翠と橙(みどりとゆず) vol.181 「みど…掃除、洗濯は私以上に完璧なのに、なんで…料理…???」
そんなこんなで、早送りのように時間は10時過ぎ。
「良しっと。」
翠。
絃、
「なんで、みど。掃除、洗濯は私以上に完璧なのに、なんで…料理…???」
その絃の声に翠、頭を傾げて…、
「いや…???いやいやいや…、分かんない。…なんでだろ…。子供の頃、かあさんと一緒に、あれこれと…作った記憶は…あるんだよね。しかも…。雅樂じぃの血筋かな…。とうさんがかあさんより、料理はめっぽう上手…。」
絃、
「うんうん。えっ…???」
そんな絃に翠、
「ふん。とうさんのおとうさん、つまりはおじいちゃんが料理人。そのおじいちゃんの離れた弟が~~。雅樂じぃなの。」
絃、
「へぇ~~。」
「まっ。宗像家って、昔は福島で、旅館してたって…。そこから…暖簾分けしてもらって、千葉にお店を出して。かなり…評判だったって…話。」
「ふ~~ん。…で、そのお店って…まだ千葉に…???」
「ううん…、もうない。」
「へっ…???」
「火事で全焼。…っても、そもそも…延焼で…。夜中の2時…。」
「う~~っわ。」
「…で、その時に、そのお店で、住み込みだった、私のおじいちゃん、ひとりだけ。逃げそびれて…。」
翠、両手の平を自分のお腹の前で…。
「あっちゃ~~。」
絃。
「当然、雅樂じぃだって、行くとこ、なくなっちゃって、あっち行ったり、こっち行ったり。でも、どこ行っても、駄目だったんだって。とうさんにいつも言ってたらしい。…ったく、長くいようとは…思えないとこ、ばっかりでぃ。あれで、人に出してんのかぃ。…って。」
その話に絃、
「かかかか。なんと…雅樂じぃらしい…。」
「でも、さすがに雅樂じぃ…、腕…見込まれて、何とかあちこちで、稼いだらしい。」
「ふ~~ん。…あっ、それで…、ここ…???」
「そっ。結局は、自分に納得できる料理、したいって。ひとりでも何とか熟せる店。しかも、みんなに好かれそうなお店。」
「焼き鳥屋。」
「ねぇ~~。」
掃除の後片づけをして。
「私のとうさん…。おじいちゃんが料理人なんだけど…。その後…継げなんて言わなかったらしい。」
翠。
「えっ…???どうして…???」
「ふん。まっ、とうさんより、他の料理人の方が、腕…良かったみたい。」
絃、その話を聞いて、
「え――――――――っ!!!」
「ふん。料理…なめてんじゃねぇぞ…。」
腕組みしながら翠、
「てめぇの倅も何も、関係ねぇ。味で勝負しろ。」
絃、
「か~~っこいぃ~~。」
そして翠、右手の平を裏返しにして、
「で…。しかも、その頃、お店に通っていた~ひとりの女性のお客さんに滅茶惚れ…しちゃって~~。」
「えっ…???えぇぇぇぇぇ。」
「遂には~~~。」
絃、
「ま、まさか…、駆け落ち…なんて…。」
目をパチクリさせて…。
ふたりで着替えをしながら…。
翠、右手を目の前に立てて、振って、
「違う、違う、違う。…その女性の家に行って。」
両手を綺麗に前で振るように、
「お嬢さんと結婚させてください。」
絃、
「わ~~お。」
ふたり、階段を下りながら。
雅樂、荷物を持ちながら、
「おぅ、おはよ。ユッキのとこかぃ。」
翠、絃、
「うん。行ってきま~~す。」
「おぅ、よろしくな。」
「うん。」
「結局、それが切っ掛けで、とうさん、料理人、諦めちゃった。」
翠。
絃、
「えっ???なんで、なんで…???」
そんなふたりの声が聞こえたのか雅樂、ふたりに振り向いて、
「ん~~???」




