、薫郎、

「えっ…???」


「絃に言われた~な。昨日の絃…帰りの時に…。」


翠、薫郎、お互いに顔を見合わせて、

「絃…???」

「しっかりと聞いてたんだよ。俺が、めでてぇ。めでてぇって言ってたのをな。あいつ。絃。」


翠、

「へっ…???」


薫郎、

「あ~~~。そういえば、焼き鳥…焼きながら、なんだか…。洗い物してて、水の音で、聞こえなかった。」


「絃が、みどもユッキも…私には、大切な人だから、絶対に怒んないでって…。」


翠、薫郎、

「絃…。」


「そりゃ~な。俺だって…、その…、おめぇらが、いつまで経っても、全く変わんねぇの…、ある意味じゃ、呆れてんだ。とっとと、身ぃ固めちまぇ。って、どんだけ思ったか。…けどよ。な~~んか…、ここ数カ月、様子が変だ、変だって…。」


翠、

「雅樂じぃ…。」


「へん。幾ら鈍感な俺でも、店に若い子がいりゃ、それなりに、自然に耳に入ってくるってもんよ。」


薫郎、

「雅樂じぃ。」


「まっ、それが、早かろうが、遅かろうが、俺にとっちゃあ~~。関係ねぇけどよ。そんな…。おめぇら、俺には自慢の…子供みてぇなもんだ。」


翠、

「雅樂…じぃ…。」


バリっと、新聞を捲って、

「でぇ~~。どうすんだぃ、これから…???…、みどは…、その…、遊馬って人と…。それからユッキは…???」


翠、

「あ…。う…うん…。…もしか…したら…。私…ここ…。」


その声に薫郎、

「みど…。あっ。あ~~。」


「だって…。ユッキ…、ゆずと…。」


雅樂、

「俺ぁ…、ゆずちゃん…好きだぜ。」


薫郎、

「えっ…???」


「絃とも、仲…いいみてぇだし。…それに、みど。」


翠、

「はい。」


「おめぇも…、ここ、出ていくこたぁねぇよ。」

「へっ…???いやいやいや。…でも…。それじゃ…。」


「遊馬って…人と、隣に住みゃあいいだろ。」


翠、右左見て、

「へっ…???隣…???隣って…、どこの隣よ…???」


「隣って…言えぁ~隣、ほれ。」


「と・な・り…って…???はい…???雄さん…家…???は…ぁ…???…意味分かんない。」

薫郎の顔を見て…。


薫郎も、右手を振って、

「いやいやいやいや。えっ…???俺にも…。チンプンカンプン。」


「雄ちゃんな…。家、引き払って、今…福島だ。」


その声に翠、薫郎、共に、

「え―――――――――っ!!!!」


「今や、お隣さんは、もぬけの殻。」


今度は翠に薫郎、

「うっそ――――――――っ!!!!」




大凡、1ヶ月ほど前…。雅樂の家に訪れた夫婦。


雅樂の家の隣の倉本雄浩(くらもとたけひろ)。そして妻の和江(かずえ)。

「ふん。雅樂じぃと、みどとユッキに会えなくなるって思うと…寂しくってね~~。それに絃とも。…とは言え、動けない父親、放っておくことも…。」


雅樂、

「だよな~~。大変だな、親父さん。」




福島に住んでいる和江の父親、榊平(さかきたいら)が、

妻の紘子(ひろこ)から先立たれてひとり身になってしまったのだ。







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