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翠と橙(みどりとゆず) vol.186 橙、小さく、ポツリと、「ユッキと…いたい。」

橙、カウンターの上で、小さく、ポツリと、

「ユッキと…いたい。」


その瞬間、橙の右にいた飛香。そして左にいた尋音、

「えっ!!!」


尋音の隣の万美、

「…ん…???」


尋音、

「ゆず…。今…何か…言った…???」


橙の隣で飛香、

「ユッキと…いたいって…。」


その途端、尋音、万美、

「え――――――――っ!!!」


その尋音と万美の声に、テーブルを拭いていた絃、

「へっ!!!」


翠も厨房で洗いものをしながら、

「はい…???」


尋音、

「ゆず。あんた、まさか…、ユッキ……。」


橙、唇を尖らせて、紡ぐように、

「……。」


翠、カウンターの方に近づいて、

「何々、どうした…???ん…???ん…???」


尋音、隣の橙の顔を覗くように、

「ゆず…、ユッキといたいって…。それ…。」


雅樂、俯いた橙の顔を見て、

「……。」


翠、

「……。ゆず…。」


尋音、続ける。

「ゆず…。それって…つまりは……。ユッキの事…、好きだって…???」


その瞬間、一同、顔を見合わせて、

「……。」


飛香、

「ゆず…ちゃん…。」


数秒後、いきなり雅樂、

「けけけけけ。えへ~~。かかかか。いやいや。いいねぇ~~。羨ましいじゃねぇか…。え~~。ユッキ、モテるね~~。」


途端に万美、

「ちょっ。ちょっと雅樂じぃ。からかわない~~。ゆずには、列記とした遊馬、巽君と言う彼氏…いるんだから。」


そんな万美の声に雅樂、キョトンとした顔で、口を尖らせて、

「おぅ、おぅ、ほわ~~い。」


万美、

「ゆず、遊馬君と…なんか…あった…???」


その万美の声に、一同、橙の顔を見て…。

橙、俯いたままの状態で、顔を右左に…。


飛香、

「ゆず…ちゃん。」


翠、

「ゆず、とにかく…、遊馬君と何があった。言ってごらん。」


尋音、

「でも…ゆず…。ユッキは、列記と今、みどと一緒に生活…してんのよ。…それに、今のゆずの気持ち、ユッキは…???」


小さな声で橙、

「分かってる。分かってる…。けど…。」


数秒の沈黙。


そして、

「…でも、巽、前の巽と、違ってきた。」


その声に尋音、万美、

「えっ…???」


翠、

「……。」


そんな4人を傍で観るように絃、

「……。」


尋音、万美と翠を見ながら、

「今までの遊馬君と…違うって…。」

そして尋音、

「みど…。」


そんな尋音の声に翠、いきなり手を振り、

「いやいやいや。私にそれ…訊かれても…。」


橙、

「巽…、脳梗塞になった頃かな…。」


尋音、万美、

「えっ…???」


「前…みたいな…笑顔…、見れなくなった。」


尋音、万美、

「……。」


万美、

「いやいやいや。いや…、それは…ほら、遊馬君、病気だよ。病気と闘ってるんだよ。それなのに…そんな…笑顔…。普通じゃ…ないんだよ。」


その時、翠、いきなりドキン。

頭の中で、

「…ユウマ…。」


そういえば、確かに…。10年ぶりに再会した翠と巽。

けれども、それからは巽の表情は、翠の事を思い出し、

それからというもの、翠には笑顔が絶えなくなっていた。

それは、例え病室の中であったとしても…。


そんな記憶を辿っての翠、頭の中で、

「ユウマ…。」


「みど…???みど…???」

万美。


名前を呼ばれて翠、

「へっ…???」


「どしたの…???何か…???」


翠、

「あっ。ははは。いや…。」

ほくそ笑みながら。


尋音、

「ふ~~~ん。どうしたものやら…。」


雅樂、

「ほぃ、ゆずちゃん、上がったよ。5本、盛り合わせ。」


橙、そのお皿を受け取って、小さな声で、

「ありがとうございます。」






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