翠と橙(みどりとゆず) vol.112 「こないだ、ありがと。私…眠ってて…。」
巽、
「ふ~~ん。名古屋のロンドに…。うん。ゆずから聞いてる。そっか。…んで…、ゆずが、仙台のフレバー担当に…。」
翠、
「うん。ゆず、大出世だよ。まだ、入社して浅いのに…。」
「うん。勉強しているみたい…。」
「あっ、ユウマ…。」
「うん…???」
「こないだ、ありがと。私…眠ってて…。」
「…???…あぁ~~。」
「家まで…。」
少し赤くなって。
巽、
「ふん。無事に…送り届けさせて頂きました~~。」
翠、体を右に向いて、丁寧にお辞儀をして、
「ありがとう。」
巽、いきなり左手をひらひらとさせて、
「いやいやいや。」
そして、
「それにしても…。」
翠、
「ふん…???」
「みどって、凄いね…。」
「凄い…???」
「まさか…、あの状態で…、眠れる…とは…。」
その声に翠、思わず顔を赤くして、目の前で両手を合わせて、
「ほん~~と、ごめん。」
巽、
「かかかか。」
「私…、玄関で、店の子に起こされて、初めて家に着いたって分かったの。」
「うんうん、分かる分かる。タクシーの中でも全然起きなかったから。」
「へっ…???あそこから…タクシーで…???ごめ~~ん。ねね、幾らだった、タクシー代…???」
すぐにバッグから財布を…。
けれども、その手を制して巽、
「いいよ。」
翠、
「えっ…???…でも…???」
巽、
「いいって。」
「ユウマ…。」
「久しぶりに…みどだって、分かって、みどと話しできた。そして、みどの傍にいられた。」
「ユウマ…。」
「なんだか…、懐かしくってねぇ~~。」
「ユウマ…。」
「…だから、あんな気分に浸らせてくれて、ありがとう代。はははは。」
「ありがとう…代…???」
「うん。…そして、あのみどが、今、しっかりとバリバリに仕事してる、嬉しくってさ。」
「ユウマ…。」
「あ~~~。それと~~。」
翠、
「へっ…???」
「ご心配なく、よだれ…、垂れてなかったから…。」
その途端、目を細めて巽を睨みつける翠、そして肘掛に置いてある巽の左手をまたペン。
「今…、なんか…言った~~???」
巽、いきなり窓際に、
「いえいえいえいえ。別に…。」
翠、顔をツ~~ンと、左側に。
「はい。はいはいはい。俺が悪かった。はい。反省する。」
左肘掛けを両手で握って。
翠、体をのけ反らせ、左手の平に左頬を載せたように。
その時、体が少し、右に流れた意識…。
翠、
「あっ、動いた…。」
その途端、シートに落ち着き直して…。
「…という事は…。今日のウチへのデリバリー。ユウマがここにいるって事は…。…ん…???」
隣の巽に向いて翠。
「…多分…。蓼科君…、かな…???」
「蓼科君…???」
「…って事は、もしかして…みど…、まだ、見た事ないか…???」
「…う~~。うん。ない…かも…。…って言うか…。デリバリーで知っているのは…、ユウマか…。あの…、ウェイトレスの女性の人…???」
「あ~~。柴乃さん。一番のベテラン店員。」
その声に翠、
「へぇ~~。そうなんだ。ふんふん。」
「そういえば、焼き鳥雅楽、初めて入ったよ。」
「へっ…???」
「いや。だって、みどを玄関に…。…で、そのまま帰れる訳、ないじゃん。家の人に…、何かあったかって…思われちゃう。」
翠、
「あ~~。」




