名探偵ノア4話 二重スリット・ファジー・トレース殺人事件 2話
「お前らの問題、何の意味があるんだ!」
「定義も曖昧な問題で落とすな。詐欺師が!」
「『車』という曖昧な言葉で正解を操作するのはやめろ!」
「『車』と書きながら自転車も含めるのが、あなたの言う『芸術的な問題』なの?
定義の混乱も隠蔽もお見事です、ATたん♡」
「実際の交通法規では二輪と四輪を厳格に分けているのに、なぜ試験問題ではわざと混同させるような書き方をするんだ?」
「四輪と二輪を明確に分けるのが法律だろ。
なぜ試験ではわざと曖昧にする?
引っ掛けたいだけ?」
「お前は自分の子供に『自転車は車』なんて教えるのか?
そんな詭弁を『安全教育』と呼ぶなんて、さすがATたんは賢いね」
「子供に『自転車は車だ』と教えて混乱させることがお前の言う『安全運転の教育』なのか?」
「『二輪車』『四輪車』と区別すれば済む話を、わざわざ『車』で括る理由は何?
自分が神様気分で正解を操作したいだけだろ」
「正確さが求められる場所で、あえて誤解を招く書き方をする意図は?
受験者を落とすこと以外に、どんな『安全教育』的価値があるのか説明してくれ」
「これがプロの作った問題か?
幼稚すぎて開いた口が塞がらないよ。
どっちとも取れるような曖昧な問題で、人の合否を決めるな。
恥を知れ」
「大学入試なら即炎上レベルの欠陥問題。
『引っ掛け』という言葉で誤魔化すな」
「大学入試でこんな『どっちとも取れる』欠陥問題を出したら、即座に不備として大問題になるだろ。
ありえない。
バカげた幼稚な問題で受験者の人生を弄ぶな」
「わざと引っ掛けて喜ぶための『車』っていう単語、お疲れ様です」
「二輪車、四輪車と書けない日本語力の低さを、引っ掛け問題という言葉で誤魔化すな」
「日本語すらまともに使えない奴が、何が問題作成だ。
言語道断」
「緊急車両なんて現場の特別な訓練項目だろ。
一般運転者の試験でそんな揚げ足取りをして、一体何の役に立つんだ?
結局、自分の『全知全能感』を満たしたいだけだろ」
「緊急車両を操作するプロと一般人を同じ土俵で落とすな。
お前の問題は『安全』を育てるためじゃなく、受験者を『排除』するためだけに存在するんだな」
「緊急車両と一般車は、ちゃんと問題文で区別しとけ!
脳みそ幼稚園児!
お前はどこに向けて問題を作成してるんだ?
お前は警察車や消防車を運転する連中と一般車両を運転する一般人の区別もつかないのか?」
「お前の脳内では一般人と警察と消防士が同じ席にいて勉強してるってことになってるの?」
「法律で緊急車両と一般車両は同じ扱いなの?おしえてATたん♡」
「警察車と消防車って一般車両と同じ法律で動いてるの?」
「ここって警察官育成学校だったっけ?」
「そもそもお前が試験しているのは、パトカーの運転免許じゃないだろ」
「一般車両の免許を取ろうとしている一般人に対し、なぜ『緊急車両の運転資格』を持つ者だけが関与すべき例外事項を、引っ掛けのネタとして混入させるの?」
「『赤信号で止まらなくていいのは緊急車両だけ』という知識を○✕問題で暗記させることが、事故防止にどれほど寄与しているの?」
「結局、一般運転者を混乱させたいだけだろ」
「『一般人には全くもって無関係の、赤信号で止まらない例外』を暗記させるのが、お前の言う安全運転か?
運転免許試験センターは、試験場じゃなくて『言葉のイチャモン会場』なのかよ」
「税金泥棒!」
「ATたん♡今日も誰かの人生を『引っ掛け』で踏み台にしたの?」
「おめでとう、ATたん。あなたの歪んだ快感が全国に共有されたよ」
「実技の腕前より、言葉遊びに長けてる奴が合格する試験に何の意味があるんだ?」
「こんな問題を作るゴミの給料が俺たちの受験料から出てると思うと吐き気がする」
「あなたの作る問題は安全運転を教えるためじゃなく、あなたのエゴを通すための洗脳ツールでしょ」
「『教育』という言葉で、自分の支配欲を正当化するのはやめてくれない?」
「あなたが守りたいのは『交通安全』じゃなくて『自分のプライド』だよね」
「その『引っ掛け』で満たされる自尊心は、いくらで買えるの?」
「努力の方向性が、受験生をバカにするために全振りされてるね」
「あなたの人生の成果物が、ゴミのような引っ掛け問題だけなんて哀れだ」
「自分が『神』になれるのは、免許センターの中だけなんだね」
---
……というニュースを俺、結城は探偵事務所にてノアと視聴していた。
「面白い話だな、ノアくん」
本来なら「これは教育の名を借りた暴力だ」とか「試験官の権力濫用だ」とか、倫理的な観点から批判すべき案件だったのだが、実際のところ、運転免許試験の「問題作成方法」には、俺自身も目を瞬かせていた。
「……ふーん。
面白いですね。
……いや、待って下さい。
面白いを通り過ぎて、危険ですね」
ノアは、その淡泊な返答の直後に、突然言葉を継ぎ足した。
その瞳に宿った光が、いつもの「無関心」ではなく、何かの「計算」に変わっていた。
「……はぁ?危険?」
暴動を起こすという意味か?
それとも、作成者がさらに追い詰められる未来のことを言っているのか?
俺は戸惑いながら、ノアの続きの言葉を促した。
「ノアくん、何かのデモを期待してるようなら、残念ながらこの日本でそんな諸外国みたいな事は起きないと思うぞ。
日本人は、SNSで文句言うだけで、実際に街に出て抗議活動をするような民族じゃない。
だから、この件も『ネット炎上で終わり』という結末になるだろう。
問題作成者も、一時的には職場で冷たい目で見られるだろうが、数ヶ月もすれば忘れ去られる」
俺は、日本社会の「空気」という名の無言の圧力によって、多くの騒動が「炎上」という名の一時的な熱で終わることを知っていた。
歴史を遡れば、ネットが騒いだ大半の事件は、大体2週間で鎮火する。
人間の関心は、すぐに別のコンテンツへと移行する。
それが民主主義社会の脆弱性であり、同時に自浄作用を持たない圧倒的なシステムの強さでもある。
「いえ、そうじゃなくて……。
……じゃあ、どう危険なのか教えますよ」
ノアは淡々とした調子で語り始めた。
その言葉の端々に、俺がこれまで何度も経験した「未知なる匂い」が漂っていた。
「?」
俺は、身を乗り出してノアの言葉を待った。




