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翠と橙(みどりとゆず) vol.167 橙、自然に頭をコクリと…前に、「参った~~。」

橙、そんな巽と母親の話を、少し、ドキドキしながら…。


知美、

「なんだか…気の毒になって、病室…お見舞いに行ってきた。」


巽、

「……。」


「寿美香さん…。かあさんに、あの時は本当にごめんなさいって…。あれからウチは、ガラリと変わってしまったって…。」



添田とは、かつて、巽が将来を約束した女性の事である。

名前を添田奈美(そえだなみ)。その父親が添田健斗(そえだけんと)。

現在、その添田奈美は、2度の離婚を経験し、3度目の結婚。子供はそれぞれ3人。

けれども現在の夫が他所に女性を作り、浮気をしている様子。

しかも、内情としては、DVまがいでもあるという話。


仕事はしているのだが、数多くの負債を抱えている。

娘の事があまりに可愛く育て過ぎ、好き放題の事をやらせてきた父親の健斗。

その父親を奈美も頼りまくり、心配事は母親よりも父親。

その挙句、父親は娘たち夫婦には妻の言う事も聞かずに甘やかせて、

添田家も奈美の夫のせいで負債を抱え込む結果に。

疲れ果てた健斗が、その過労で遂に倒れたという事である。


淡々と話して聞かせる知美。


「いい加減にしてくれ。」

と、巽。


それでも、口から次々に出る言葉に、

「かあさん。木葉さん。いるんだけど…。」


橙、巽の母親の話に、何も言葉を出すことも出来ず…。

ようやくの巽の声で、

「あ…、あの…。私…、失礼…します。お邪魔しました。」


そんな女性に、知美、笑顔で、

「あら…、ごめんなさい。つい私…。あっ。もう…面会時間も…。お気を付けて。おやすみなさい。」


橙、慌てて、

「お邪魔しました。失礼します。」

ドアに向かい、静かにドアを閉める橙。

背中の後ろで閉まったドアノブを握りながら、

「ふぅ……。」

そして、自然に頭をコクリと…前に、

「参った~~。」

見る見るうちに瞳を濡らす涙。そして、ゆっくりと歩き出しながら、

「わたし…。無理だよ…。巽~~~。わたし…、無理だよ。」



病室では、まだ口から添田家の事が絶えない知美。


巽、

「かあさん!!!」


けれども、そんな知美でも、しっかりと、涙目で、

「でもさ、言わせてくれてもいいんじゃない。母さんや父さんだって、どのくらい、頭に来たか、あの時。あんたを馬鹿にした人たちだよ。手の裏返すように。」



奈美の体に子供が出来た時点で、巽との事はなかったことにしてくれと、

一方的に破綻を告げてきた添田家であった。



「どんだけ、悔しかったか。そりゃ、奈美さんの結婚した人は、代議士の息子さんだよ。しっかりと出来ちゃった婚。けどさ。人の幸せって、そんなもん…???冗談じゃないよ。結局、夫婦喧嘩が絶えず、生まれた子供だって、認知すりゃされなかった。」

怒りが収まらない知美。


巽も最初は怒ってはいたが、次第に、苦笑いをして、

「かあ…さん…。やれやれ…。」


「しかも…、あんたが…今…、こんな…。脳梗塞…だなんて…。かあさん…。」

今度は鼻をハンカチで押さえながら…。

「あんたには…しあわせになって…もらい…。」


「わ~~かった、わ~~かった…。」


数秒の沈黙。鼻からハンカチを外して、

「巽っ!!!あんた、あの木葉さん、好きなのかい。」


巽、いきなりの母親の声に、

「えっ…???」





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