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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第四章 メスガキ様と融合体

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●29

「研究室は屋敷の中にあるのか?」


「はい。この時間、研究員は寝ているでしょうけど」


「好都合だ。研究室まで案内しろ」


「さすがにそれは」


 急に及び腰になったベネディクトに杖を向ける。


「これはお願いじゃない。命令だ」


「僕は掃除夫ですけど、魔法も使えます。戦闘をお望みなら相手をしますよ」


 俺に対して杖を向け返したベネディクトを鼻で笑ってやる。


「悪いが俺は並の魔法使いじゃない。メスガキ様に侮ってもらえないようなチートな魔法使いだ。戦闘になったら後悔するのはお前の方だぞ」


 ベネディクトはしばらくそのまま俺に杖を向けていたが、やがて大きな溜息を吐いた。


「ハッタリが通じたら良かったのですけどねえ。ええ、ハッタリですよ、ハッタリ。僕なんかが冒険者に勝てるわけがないじゃないですか。勝てるなら掃除夫なんてやっていません」


「賢明な判断だな」


 ベネディクトが懐に杖をしまったことを確認してから、俺も戦闘態勢を解いた。


「研究室を見たら、あなたが怒り狂うと思ったのです。そういう場所ですからね、あそこは。僕だって用事が無かったら近づきたくもないですよ」


「でも俺は見なくちゃならない。子どもたちが何をされてるのか、を」


「……覚悟がおありなら、案内しますよ。ただし、一時の感情で研究室を壊すような真似はしないでください。研究室を壊すのは、すべての準備が整ってからです。今、研究室を壊しても、修復できてしまいますから」


 予想外の言葉を口にするベネディクトのことを、じっと見つめる。


「ベネディクト。お前は、敵か? 味方か?」


「僕はただの掃除夫ですよ。だから僕の手引きであなたが研究室に来たことがバレたら困るのです。壊すときは一気に、研究室が修復不可能なように、そして証拠が一切残らないように、めちゃくちゃにやってもらわないと」


「ベネディクトに共犯の容疑がかからないように、証拠を残さずめちゃくちゃにしてくれってことか」


 なかなか良い性格をしている。

 サヴィニアの屋敷をクビになったら、ベネディクトを俺たちのパーティーにスカウトするのも悪くないかもしれない。

「どう受け取って頂いても結構です。今日のところは何もせずに見るだけで帰り、準備を整えてぶっ壊しに来てくれるのであれば」

 俺は一つ頷くと、自身に姿隠しの魔法を掛けた。



   *   *   *



 姿隠しの魔法のおかげで、屋敷の見張り番の目はまんまと誤魔化すことが出来た。

 貴族の屋敷なのだから、もっと魔法にも警戒した方が良いと思うのだが、こんなものなのだろうか。貴族の屋敷には縁が無いからよく分からないが。


「屋敷内では、姿隠しの魔法は無効化されます。屋敷内に入ったら、誰にも見られないようについてきてくださいね」


 ベネディクトが俺の心の声を読んだかのようにそう言った。


「誰にも見られないようにって、無茶じゃないか?」


「基本的に研究室へ向かう廊下には、この時間は誰もいないとは思いますけどね。もし誰かが現れたら、上手い具合に天井にでも張り付いておいてください」


「だから無茶を言うなってば」


 それともこれはベネディクトの冗談なのだろうか。

 ベネディクトとはさっき会ったばかりのため、判別がつかない。





「ここが研究室です」


 冷や冷やすることもないまま長い廊下を歩ききった俺たちは、研究室の前までやってきた。

 外から見ただけでは、この部屋が研究室かどうかは分からない。むしろ言われなければ、広すぎて、ここが研究室だとは考えすらしなかっただろう。何らかのパーティーを開くためのホールだと説明された方がしっくりくる。

 しかし考えてみると、実験に大型のモンスターを使用するのだから、研究室は広くなければならない。

 必要だからとこれほど大きな部屋を用意することが出来るなんて、さすがはお貴族様だ。


「ここまで誰にも会わなくて良かったです。危うく僕のクビが飛ぶところでした」


「こんな屋敷での仕事なんて、早く辞めた方がいいだろ」


「少し魔法が使えるだけの半端モノには大した就職先が無いんですよ。冒険者になったとしても、どうせ捨て駒にされるのがオチです」


「じゃあうちのパーティーに来るか? サヴィニアのためにモンスターをダンジョンに運んでた過去があるから、思いっきりこき使うだろうが」


「あはは、考えておきます。それより……覚悟は良いですか?」


 ベネディクトの声色が変わった。

 この扉の先には、冗談を言っていられないような光景が待っているのだろう。

 生唾を飲み込む。

 見たくない。子どもが人体実験をされているところなんて見たいわけがない。しかし、それでも。


「俺は見ないといけないんだ。扉を開けてくれ」


 ベネディクトが懐から取り出したカギを差し込む。そしてカギの開いた扉を、一気に開いた。



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