パラレルパラドックス

　ごく普通の高校生である新山啓介は、学校での日々をそれなりの労力でマイペースに過ごしてきた。
　そんな彼は二つの運命的な遭遇を果たす。一つは心おきなく安らげる空間である踊り場の発見。そしてもう一つは、学内で抜群の人気を誇る小池宏美との出会いだった。
　思わぬきっかけで知り合った二人は仲を深めていくが、ある日を境にして彼女が姿を消してしまう。そのことを周囲の誰もが不思議に思うことはなかった。
　まるで小池宏美という人物など最初からこの世に存在しなかったかのように。
　啓介は失意に沈みながらも、手がかりを探すようにある小説を読み進める。パラレルパラドックスというタイトルの、その本を。