翠と橙(みどりとゆず) vol.239 翠、「…大切な人の事だもん。」胡坐を掻いて…。
「へぇ~~。今日…、杉浦君…仙台…。」
スマホの向こうから巽。
翠、
「うん。だから、珍しく、家で、電話が出来るっと。…って言うか、ゆず…仙台出張って…言わなかった~~???」
「…あっ、いや…。聞いて…ない。」
翠、そんな声の巽に、
「ふ~~ん。」
そして、
「…で、どんな感じ。ユウマ…???」
巽、
「はい…???…どんな感じって…。毎日…話してんのに…。」
そんな声に翠、口を尖らせて、
「だって、聞きたいじゃんよ~~。大切な人の事だもん。」
胡坐を掻いて、左手で右足首を握って、前後にブラブラとしながら。
頭にはバスタオルで巻きながら。
巽、翠の最後の言葉を聞いて、数秒の沈黙。
そして、
「…みど…。」
翠、自分の足の爪を見ながら、
「うん…???」
「…会いたい。」
ポツリと…。
翠、その声に、少し…間を開けて、
「…うん…。私も…。」
ポツリと…。
その瞬間、小鼻がツ~~ンとして、いきなり目が涙で潤む。
「へぇ~~~。ダメだ。」
巽、
「…えっ…???」
「よっこいしょっ。…ユウマ。ごめんね。今から、そっち行く。」
巽、その声に、
「えっ…???そっち行くって…みど…???まさか…。俺の…部屋…???」
「うん。今から行く。じゃね。」
そのまま、通話を切り、頭のバスタオルを解き、ドライヤーで乾かし、
簡単に着替えを済ませて外に。
部屋の外から聞こえる、ドタドタ、ペタペタとした音に、雅樂、
「なんだ…???」
駅まで大凡、走って7分。
駆け足で改札に。
「へぇ~~~。」
そして、ホームにまた駆け足で。
「おっと、ナイス!!!」
そのまま電車に。そして、またまた、
「ナイス。混んでない~~。ふぇ~~。」
思わず、シートにバッタリと。
「さすがに、いきなり走って…。こりゃ、しんどいわ。」
そして、辺りを見回して、カーディガンの両袖で顔を隠して、
「かかかかか。」
バーのエントランス、女性バーテンダーから伴われての薫郎と橙。
「ありがとうございます。」
「ごちそうさまでした。」
女性バーテンダー、
「仙台の夜、ごゆっくりと…、どうぞ。」
そしてそのままエレベーターで…、5階まで…。
そしてエレベーターを降りて橙、
「静かだ~~。」
薫郎、
「うん。」
ゆっくりと歩いて…、薫郎の部屋。
薫郎、
「じゃ…。…おやすみ。」
橙、
「うん。おやすみ。」
そして橙は薫郎から離れる。けれども、僅かに離れたかなと思った瞬間、
いきなり薫郎に振り向き、そのまま薫郎の唇にキス。
橙、
「おやすみ。」
そして、また自分から離れる橙を今度は薫郎、橙の体を自分に引き寄せ、抱きしめる。
橙、
「ユッキ…。」
階段を上って駆け足でドアの前、そしてチャイムを…。
巽、ドアに向かって、
「はい。」
そして、ドアの向こうから聞こえる声、
「私、翠。」
巽、
「みど…???どうやって、この部屋…???」
ドアのロックを解除して…。
ドアを開けた途端、翠、
「ユウマ~~~。」
いきなり巽を抱きしめる翠。
抱きしめられながら巽、
「良~~く、この部屋…分かったね~~。みど~~。はははは。」
「はははは。私を誰だと思ってる~~。ひゃ~~。や~~っと、ユウマ~~。つ~かまえた~~。」
巽をきつく抱きしめて翠。
巽、きつく抱きしめられながら、
「痛い、痛い。」
翠、
「あっ。ごめ~~ん。」
そして巽の体から離れる。
と、逆に巽から、
「な~~訳、ないだろ。それっ。」
今度は巽からきつく抱きしめられて翠。キョトンとした顔をして。
「わお。」
巽、
「会いたかった。」
翠、
「私も…。」
そして巽、おもむろに翠の額に唇を…。
目を閉じる翠。
そしてわずかに上に顔を向けて唇を…。
その唇に静かに重なる巽の唇。




