翠と橙(みどりとゆず) vol.195 巽、「うん。頑張ります。目標は…、3週間。」
ルッポラのスタッフも、珂帆からの連絡を受けて、それぞれがガッツポーズ。
柴乃、
「ふふ。これでまた…みんな…、モチベーション上がるね~~。ねっ、店長~。」
珂帆、
「うん。まっ、退院は決まったとしても、まだまだ仕事復帰には…時間…掛かっちゃうけど…。」
実際、巽が今まで治療を受けていた聖露奈理亜医科大学の、
漆原脳卒中センターを退院してからは、
その最寄りの脳梗塞回復期リハビリテーションセンターに転院して、
専門にリハビリを受ける事になった。
脳卒中センターでの巽の退院日には知美、そして達樹、
それから親族の数人が駆けつけていた。
その中で丁度勤務の休みと重なったために病院に訪れた珂帆。
「退院、おめでとう。巽君。」
巽、
「ありがとうございます店長。」
知美、
「本当に、本条さんにも、みなさんにも、何度も見舞いして頂いて、感謝します。」
達樹、
「御蔭様で、退院する事が出来、妻同様、感謝します。」
「これから…、リハビリ…???」
珂帆。
知美、
「えぇ…、先生から紹介して頂いて、巽。」
巽、
「うん。頑張ります。目標は…、3週間。」
珂帆、
「へぇ~~。」
美南、
「うんうん。今までだって、凄かったんだから、遊馬君、その意気、頑張れ、頑張れ、応援してくれる人も、いっぱいいるようだし。」
「はい。ありがとうございます。」
そしてそんな巽の宣言通りに、脳梗塞回復期リハビリテーションセンターを3週間。
この頃には一般の人と、さほど変わらない動きが出来るようになるまで回復。
リハビリテーションセンターを後にするときに、職員の人から、
「みんな、遊馬君のようだったら…、嬉しいんですけど…。なかなか…どうして…。」
そんな職員の話に苦笑する知美。
そんな母親を見て巽、
「かかか。」
そして、待機させていたタクシーに乗り込み、
「そうやって、いつまでも、俺の事、心配してくれんのは…ありがたいけど…。そろそろ…子離れ…しても…良くない…???」
巽。
そんな巽を見て知美、
「な~~に言ってんの~~。8年よ、8年。久しぶりに、自分の子の事、面倒見たって、バチ、当たらないと思うんだけど~~。」
タクシーの中から職員たちにお辞儀をしながら…。
タクシーは走り始める。
確かに、巽が脳梗塞で入院した時点で、知美は生活の半分は巽に充てていたことになる。
「どうでもいいんだけど、親ってね、いつまでも自分の子供って、心配なんだよ。」
巽、唇を内側に絞って、
「ふぅ~~ん。」
「それなのに、家には帰らずにアパートで今まで通りになんて。な~に考えてんのよ、この子は~~。」
「いやいやいや。家に帰ったら、余計…気ぃ遣うでしょ。」
その巽の声に知美、
「な~~に言ってんのぉ~~。思いっきり甘えなさいよ~~。こういう時くらいは~~。」
「ん~~。そういうのって…、ないかな~~。まっ、もう…今じゃ、必要…最小限の事…、出来ると…思うし…。」
そう言いながら、体をあちらこちら動かして…。
「なっ。」
そんな巽を見て知美、思わず、
「ふっ。」
そして、薄っすらと目を潤めて。
「しっかしまぁ…。ほんとに…回復力の早い…。はは。へぇ~~。」
左人差し指を顔に近づける知美。
巽、
「…ん…???かあさん…???」
知美、
「…ん…???」
鼻詰まりの声、
「な~~んでもないよ。バカな子だよ。」
巽、
「かぁ…さん…。」
自分の肩までしかない母親の顔。そんな母親の右肩に右手を回して、
「ありがと。」
そして、
「…ん…???かあさん…、ちょっと…痩せた…???」
知美、
「あんたが脳梗塞で、なんでかあさん…太れんのよ!!!」
巽を睨みながら、ぶすっとして。
巽、右手を戻し腕組みをして、変顔で、
「…ですよね~~。ははは。」




