翠と橙(みどりとゆず) vol.228 「結婚は…、考えて…ないの…???」
そして寺崎、
「うんうん。旨い。大将、旨いよ、これ。焼き具合、半端ないほど、いい。うん。」
そして、
「いやはや…、東京来て、こんな旨い焼き鳥…食えるとは…。嬉しいね~~。」
流歌、
「うんうん。右に同じ。凄いよね。」
雅樂、そんなふたりを見て、
「けけけ。ありがとよ。」
翠、
「焼くのは、雅樂じぃじゃないと…。ねぇ~~。」
雅樂、
「けけけけ。なぁっ。」
「ユッキも…良く、動くよね~~。仕事明けなのに…。」
寺崎。
厨房の中で薫郎、
「ありがとうございます。」
「ときに…、みど…。」
翠、寺崎を見て、
「ふん…???」
「結婚は…、考えて…ないの…???」
いきなりの声に翠、
「へっ…???」
寺崎の右隣で流歌、チラリと翠の顔を見て、
「ニッ。」
翠、慌てて、
「えっ。え~~~。へへへへへ。」
寺崎、
「流歌は…、来年辺りは…。うん。」
翠、
「うそ…???流歌さん…???」
流歌、そんな翠を見て、にっこりと。
「うん。ふふふふ…。」
「仕事、一辺倒…だったんだけどさ。社長から、激が入って。…致し方なく…。…って言うか、これがまた、凄いヤツなんだよ。」
翠、
「へぇ~~。」
「2年…だっけ…???」
流歌に…。
流歌、
「うん。」
「流歌の相手の男性…、前に…、2年…付き合って、いよいよ…結婚って女性がいたんだ。…けど、そんなところに、その女性の…、甲状腺に癌が見つかって…。」
翠、
「癌っ!!!」
「うん。」
雅樂、
「……。」
「そん時、周りのみんな…、その人と別れるもんだとばかり。」
流歌、いきなり唇を尖らせて。
寺崎、
「…けど、彼は…その女性と、別れなかった。」
翠、
「……。」
「その理由が…。その彼女、身寄り…いなかったんだ。両親が子供の頃に事故で亡くなって、母方のおばあさんから育てられてて…。」
雅樂、新しい素材の焼き始め。
「もちろん、彼女はひとりっこ。…自分の力で、小さい頃から働いて、高校、そして大学。そして…彼女の念願の夢だった、ホテルの仕事。名古屋でも有名なホテル。グランド・プリズンホテル。」
翠、
「わっ。私…そこ…知ってる。」
寺崎、
「そこで、その男性と知り合って、付き合い始めた。…けど…。付き合って、2年…、彼女の甲状腺…癌だって…。それからだよ、その男性、その彼女の面倒を見始めた。」
翠、
「えっ…。」
「ステージⅣ…。無理してたんだよ。子供の頃からだから…。仕事と勉強。そして、憧れのホテルでの仕事で、仕事も出来て、誰にも優しい男性と巡り合えて…。」
流歌、思わず厨房の中をぐるりと見渡して。
「仕事中に彼女が突然倒れて。病院に搬送されて、彼も彼女の病名が分かって。それから看病をし始めた。とにかく…献身的に。…彼女のおばあさん、何も言えなかったらしい。死ぬかも知れない彼女の…。しかも…、3年だよ、3年。看病し続けて…。でも…、結局は、リンパにも、他の臓器にも癌は転移して…。彼女は…、天に召された。」
瞬きしながら翠。
話しを続ける寺崎。
「それから半年。その男性は…、全く別人になったように、人を寄せ付けなくなったんだ。…ただ、仕事は前以上に真摯に…。」
薫郎、寺崎の話に聞き入っている翠を見て、
「???」
「そんな彼にうちの社長の目が留まった。…そのホテル、グランド・プリズン…。実は、ウチの社長の旦那の妹が副社長してんの。」
翠、
「へぇ~~。」
「今までの彼と違う、何があった…???…って…。ウチの豊橋が、そのホテルの副社長に…。」




