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238/259

翠と橙(みどりとゆず) vol.238 渚沙、薫郎に、低い声で、「あとは、任せたよ~~。」

それから30分後。

渚沙、

「じゃ、私はこれで…。」


橙、

「え~~。帰っちゃうの~~。」


バーテンダー、

「お気を付けて、行ってらっしゃいませ。」


渚沙、

「丹下さん。お願いね。」

バーテンダーに。


丹下と言われるバーテンダー、にっこりと。

「畏まりました。」


渚沙、薫郎に、低い声で、

「あとは、任せたよ~~。」

薫郎の左肩をトンと叩いて…。


薫郎、そんな渚沙に、

「へっ…???」


「那美(なみ)ちゃん、またね~~。」


女性バーテンダー、

「ありがとうございました。」

カウンターから出て、エントリーに向かう渚沙に伴い…。



少し程よい気分の橙、

「気持ちいい~~。」


薫郎、

「かかか。酔ったか~~ゆず~~。」


丹下、にっこりと、

「ほろ酔い気分ですか~~。」


薫郎、

「そのようで…。」


橙、腕時計を見て、

「8時…37分…。」

そして窓の方を見て、

「綺麗~~。」

そして、スツールから降りて、

「ユッキ、ユッキ。」

薫郎を手招き。その時、少し足元がぐらり。

「わっ。」


「大丈夫ですか…???」

女性バーテンダーが橙の体を。


橙、

「あっ。すみません。ありがとうございます。」


薫郎、

「ゆず~~。」


橙、女性バーテンダーに、

「窓の向こう、見たくって。」


「どうぞ。ご案内いたします。」


薫郎、バーテンダーを見て、

「かかか。全く。」


丹下、にっこりと、

「どうぞ。」

優しい声で。


女性バーテンダー、椅子を用意して、

「どうぞ。座っても、しっかりと…ご覧いただけます。」


橙、

「ありがとう~~。」

椅子に座って窓の外の夜景を見る橙。


女性バーテンダー、

「お客様も…どうぞ。」

薫郎にも椅子を。


薫郎、

「ありがとうございます。」



椅子に座りながら橙、窓際の手摺に手を添えながら。

「綺麗~~。」


薫郎、

「ん~~。」


「私の…デザインが…、生まれた。」


薫郎、

「おぅ。大したもんだ。」


「へへ…。凄いでしょ。」

「あぁ…。」


そして、薫郎のその声に橙、何かしら瞼が熱くなって。

「巽と…、別れた。」

ポツリと小さな声で。


その声に薫郎、

「えっ…???」


女性バーテンダー、

「こちらに、お飲み物を…。」


少し鼻声の橙、

「あっ、ありがとう…。」


薫郎、女性バーテンダーに会釈だけ。


女性バーテンダー、

「ごゆっくりと、どうぞ。」


橙の目が仙台の夜景で潤みだす。

「はぁ~~。」


薫郎、

「ゆず…???」


橙、グスリと…。

「巽…、チーフが…好きなんだよ。」


薫郎、

「ゆず…。」


「でも…。チーフ…、ユッキと…。はぁ~~~。…わたし…、バカだよ。4年も…巽と一緒で、巽から…好きだって、一回も…言われてなかった…。わたし…だけ…、好きだって…、思ってた。好き過ぎだった…ゆずが…バカ。」



この時、ふたりは気づかなかったが、その場所だけ、

照明が最小限ギリギリまで、落とされていた。



橙の声が続く。ポツリと目尻から零れる涙。

「バカだよ、私。巽を…追っかけてばかり…。はは…、迷惑…ばっかり…巽に、掛けてたんだよね~~。また…、大事な人…、なくし…。」


その時、優しく右頬が添えられ、顔が左側に寄せられ、

自分の唇に重ねられたもう一つの唇。


そのまま…5秒ほど。

そして離れる唇。


橙、

「ユッキ…。」


ほの暗い照明の下で薫郎、

「俺も…同じ…。みどから、ゆずを…、頼まれた。」


その声に橙、また涙が…、

「ユッキ。」


「ゆずが…、好きだ。」



全体に照明がほの暗く。仙台の夜景にふたりの頭だけがシルエットのように。

そして、そのシルエットは、また静かに重なる。

そしてその重なりが離れて数秒後。次第に全体の照明が浮き上がる。


その雰囲気に、橙、

「へっ…???」


薫郎、

「あれ…???」


左右を見るふたり。


そして何事もなかった事のように、今度は後ろの方から、

「いらっしゃいませ。」

別のゲストが店の中に…。


薫郎と橙、振り返り、バーテンダーと、女性バーテンダーに、

「す…、すみま…せん。」

ペコリとお辞儀をして。


丹下、

「いえいえ。とんでも、ございません。」





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