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06 魔族八王と禁断の力

明日からは1話ずつ投稿する予定です<(_ _)>

 世界連合軍は、半年ぶりに魔族領と隣接するギルブット共和国のパーツム領に再集結し、再び魔族との戦火を交えるべく進軍を開始した。


 今回の戦争では、大国ランドルフ皇国の皇太子・アイオスが全軍の指揮を執ることとなり、多くの兵が集結し、史上最大規模の軍勢が編成された。そして、先の大戦において最大の功績を挙げた大聖女セーラが、アイオス率いる最前線部隊に配属されると判明すると、「この戦いで魔族に決定的な一撃を加えるつもりだ」との噂が、瞬く間に世界中へと広がった。


 最前線の部隊を率いて進軍を続けるアイオスは、予想を超える大規模な戦いになったことに苦笑しながら、隣を進むセーラへと視線を向けた。しかし、彼女は完全に無視し、兵に馬の手綱を引かれながら、黙然と魔族たちが待ち構える平原を見据えている。


「おい、大聖女セーラ、お前も緊張しているのか?」

「………………」


 アイオスの声に、セーラは一切反応せず、ただ魔族たちの軍勢を見据えたまま、突如両手を掲げ、静かに魔法を発動した。


「聖剣神槍光弓の一撃 (アルマゲドン)」


 セーラが天に祈りを捧げると、裁きの鉄槌を求める声に応じるかのように、天空から数多の英霊たちが降臨し、魔族の軍勢へと一斉に襲いかかった。


 光の勇者は伝説の聖剣を横薙ぎに振るい、多くの魔族を両断する。神槍を構えた英雄王は一突きで目の前の魔族の軍勢を吹き飛ばし、光弓を掲げた戦乙女は、天より光の矢の雨を降らせて魔物たちを串刺しにしていく。


 歴史に名を刻んだ数多の勇者と英雄たちが次々と現れ、瞬く間に魔族の軍勢を壊滅させた。セーラはそれを満足げに見届けると、油断なく平原の遥か後方へと鋭い視線を向ける。その様子を呆然と見ていたアイオスはようやく我に返り、許可なく先制攻撃を放ったセーラを問い詰める。


「おい、セーラ、お前は何をやっているんだ。俺の号令を待たず、いきなり先制の一撃を放つとはどういう事だ。しかも、今の魔法で敵は全滅してしまったぞ」 

「……いいえ、さっきの魔族たちは先鋒に過ぎません。ほら、遥か後方から本陣が向かってきてます」


 セーラはアイオスの非難を受け流し、淡々とした口調で反論すると、死屍累々たる平野の遥か彼方を指差す。そして、その先には、漆黒のマントを纏った不死王ドラキュラが、不死身の軍団を率いて進軍を開始しようとしていた――。



 私が先の大戦をも超える超広範囲の聖魔法:聖母神の慈雨ホーリーレイン を発動し、癒しの雨を降らせると、不死王ドラキュラが率いるゾンビやグールたちは一掃され、味方の騎士たちには聖属性の加護が与えられた。その効果によって戦況は一気に逆転し、連合軍は魔族を押し返していく。


 騎士たちに余裕が生まれると、彼らは口々に「聖なる力で傷を癒し、魔族を退ける力を与えてくれた」と私に感謝を伝えてきた。だが、実際には 反魔族粒子アンチデビルマテリアル をばら撒いただけで、治癒効果などほとんどない。もちろん、わざわざ訂正するつもりもないので、私は笑顔で軽くお辞儀をして、そのままアイオス殿下がいる後方部隊へと下がることにした。


「大した人気者だな、魔女(・・)殿」

「何を言ってるんですか、『タキ○ード仮面』様」


 私はアイオス殿下の首に下がるロザリオを見つめながら、夢にまで見た『イケメン助っ人』を手に入れた喜びに、つい満面の笑みを浮かべてしまう。……すると、殿下は露骨に嫌そうな顔で私を睨んだので、慌てていつもの無表情に戻す。


 あのロザリオは、先の大戦で討ち取ったデスドラゴンの魔核を用い、私の万能魔法で作り上げた力作だ。魔力を込めれば、万能魔法が使えなくても変身が可能という、さしずめ『ドラ○もん』もびっくりの便利アイテムである。


 ……正直、あれほど上手くいくとは思っていなかった。だが、運よく魔王の一柱であるデスドラゴンの魔核を入手できたのは僥倖だった。その魔核は超高密度の魔力を含み、私の万能魔法との相性も抜群で、抵抗なく馴染み、複数の魔法を付与することができた。


 なぜ魔王の魔核と、聖女である私の魔法の相性が良かったのかは不明だ。……おそらく、魔力自体には善も悪もなく、純粋なエネルギーなのだろう。大学時代にマテリアル工学を専攻していた私の知識がもう少し残っていれば何か分かったかもしれないが、この世界の 管理者(かみ) は大きな変化を嫌ったらしく、チートになるほどの知識は残っていない。


 それでも、知識がなくとも記憶は残っている。だから私は、この世界の常識に縛られず、様々なことに挑戦することができた。夢だった『魔法少女』にだってなれたのだから、もうこれ以上望むのは罰当たりというものだろう。


「おい、セーラ。俺を『タキ○ード仮面』と呼ぶのはやめろ。意味はよく分からんが、どうにも嫌な予感がする」

「いやです、私がリスペクトするもう1つの魔法少女アニメに出てくる大好きなキャラなんで、それはできません」

「……いや、本当に何を言っているのか全然、分からんのだが……」


 殿下が混乱しているので、これ以上意味不明な言葉を出すのは控えるべきかと思ったけれど、それを無視して頭の中で渦巻いている別の問題について考える。


 ――このまま『プリ○ュア』姿でマックスなハートのまま突き進むべきか、それとも、せっかく手に入れた『イケメン助っ人』を活かして『セーラ○ーン』路線に変更し、白セーラー姿で「月に代わっておしおき」した方がいいのか……。


 そんな究極の選択に悩んでいたそのとき、前線から多くの悲鳴が上がる。視線を向けると、魔王の一柱である不死王ドラキュラが、大量のアンデッドを引き連れて突撃を仕掛けてきていた。



 最強のアンデッドであるドラキュラは、多くの眷属を率いて世界連合軍に特攻を仕掛け、騎士たちを蹂躙しては眷属に変え、仲間に引き入れていくと、やがて再び形勢は逆転し、連合軍は危機に陥った。


 セーラの魔法によって聖属性を付与された防具を身にまとっていた騎士たちでさえ、ドラキュラとその直属のデスナイトたちの猛攻には抗えず、次々と殺されては眷属として蘇り、かつての仲間に牙を剥き襲いかかる。


 せっかく懸命に削いできた魔族の戦力が、再び膨れ上がっていく光景を目の当たりにし、多くの騎士たちが司令官の命令を無視して次々と逃走を図る。アイオスのいる本陣を守るはずだった部隊も、あっという間に姿を消し、戦場の景色は一変する。


 戦場の見通しが良くなったのを確認したドラキュラは、アイオスがいる本陣を視認すると醜悪に笑い、眷属となった騎士たちに特攻を命じた。すでに命尽き、アンデッドと化してはいるものの、かつての仲間に刃を向けることに躊躇う騎士たちの姿を見て、アイオスは思わず溜息をつきかけたが、それを堪え、撤退を命じる。


 そして自らは殿を務めると告げ、セーラに命を預けてほしいと頭を下げたうえで、一緒に敵を足止めしてほしいと頼むと、セーラは無言で頷き、聖魔法を発動した。


「荘厳なる聖城 (セイクリッドキャッスル)」


 セーラが、ゆっくりと迫るアンデッドたちの侵攻を拒むように両手を前へ掲げると、巨大な光の城壁が出現し、アンデッドたちの行く手を阻んだ。そして、彼らがその壁に触れた瞬間、聖なる光に浄化され、静かに土へと還っていく。


 だが、ドラキュラ直属のデスナイトたちには、足止め程度にしかならなかった。彼らが光の壁に体当たりするたびにヒビが走り、やがて突破されるのは時間の問題だと誰もが悟る。その瞬間、アイオスが土魔法を発動し、背後に強固な岩壁を出現させた。



 俺は、もはやセーラの聖魔法でさえ、ドラキュラが率いる不死の軍勢を止めることはできないと判断し、逃げ出した騎士たちの視線からセーラを隠すため、土魔法を発動する。


「金剛の王城 (ダイヤモンドウォール)」


 デスナイトたちの体当たりによって、光の壁に次々とヒビが入っていくのを横目に、俺は背後へと手をかざした。すると、巨大な岩壁が現れ、俺たちを逃げていく騎士たちの視界から遮った。


「セーラ、騎士たちから見えないようにした。……悪いが、魔女の力でアイツらを倒してくれ」


 俺が、セーラが変身できるよう味方の視線を遮ったことを伝え、魔女の姿になって魔族を撃退してほしいと頭を下げると、セーラは深いため息をつき、半目で俺を睨んだ。そして、「今回も『プリ○ュア』でいきますか」と意味不明なことを呟くと、膨大な魔力が彼女のまわりに渦巻き、全身を覆い隠す。その魔力はやがて形を持ち始め、漆黒の衣へと変わり、セーラの身を包んでいった。


 そして、聖女の服とは異なり、やや露出の多い漆黒の衣装をまとったセーラは、いつもの無表情からは想像もつかないほど明るく笑うと、そのままデスナイトの群れに突っ込んでいった。

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よろしくお願いします<(_ _)>


あと、「呪術と魔法は脳筋に ~魔族から人間に戻りたいのに、なかなか戻れません~」や「転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~」という作品も投稿していますので、読んで頂けたら、なお嬉しいです。<(_ _)>


欲張りですいません!

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