翠と橙(みどりとゆず) vol.212 「俺…、ゆず、負ぶったんだ。新幹線まで…。」
薫郎、
「ほんと。相当…緊張していたみたいで…。ヤマチと俺とで、待合室まで抱えて…。」
翠、
「わ~~お。」
「しかも…、気を失うほどだから…。…でも、まっ、その内、意識は戻ったんだけど…。」
翠、
「うんうん。…けど…???」
薫郎、今度は腕組みして、
「でも…、幾ら意識を取り戻したと言え、脚の感覚…。戻らなかったんだ…。だから…ヤマチ、ベンチで、ゆずを抱えながら、ずっと、脚…さすってやってて…。」
「ふ~~ん。」
「…で、新幹線…出るころギリギリまで待って…。俺…、ゆず、負ぶったんだ。新幹線まで…。」
その話を聞いて翠、
「ユッキ…。」
「コイツ…、もしかして…、これからもっと、もっと…、おっきく…なんのかな~~。な~~んて思って…。」
「……。」
「そしたら、なんでか…。みども…言ってたけど…。…中学の時、ゆずからもらったマフラー、思い出して…。…実際、俺…、そのマフラー、2回くらいしか…、使わなかったけど…。かか。」
「へっ…???そうだったの…???」
薫郎、
「あ~~。…って言うか…、逆に、かあさんが気に入って、そのマフラー。かかかか。」
翠、
「はい…???」
「だから…。なんだか…懐かしくって…。ゆずの事…。」
チラリと薫郎を見る翠。
薫郎、下を向いて、
「ふ~~ん。」
左手を、首の後ろに当てながら、
「俺にとって…。みどは…、絶対に、欠かせない人…。」
翠、
「ユッキ…。」
「そして…。」
ひと呼吸おいて、
「ん~~…。…ごめんな…みど…。」
「…ん…???」
「俺…。なんつぅか…。あいつ…、ゆず…???」
翠、優しそうな顔して、
「うん。」
薫郎、
「な~~んかさっ。…つまりは…。…ほっとけないっつぅか…。なんか…。俺の気持ちの中から、離したく…ない。」
その最後の薫郎の声が、翠の頭の中で響いた。
そして、じんわりと目が潤んで。
そんな翠の顔を見ていたのか、見ていなかったのか、キョロキョロと俯きながらの薫郎。
翠、いきなり、
「へへ…。」
ようやく翠の顔を見て薫郎、
「みど…。」
翠、頬から涙を伝わらせて、
「よっこいしょ。」
今度は立ち上がり、
「はいはい。はいはい。」
そして今度は薫郎を抱きしめて。
「ん~~~。ユッキ~~。」
そしてまた、薫郎の唇に自分の唇を重ねる。
翠、唇を離して、
「好きだよ、ユッキ。」
そして、また唇を重ねて。
薫郎は、翠の成すままに…。
万美、翠からの電話で、
「え――――――――っ!!!」
翠、スマホを耳に、
「うん。…そうなっちゃった…。」
万美、
「いや…。いやいやいやいや。え…えぇぇぇ。え~~~~。」
翠、
「なによ、そのリアクショ~~ン。」
「いやいやいや。いや…、だって…、だってよ…、みど…。だ…って…。」
そして、今度はオデコに右手を当てて、
「えっ…???ちょっ…ちょっと…待って。」
そして今度は立ち上がって、右手にスマホを、そして左手は腰に。
「ユ…ユッキも…、ゆず…。それって…、好きだって…。こと~~???わっちゃ~~。」
翠、
「そ…う…、なるか…。…うん。」
万美、
「いや…。いやいやいや。んじゃ、んじゃさ…。」
ひと呼吸置いて万美、
「…どう~~なっちゃうのよ、これから~~???」




