翠と橙(みどりとゆず) vol.125 翠、「あっ。ユッキ。」
珂帆の前を、建物を眺めながら歩いてくるひとりの男性。
珂帆とすれ違い…。
翠、
「あっ。ユッキ。」
建物を見ながら、そしてひとりの女性に気が付く、
「みど。」
翠、
「来てくれたんだ~~。」
薫郎、
「ふん。遊馬君…???」
「うん。今、お母さんや、親族の…人かな…、病室…。」
「そっか…。」
翠、薫郎の左腕に絡みつき、薫郎の左肩に自分の額を右左に擦りつける。
そして、鼻水を啜り、
「怖かった~~~。」
がっちりと薫郎の左腕を右腕で締め付けるように…。
薫郎、
「帰ろ。」
翠、コクリと首だけ…。
カウンターからメニューをトレイに、絃、
「みどさん、まだ出張から…???」
雅樂に。
雅樂、
「あぁ…。来ねぃよな…。」
頭を傾げて…。
店の前…。
翠、
「もう…並んで…ないよね。」
薫郎、
「あぁ…。でも…店の中…。」
「うん。」
裏口から入って。
薫郎、翠に、
「まっすぐ部屋…行ってな。」
翠、
「うん。ごめん。」
薫郎、店の方に、雅樂に右手を挙げて、「今、帰った。」のゼスチャー。
雅樂、首を2、3度小刻みに…。
数秒後、絃に、
「ふたり…けえったよ。今。」
絃、
「へっ、ほんと…。えっ…、でも…。どうして…???」
翠、力なしげに、ようやくパジャマに着替えて、
「ユッキ…。私…、寝る…。」
薫郎、
「あぁ…。おやすみ。」
それから10分程経って…。
薫郎のスマホに、
「一体、どうなってる。みどから連絡来ないけど…。」
呉羽からである。
翠のスマホは電源が切れたまま…。
薫郎、
「コバちゃん、ごめん。さっき、みどと俺、部屋…着いて…。もうみど…、寝てる。」
そして、深呼吸して、
「かな~~り、深刻な状態。」
その声に呉羽、
「はい…???どういうこと…???」
そして薫郎、
「実は……。」
片やこちらでは…、
「おっかしぃな~~。部屋に帰ってきてもいないし…。ラインも既読にならないし…。電話も電波…???…どういう事…???…これだったら、店にも電話…できないし…。」
橙である。夕方から何度も巽に電話、そしてラインのメールをしていた。
けれども既に巽のスマホは…。
その2時間前、ルッポラで…。
珂帆の帰りを待っていたスタッフたち。
柴乃、
「店長…。」
そして、閉店後…、巽の事実を聞くことになる。驚愕のスタッフたち…。
翌朝、薫郎、
「みど、大丈夫か…???」
翠、
「…うん。何とか…。休むわけに、いかないもん。それに、昨日の今日。コバちゃんに何も連絡入れてないし。…怒ってるよ~~きっと。」
その声に薫郎、
「それ…なんだ…けど…。」
「ふん…???」
「ゆうべ、コバちゃんから、電話…あった。みど寝てから…。」
「へっ…???」
「さすがに、凄い剣幕で…。…で、昨日の事、俺から、話…、しておいた。」
翠、
「あっ。あ~~~。」
髪を掻き上げて…。
薫郎、
「いや…。仕方ないよ、事が事だけに…。」
言い訳になるような感じで薫郎。
けれども翠、
「あああああ。ううん、ユッキ。…そうじゃなくって…。」
薫郎、
「へっ…???」
翠、首をコクリと、
「ありがと。」
薫郎、口を尖らせて。
翠、
「それだけでも、救われるよ、私…。うん。」
薫郎、
「あ…。あ、うん。」
そして…、
「久しぶりに…一緒に…出るか…???」
翠、
「ん~~。ふふ。…そうして…くれると…助かる。」
「おぅ。」




