翠と橙(みどりとゆず) vol.243 「私には、大切な人だから、絶対に怒んないでって…。」
少し畏まった感じで翠。
新聞を見ながらの雅樂。
翠、
「雅樂じぃ…。あのさ…。実は…。」
薫郎の顔を見て、
「わ…私たち…。ユッキと私。」
雅樂、
「…なんでぃ…。」
翠、小さな声で、
「あの…さ…。私たち…ふたり…。」
「おめぇら、お互い、好きな人…出来たってか。」
ぶっきらぼうに…。
「う…、うん。」
「なんだって。みどには…あの、遊馬って人。ユッキには…あの、ゆずちゃんって子…???怒んないで、聞いてあげてよね。」
最後は声高に。
翠、薫郎、
「えっ…???」
「絃に言われた~な。昨日の絃…帰りの時に…。」
翠、薫郎、お互いに顔を見合わせて、
「絃…???」
「しっかりと聞いてたんだよ。俺が、めでてぇ。めでてぇって言ってたのをな。あいつ。絃。」
翠、
「へっ…???」
薫郎、
「あ~~~。そういえば、焼き鳥…焼きながら、なんだか…。洗い物してて、水の音で、聞こえなかった。」
「絃が、みどもユッキも…私には、大切な人だから、絶対に怒んないでって…。」
翠、薫郎、
「絃…。」
「そりゃ~な。俺だって…、その…、おめぇらが、いつまで経っても、全く変わんねぇの…、ある意味じゃ、呆れてんだ。とっとと、身ぃ固めちまぇ。って、どんだけ思ったか。…けどよ。な~~んか…、ここ数カ月、様子が変だ、変だって…。」
翠、
「雅樂じぃ…。」
「へん。幾ら鈍感な俺でも、店に若い子がいりゃ、それなりに、自然に耳に入ってくるってもんよ。」
薫郎、
「雅樂じぃ。」
「まっ、それが、早かろうが、遅かろうが、俺にとっちゃあ~~。関係ねぇけどよ。そんな…。おめぇら、俺には自慢の…子供みてぇなもんだ。」
翠、
「雅樂…じぃ…。」
バリっと、新聞を捲って、
「でぇ~~。どうすんだぃ、これから…???…、みどは…、その…、遊馬って人と…。それからユッキは…???」
翠、
「あ…。う…うん…。…もしか…したら…。私…ここ…。」
その声に薫郎、
「みど…。あっ。あ~~。」
「だって…。ユッキ…、ゆずと…。」
雅樂、
「俺ぁ…、ゆずちゃん…好きだぜ。」
薫郎、
「えっ…???」
「絃とも、仲…いいみてぇだし。…それに、みど。」
翠、
「はい。」
「おめぇも…、ここ、出ていくこたぁねぇよ。」
「へっ…???いやいやいや。…でも…。それじゃ…。」
「遊馬って…人と、隣に住みゃあいいだろ。」
翠、右左見て、
「へっ…???隣…???隣って…、どこの隣よ…???」
「隣って…言えぁ~隣、ほれ。」
「と・な・り…って…???はい…???雄さん…家…???は…ぁ…???…意味分かんない。」
薫郎の顔を見て…。
薫郎も、右手を振って、
「いやいやいやいや。えっ…???俺にも…。チンプンカンプン。」
「雄ちゃんな…。家、引き払って、今…福島だ。」
その声に翠、薫郎、共に、
「え―――――――――っ!!!!」
「今や、お隣さんは、もぬけの殻。」
今度は翠に薫郎、
「うっそ――――――――っ!!!!」
大凡、1ヶ月ほど前…。雅樂の家に訪れた夫婦。
雅樂の家の隣の倉本雄浩。そして妻の和江。
「ふん。雅樂じぃと、みどとユッキに会えなくなるって思うと…寂しくってね~~。それに絃とも。…とは言え、動けない父親、放っておくことも…。」
雅樂、
「だよな~~。大変だな、親父さん。」
福島に住んでいる和江の父親、榊平が、
妻の紘子から先立たれてひとり身になってしまったのだ。




