翠と橙(みどりとゆず) vol.102 自分の体を抱きかかえられたまま翠。
自分の体を抱きかかえられたまま翠。
巽、自然に左手を放して、今度は翠の背中に。
巽、
「あっ。ごめん…。」
翠、自分の左胸に男性の手を感じて、少し赤くなり、
「あ…、ううん…。でも…。」
ぶつかった人物は男性。いきなり巽、走り去る後ろ姿に、
「おい!!!何やってんだ。ぶつかっておいて。」
けれども、その声を無視して横断歩道をまっすぐ走っていく男性。
翠、
「何が…???どう…???」
巽、
「分かんない。…でも…、大丈夫…???」
「うん。ありがと。…巽君、いなかったら、私…。」
「えっ…???あ…。いや…。」
そして、ようやく抱きかかえている翠を、
「あっ。ごめん。」
ようやく離れる体。
翠、
「ごめん。私の方こそ。」
赤い顔のまま。
頭を掻きながら。
「と、とにかく…、行こうか、僕も…お腹空いた。」
巽。
翠、頭をコクリと。
そして、
「うんうん。なんか…素敵な感じのお店。」
翠。
「…の…、ようですね~~。」
巽。
「まさか…。」
「いえいえ。僕だって…初めてですよ。」
「だ~~よね~~。さっきも…その様子…。ふふ。」
店内を見廻しながら巽。
いきなり、
「ぷっ。」
翠、
「ふん…???」
「あっ、いや…。」
「ゆず…、仕事…頑張ってるよ。今回、ジェシカで新しい商品…出すんだけど…。」
「うん。」
そこにウェイトレス。
「いらっしゃいませ。」
「逢坂…さん……???」
翠、
「あっ、私…ビール。それから…。」
「…と、はい、メニュー。」
テーブルの端からメニューを取り出して巽。
「ありがと…。」
一度、メニューを見廻して…。
巽、
「取り合えず、ビール2つ。」
ウェイトレス、
「畏まりました。」
「何に…する…か…???」
翠。
何にするか、まだ決まらない翠に、
「ドリア…、なんていいかも。」
巽。
翠、
「ドリア…???」
「うん。ここ…、洋食屋さん。ちょっと…いい…???」
そんな巽に翠、
「ふん。どうぞ。」
にっこりと。
メニューを見ながら巽、
「ん~~。これなんか…食べてみる…???」
翠にメニューを返しながら、指差して、
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア。」
翠、
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア…???…あぁ~~。うんうん。いいかも…。これ…。うん。」
巽、
「じゃ。」
頭を上げてカウンターを。
ウェイトレスが気づき、近寄ってくる。
「グリルチキンのピリ辛トマトソースドリア…2つ。」
ウェイトレス、
「ありがとうございます。畏まりました。」
離れるウェイター。
翠、
「さすが、遊馬君。」
そして、
「…で…???さっきの…???」
巽、
「へっ…???」
「なにか…おかしい事…???」
「あ~~。いや…。ゆずと…初めて出会った事…思い出したんだ。」
翠、グラスの水を、
「うん。」
「東大の入試、受験日ね。」
「うん。」
「時間ギリギリで通りを駆けてたんだって。その時、風がゆずの顔を直撃して。その時、目の中にゴミみたいなのが入って、その瞬間、すれ違う人とぶつかって、肩に掛けていたバッグが肩から外れて地面に落ちた。その時、バッグの中のものまで地面に。」
「あらら。」
「男性からは気を付けろって。」
「ひど~~い。ゆずが悪んじゃないのに。」
翠。
巽、笑顔で、
「ねぇ~~。」
巽もグラスの水を。
「そして…、ここからが…。」




