翠と橙(みどりとゆず) vol.126 会社のドアの前。少し躊躇するように翠。
会社のドアの前。少し躊躇するように翠。
そんな翠の背中を薫郎。
…が、その手が背中に触れる前に、前に進む翠。
薫郎、少し顔を緩めて、
「ふ~~ん。」
翠、既に出社しているスタッフに、
「おはよ~~。」
スタッフたち、
「おはようございます。」
当然ながら、椅子をスライドさせて万美、
「おかえり~~。」
翠、
「ただいま~~。」
「…って、何々、全然連絡ないし、ライン送っても、既読にならないし~~。どいう事~~???」
翠、かなり真剣な表情で…、
「ごめん…。万…。後で話す。」
万美、そんな翠に、
「あっ…、はい…???へっ…???」
そして、そのままフロアの奥の呉羽の下に。机の前で翠、
「おはようございます。矢萩リーダー。」
呉羽、机の書類に目を通していたところ、翠の顔を見て、
そのまま椅子から立ち上がった。そして、ゆっくりと翠に近づき、
そのまま翠を抱きしめる。
「お疲れ。お帰り。とにかく頑張った。うん。怖かったでしょう~~。」
その言葉が、翠の今までの心持を一気に溶かしてくれた。
そして、一気に涙が流れて、
「コバ…ちゃん…。」
その光景を見ていたスタッフ一同、「!!!!!」
「へっ…!!!」
「えっ…???」
「何…???」
「みど…???」
「どうしちゃった…???」
「まさか…挨拶…失敗…???」
万美、
「みどっ!!!」
ドアを開けて出社してきた尋音、橙、
「えっ…???」
「はれ…???」
呉羽、翠を抱きしめながら、
「うんうん。ユッキから、話は聞いてる。分かってる。分かってる。うん。」
涙を流しながら翠、何度も頷く。
尋音、万美に、
「ねね、みど…どうなってる…???」
そんな万美も…両手を上げて首を振る。
「サッパリ。」
呉羽、翠の両肩を両手で、
「みど。大丈夫…???しっかりして。」
そんな呉羽の声に、翠、ゆっくりと、静かに深呼吸して。
震える体で、
「はい。…大丈夫です。だから、ここに来たんだもん。」
「うん。」
そして呉羽、周囲を見回して、
「みんな…、もう揃ってる~~???」
そんな呉羽の声に、あちらこちらから、
「あ~~。はい。」
「じゃ、ちょっと早いけど…、ミーティング、始めるよ~~。」
スタッフ一同、
「はい。」
そして、呉羽の下に。
翠の肩を抱くように万美。
「みど、どうした~~???」
呉羽、
「ウチの新規取引先になった名古屋の総合デパート、ロンド。昨日、チーフの逢坂翠から、その担当になってもらって、挨拶に行ってもらった。」
スタッフ全員頷く。
「そして、ロンドからも歓迎されたらしいの。だから、これからますますロンドの仕事、増えてくると思う。」
スタッフの誰か、
「えっ…???じゃあ、みど…の…。どうしちゃったの…???」
呉羽、続ける。
「ただ…。その帰り…。ある出来事が起きた。」
その声にスタッフたち、
「ある…出来事…???」
「出来事って…???」
「何…???」
「何々…???」
「出来事は…東京駅で…。」
呉羽、両手を動かしながら…。
万美、
「東京駅で…???」
呉羽、翠の顔に視線を…。
翠、コクリと…。
「実は…、あまりにも、偶然なんだけど…。名古屋への往復の中で、逢坂翠と内容は別なんだけど、行動を共に出来た人物がいたの。」
スタッフたち、
「行動を共に出来た…人…???」
「誰よ一体…???」
「何…その偶然って…???」
「誰々…???」




