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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第四章 メスガキ様と融合体

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●27

(3)


「これでよし、と」


「こんばんは。気持ちの良い夜だな」


 ダンジョン内にモンスターを押し込んだ男に、爽やかな笑顔で話しかけた。


「そうですね……って、え? 僕の姿は見えないはず、ですよね? もしかしてまた魔法を掛け忘れちゃいましたかね? あれ、でもさっき見張り番に確認してもらったはずなのに……?」


 男はあわあわとしながら自身の身体を触った。触ったところで実際に身体が消えているわけではないから、姿隠しの魔法が掛かっているかどうかは分からないだろうが。


「姿隠しの魔法はちゃんと掛かってるぞ。俺に姿見破りの魔法が掛かってるだけだ」


「ああ、姿見破りですか。あれ困るんですよね。誰かに『姿見破りで見破れない姿隠しの魔法』を開発してほしいものです」


「その魔法が開発されたら次は『姿見破りで見破れない姿隠しの魔法を見破る魔法』が開発されると思うぞ。って、それはさておき。こんな気持ちの良い夜に君は何をしてるのかな? モンスターをダンジョン内に放ったように見えたが?」


「ええっと……気のせいじゃないですかね?」


 気のせいで逃げられるわけがないだろうに、男がすっとぼけた。

 これに乗ってあげられるほど、今の俺は優しくない。


「サヴィニアの屋敷からモンスターを連れてきたよな? モンスターがいる屋敷なんておかしいと思わないか?」


「今やペットは多様化していますから。モンスターをペットにする人がいてもおかしくありません」


「飼育放棄したペットをダンジョンに放ったってことか?」


「飼育放棄は良くないことですけど、大目に見てはくれませんか? ダンジョン内にモンスターを戻しても、一般人は困らないでしょう?」


 次はペットの飼育放棄と来たか。

 のらりくらりと質問をかわして真相を話そうとしないこの男には、俺の持っている情報をぶつけた方が早そうだ。


「あんたの雇い主は、孤児院から大勢の子どもを引き取ってるらしいな。それに町で起こってた誘拐事件。誘拐犯から子どもを買ってたのもサヴィニアなんだろ?」


「……あなたは何者ですか」


「俺の名前を聞きたいなら、まずは自分から名乗るべきじゃないか?」


 男は俺の目を正面から見た後、ぽつりと言った。


「僕はベネディクト。サヴィニア様に仕える使用人です」


「そうか。俺はアデルバート。メスガキ様を愛する冒険者だ」


「メスガ……えっ?」


「メスガキ様だ。だが今メスガキ様はどうでもよくて、いやどうでもよくはないが。それよりも今はもっと別の話がしたい」


「それなら変な単語を出さなければいいのに」


 ベネディクトがごもっともな意見を述べた。


「とにかく、だ。俺はお前たちのやってることを知ってるんだ。お前たちは……人間とモンスターを融合させようとしてるな?」


 俺の言葉を聞いたベネディクトは、意外なことに動揺を見せなかった。

 動揺の代わりに諦めの表情で、モンスターを放ったばかりのダンジョンを見つめている。


「いつかはバレると思っていましたよ。それに……僕は誰かに知られることを望んでいたのかもしれません。なんだか心の重しが取れたような気分です」


 ベネディクトは大きく伸びをすると、俺のことを真正面から見つめた。


「聞きたいことは何ですか? 今なら特別に何でも話しちゃいますよ」


「自分から話してくれるとは思わなかったな。自白魔法でも使おうと思ってたんだが」


「自白魔法の使用は違法ですよ。認められるのは正式な手続きを経た場合のみです」


「違法だとしても、聞き出さないといけないことだからな。自分から話してくれるなら法を犯さなくて済むからありがたい」


 とはいえ、ベネディクトの言葉が嘘か誠かを見極める必要はあるが。


「サヴィニアが人間とモンスターを融合させようとしてるのは事実なんだな?」


「はい。そのためにサヴィニア様は巨額の資金を投じています」


「どうして人間とモンスターを融合させようとなんかしてるんだよ!?」


 ベネディクトはまたダンジョンを見つめた。


「サヴィニア様は、ダンジョン内でしか生活できず、静かに暮らしているだけなのに冒険者たちに討伐されるモンスターに心を痛めておいででした。そしてもっと人間とモンスターが共存できる世界になればいいのに、と嘆いていたのです」


 なるほど。そういう考え方も出来るのか。

 確かに人間がダンジョンに入らなければ、モンスターは討伐されずに暮らすことが出来る。

 ……現状では難しいだろう。

 ダンジョンでは様々な素材やアイテムが手に入る。薬の調合に使える素材に、便利なアイテム、それらを換金することで得られる金銭。そのすべてを無視できるほど、人間は無欲ではない。


「そこでサヴィニア様はお考えになったのです。人間とモンスターの架け橋になるような存在がいれば、共存への道が開けるのではないか。たとえば人間とモンスターの両方の特性を持つ融合体がいたらいいのではないか、と」


「……人間とモンスターの融合体が架け橋になると?」


「サヴィニア様はそうお考えでした」


 人間とモンスターが愛し合ったことで生まれた子どもなら、架け橋になる可能性もあるが……無理やり融合させられた存在が架け橋になるとはとても思えない。

 もし俺が融合体にさせられたとしたら、自分をそんな身体にした人間に全力で復讐をする。絶対に平和の架け橋になんかなってやらない。

 このように考える方が多数派ではないだろうか。



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