翠と橙(みどりとゆず) vol.113 「…って言うか、焼き鳥…食べて行かなかったの…???」
「だから…、絃が起こしてくれたんだ。」
思い出して翠。
「お店の人に…、女の人に…。」
巽。
翠、
「ありがとうございました。」
お腹の前に両手を据えて、丁寧にお辞儀。
「…って言うか、焼き鳥…食べて行かなかったの…???」
その翠の声に巽、
「食べれる訳ないでしょ。なんで、玄関にみどを…???…なんて聞かれちゃ、ちょっと…。説明…しにくいよ。そんないきなり。」
その巽の声に、少し照れたように翠、
「まっ、かかかか…。そう…なるか…。」
「…けど、良い匂い、させてたね~。お店の中…。」
「へへ。でしょう~~。」
「うん。結構…お客さんも…入ってたし。」
「お~~。さすが…見るところは…見てますね~~。」
「いやいやいやいや。…お陰…様で…。」
「…で…???今日、名古屋って、ユウマ…???」
「あ~~、うん。接遇のセミナーでね。」
「接遇…。」
「ふん。ほら、仕事柄、相手はお客様。接待業でしょ。」
翠、
「あ~~うん。な~るほど…。」
「…っと…。どこでだっけ…???」
バッグからクリアファイルを出して…。
「名古屋…マリオネット、アソシエホテル…。」
翠、
「ふ~~ん。」
巽、
「駅のすぐそば…。」
「ふ~~ん。駅の…すぐ…そば…。ふんふん。…。ふん…???」
巽…、
「ふん…???どしたの…???」
翠、
「ちょ…、ちょっ…それ…見せて。」
巽、
「うん。」
翠に接遇セミナーの案内の書面が入ったクリアファイルを渡して…。
翠、
「愛知県…名古屋市…**区、*駅…1-1-4…。」
そこまで、開催場所の住所を見て、読んで、
「えっ…???1-1-4…???ここって…。ねぇ、ユウマ…。ここって確か、名古屋駅の駅ビル、セントラルタワーズだよね…???」
その声に巽、
「うん。店長から駅ビルの中にあるホテルだからって…言われてる。だから、敢えて調べてないけど…。セミナーは、そのホテルのレストランで…なんだ。」
翠、
「おっとっと~~。え~え~え~。」
今度は自分のバッグから一枚の書面を出して。
薫郎から渡されたロンドの企画開発室長の寺崎、そして主任の草島の名刺のコピーを見て、
「え~~~。同じ…住所。」
その声に巽、
「えっ!!!」
翠、すかさずスマホの電源を入れて、
「すんごい偶然…。ユウマ…、ほら。ユウマの行くとこ、そして私の行くとこ…、同じ住所。」
そしてスマホで検索すると…。
「わお。ほらほら。ここが私の行く、ロンド。そしてここがユウマの行くマリオネット、アソシエホテル。」
翠のスマホの画面を見て巽、
「え~~~。おんなじ場所じゃん。」
翠、笑顔で、
「うんうん。そうそう。」
「かかかか。不思議なもんだよな~~。」
翠、
「ん~~~。ははは。」
そして、名古屋駅の構内を歩きながら…。
「へぇ~~。ここが…、ロンド…かぁ。ふ~~ん。素敵なとこ。うん。」
翠。
「うんうん。俺も初めて。凄ぇよ。ここ。」
巽。
「東京の場合は…、まぁ…、結構見慣れてるから…。…でも、違う場所だと…、また、スケール違うよね~~。」
歩きながら翠。
店内に入って、必然的にふたり歩きながら…。
そして、エレベーターで、次のフロア、次のフロアへと…。
翠、そして巽、ふたり共に、目を見合わせて、
「いいじゃん、いいじゃん。ねぇ~~。」
そして、ふたり同時に、
「かかかかかか。」




