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翠と橙(みどりとゆず) vol.214 「巽に…優しくしてもらえるの…。最後…なのかな…。」

 橙、声を震わせながら、

「う…うう。これが…、巽…、最後なのかな…。巽に…優しくしてもらえるの…。最後…なのかな…。」

目を涙で濡らして、左上の巽の顔を見る橙。

体育座りの脚を右に崩して、体は左側の巽の体の方に…。

涙が出て、そして、今度は口の中の物を飲み込む橙。

自分の顔が巽の左手で引き寄せられるのが分かる。

近づいてくる巽の唇。両手は肩より上、そのままの状態。

橙、薄く閉じたままの瞼。


巽の左親指が橙の右頬の涙を拭って、少し開かれた橙の唇に自分の唇を合わせる。

そのままがっしり橙の体を抱きしめる巽。


その時、初めて橙の体が動く。両脚は右から左に。そして両手で巽の両頬を…。

一旦、巽の唇から自分の唇を離し、今度は自分から巽の唇に。

そして引き絞ったような声で、巽を抱きしめながら、巽のシャツをがっしりと握り絞めて、

「巽―――――――――っ!!!」






雅樂、いつもの市場で、

「よぉ~っす。管(かん)さん、いつもの頼むよ。」


管と言われる店の男性、60代風のがっしりとした体格、

「おぅ、雅樂じぃ、毎度~~。かかかか。いつもながら、景気いいねぇ~~。これだけの素材、全部捌くたぁ~~。雅樂じぃくらいだ。かかかか。なぁ、ユッキ。」


薫郎、

「えっ…???えぇ~~。はははは。さすが、菅さん、いっつも…いいの…置いてますよね~~。」


男性、

「あったりめぇだ、お客さんに、喜んでもらわねぇと…。ほぃ。こいつももってけ。」


いきなり薫郎にレバーの塊を。


薫郎、

「お~~っと。はは。」



馴染みの業者を点々と雅樂、

「おぅ、次でぃ。」

そして、薫郎の顔を見て、

「どうしてぃ、ちょいと、いつもより、元気ねぇ…みてぃだが…???かかかか。夕べ、ちったぁ~無理したかぁ~~???」

笑いながら薫郎に。


薫郎、

「えへ~~。いやいやいや。久し振りの仕入れで、気持ち良くってねぇ~~。さすがに、良いのが揃ってる。」


雅樂、

「あぁ~~。今日も、とことん、みんなに旨ぇ~~っての、作らねえとなぁ~~。」


薫郎、

「うん。」


そして次の業者に雅樂、

「おぅ~~。克(かっ)ちゃ~~ん。おはよ。」


「あいよ~~雅樂じぃ、おはよ。何だい、今日は珍しいねぇ~~。え~~。かかかか。」

克っちゃんと言われる50代の女性。


雅樂、そして薫郎、

「へっ…???」

「えっ…???」


克子、

「おはよ、絃ちゃん。」


その声に後ろを振り向く雅樂と薫郎、

「へっ…???絃…???」

「絃~~~。」


絃、

「へへへ。来ちゃった~~。」


克子、

「ま~~ったく、こんな綺麗な子~~。雅樂じぃの店で働かせるの、勿体ねぇよ。かかかか。」


絃、

「克子おばちゃん、いつも、どうも~~。」


克子、

「かかかか、そうだ。絃が珍しく来てんだ。ちょっと待ってな。」


3人、

「…???」


克子、新鮮野菜を段ボールに、

「絃、ほらよ。」


絃、

「う~~っそ。こんなに~~???」

克子から段ボールを両手に持たされて絃、雅樂と薫郎を見ながら目を見開いて笑顔で…。


雅樂、

「かかかかか。克っちゃん、ありがとよ~~。恩に着るぜ~~。」


薫郎も、

「ありがとうございま~~す。かかかか。ほ~んと、こりゃ凄いや。」

そして、歩きながら、

「絃、俺、持つよ。」


絃、

「うん。ありがと。」


雅樂、

「それにしても、珍しいじゃねぇか、絃…???」


そんな雅樂に絃、

「ふん…???ふん…。まっ。何て言うか~~。ちょっとした…気分…???…ふん。」


「ちょっとした気分~~???」

薫郎と雅樂と同時に。


薫郎、

「かかかか。何それ…???」


雅樂、

「けけけけ…。まぁ、いいわな…。あぃあぃあぃあぃ、活気いいねぇ~~。えぇ~~。」





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