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歌う工房  作者: リコヤ
17/20

運動大会-当日-1

 快晴だ。風もおだやかで運動日和である。

 開会式でついに、特別メニューがおひろめされた。高級肉のステーキに特製スープ、色あざやかなくだものなど、目にも豪華な品々がテンションをぐいぐいとあげる。

「皆さん、正々堂々、がんばりましょう! それではこれより、大運動会を開催します!」

 会長が小さくきらめくものを宙へ投げた。それは小さな破裂音とともに、色とりどりの星を校庭にふらせる。イベントのはじまりによく使われるアイテム(使い捨て型の魔道具)だ。

『ではでは! 司会進行・解説はわたくし、学生会二年バリテンが担当いたしますヨロシクー!』

 拡声器からテンションの高いアナウンスが流れてきた。きのうの副会長ではない。てか、このテンションのひとがふたりいるのか、学生会……

『まずは各クラス、席に戻ってください! コース設営と、そのあいだに第一レースの内容を説明しまーす!』

 観覧席は校庭の後方にある。うーん、なつかしい光景。


 ぞろぞろと移動するなか、先頭の会話が聞こえてきた。

「おいテッド、どうしたんだよ、顔色悪いぞ? 体調悪いのか?」

「いや……ちがうんだ。体調はいいよ、うん。ただ…………」

 テッドとは級長のことである。

 なんだなんだ? ゆるりとクラスメイトが彼を囲む。きのうの会議のおかげか、団結感がある。

 級長が顔をあげた。その表情は緊迫感に満ちていた。

「みんなに頼みたいことができたんだ…………きょうはなんとか、三位までに入賞したいッ……!」

「え、えぇ? なんだよいきなり? ホントどうした?」

 きのうは気楽にと言っていた彼が、ずいぶんな豹変である。

 級長は苦悩の表情で声をしぼりだすように、

「ぼくは! あのデザートが――ミスケーレが食べたいッ!」

「は!?」

 クラスメイト全員が虚を突かれた。ぽかんとする我々に、彼は訴えかけてきた。

「一度だけ食べたことがあるんだ。ほんの少しだったけれど、それはもう、それはもうすばらしくおいしかった! シャクシャクとした歯ごたえ、なのにとろけるような舌ざわり……そして、わずかに甘さが上まわる絶妙な甘酸っぱさ! あの食感と味は今でも忘れない。もう一度あれを食べられたらってずっと思ってたんだ……!」

 熱弁である。


「級長――テッド。俺も食べたことがある」

 なんと、こういうノリには興味なさそうなバルフォアが進みでてきた。そして淡々と、

「うまかった」

 力強いまなざしで言いきった。

「あの、わたしも食べたこと、あるわ……!」

 口数が少なくておとなしいユスティーナ・カルミまで参戦した。

「至高だよね……!」

 級長のひとことに、こくりこくりと強いうなずきを返す二人。うーむ。めちゃくちゃ気になる。

「ねぇ、ミスケーレ……ってはじめて聞いたんだけど、どんなものなの?」

 アイナの質問に、怒涛のいきおいで級長が答える。

「もとは植物系の魔物の実なんだ。それを接ぎ木とか品種改良して、栽培できるようにしたんだ。成功したのが七、八年前で、まだしっかりした栽培方法は確立されていなくてね、だから栽培がすごくむずかしくて、貴重なんだよ。ぼくはこれを育てるのが夢なんだ……!」

 情熱をこめて語る彼の目はキラキラと輝いていた。

 元魔物のくだものか! そりゃ気になるな。


『おーい、錬金術科一年生! どうかしたかー?』

「えっ、あ、なんでもないです! ごめんみんな、席について!」

 我にかえった級長の号令にしたがい、急いで着席する。けっこう話しこんでいたようだ。

『それでは第一レースの説明をしましょう! よく聞いて出場順を決めてください!』

 まずクイズでスタート、それからペアでの荷運び競争に、二人三脚と続く。第一チームは出場順を話しあい、会場へと歩きだした。

 と、チェロがふりかえった。

「ねぇテッド! あたしもミスケーレっての食べてみたいから、がんばるわね!」

 彼女は気合い十分なようすでこぶしを握ってみせる。となりにならんでいるユスティーナも、こくこくとうなずいている。

「え――あ、うん、よろしく!」

 級長はあわてつつ、でもうれしそうにうなずき返した。そんな彼に、アイナが声をかける。

「テッド、あたしも気合いいれて行くからね! ミスケーレ、すっごく興味でてきた!」

「わたしもな。あんな熱弁聞かされたら気になるよ」

 ほかのクラスメイトたちからも、同様の声が届く。

「エイミスさん、アンネールさん、みんな……ありがとう……!」


 第一レースがはじまった。クイズの回答順は中間くらい、荷運び競争ではさほど変わらなかったが(それでも二つはあがった)、最後の二人三脚で猛烈な追いあげをみせた。出場者のチェロとユスティーナの息の合いっぷりがすごい。あの二人、仲いいからなぁ。

 そして結果は、

『一位、文武科三年二組! 二位、同じく三年一組! 三位、文武科二年一組! 四位には錬金術科一年、五位は文武科一年一組だー! 今年は一年が活躍をみせるのか、期待の幕開けとなりました!』

「すごいすごい、四位だって!」

 アイナがキャーッとはしゃぐ。彼女だけではない。とくに運動を苦手としているメンバーが出した結果だけに、クラスが一気にもりあがった。

 第一チームは盛大な拍手でもってむかえられた。チェロもユスティーナも、興奮のためか顔が真っ赤だ。

「アイナ、リツぅ~! やったよ! あたしたちやったわよ!」

「ばっちり見てた! 二人ともすごいよ~!」

「二人三脚やったことあったのか?」

「まさか、ないわ。はじめて聞いた競技よ」

「それであの活躍はガチですごい」

 原動力がなんであれ、みごとである。


『さぁさぁ第二レースにまいりましょう!』

 内容の解説を聞くに、少し運動要素が増えたな。この第二レースは、我らが級長が出場する。

「めざせミスケーレッ!」

「おーっ!」

 熱量の高い級長のかけ声で気合いをいれ、第二チームは出陣した。

『おーっと、これはすごいぞ錬金術科一年、コースを次々とクリアしてゆきます! 前半二つは難易度高めですが、危なげなくクリア! ですが文武科三年はさらに上をゆき、三位以下をおおきくリード……』

 順位が入れ替わったのは三つめの積み石競争だった。二位のクラスが崩してしまったのである。

『これは痛い! 文武科三年二組痛恨のミスだ! さぁどのクラスが追いつくか!?』

 この運命戦に出場している片方が級長だ。彼のばあい、器用さよりも丁寧さからこの種目を選んだのだろう。

 大正解だった。錬金術科一年、二位浮上である。

 その後は追いつかれず、しかし追い抜くこともなく、二位で終わった。

「やったなテッド!」

「なんとかなってよかったよ。自分も崩すんじゃないかって、あ~~こわかった……」

 ほっとした表情の級長は、友人たちにやや手荒くたたえられている。


 十五分の休憩をはさんでから、三つめの競技の説明がはじまった。

『ではでは! 団体戦、玉入れです! これはきのう説明したとおり、宙に浮いて移動するかごに、制限時間内にボールをいくつ入れられるかを競うもの! なお、かごの移動は先生がたにコントロールしていただきます。そして競技は学年まぜこぜで四クラスずつ、その組み合わせと順番はこれより学園長にクジをひいていただいて決定します。では学園長、よろしくお願いします!』

『うむ、大役うけたまわった。いざ――』

 学園長ノリノリだな。

 その厳正なるクジの結果、わたしたちは三回戦めだった。ほかのクラスの作戦が見られるから有利だといえよう。

『では一回戦の皆さん、会場へどうぞッ』

 目印になるようになのか、四つのかごがスイ~と宙に浮いてグラウンドに出てきた。

『用意はいいですね? では――スタートッ!』

 競技開始のファンファーレが鳴る。


「マジか」

 全員でいっせいに投げるクラスと、順番に投げるクラス、二つの対応にわかれていた。そして、落ちたボールはほとんどが拾われない。

「なんで拾わんのだろ」

「拾って投げていいの、忘れちゃってるのかしらね?」

 競技終了の笛の音がひびいた。学生会の生徒たちが走り出てきて、即座に集計にかかる。

「あ、いくつ入ったかは教えてくれないんだね」

「わかったら目標できて追いあげられるのになぁ。残念」

 続いて二回戦だ。うーむ、やる気あるクラスとないクラス、動きが違いすぎて見ていておもしろくない。かごに入るボールの差が歴然としている。ただ、落ちたボールを拾って投げている人はふえている。点数差が大きくなりそうだ。

『――それでは最後、三回戦! 各クラス、クラス名の書かれたかごの周囲に移動してください』

 さぁ、はじまるぞ。


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