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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第四章 メスガキ様と融合体

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26/39

●26

 庭に出ると、すぐにローズマリーが駆け寄ってきた。


「ロリコンのアデルお兄さんだー!」


 嬉しいはずのメスガキ様発言だが、今はとても喜ぶ気にはなれない。


「久しぶり、ローズマリー。今日は一人?」


「うん。ダリアもポピーもジャスミンも、みんな孤児院を卒業しちゃったの」


「……そうか。それは寂しいな」


「今は寂しいけど、日曜日になったらローズマリーもサヴィニアさんの屋敷に行くから平気。またみんなと会えるから寂しくなくなるよー!」


 みんなと会えたら……な。


「ダリアとポピーとジャスミン、三人ともサヴィニアさんに引き取られたのか?」


「うん。ダリアが最初で、次にポピー、この前はジャスミンが引き取られたんだよ。ローズマリーが最後で、ちょっとジェラシー」


「今日はサヴィニアさんの使いの人が来るらしいが、ローズマリーは会ったことのある人か?」


「会ったことあるよ。ほら、あの人!」


 タイミングよく一人の女性が馬車から降りてきた。

 ローズマリーと目が合った女性がこちらに向かって手を振っている。


「サヴィニアさんが来ることもあるんだけど、忙しいときはあの人が来るの。優しいよ」


「……悪い。今日はもう帰らないといけないんだ」


「えーっ!? アデルお兄さん、ローズマリーと遊んでくれないの!?」


「ごめんな」


 謝りつつ頭を撫でると、ローズマリーがぷうっと頬に空気を溜めた。


「仲良しの子がいなくなっちゃって全然遊べないから、アデルお兄さんが来てくれて嬉しかったのに。やっと遊べるって思ったのに」


 俺はもう一度ローズマリーの頭を撫でてから、ぎゅっと小さな身体を抱きしめた。


「ローズマリーは生きててくれよ。いつまでも、元気に」


「どうしたの? 変なアデルお兄さん」


 変だと言いつつ嫌ではないらしく、ローズマリーからも俺のことを抱きしめ返してきた。

 せめてこの温もりが消えないことを祈ろう。

 十分にローズマリーの体温を感じてから、俺は孤児院を出た。そして孤児院近くの茂みに身を隠す。

 サヴィニアの使いの者を追いかけて、サヴィニアの屋敷の場所を突きとめるためだ。



   *   *   *



 馬車を追いかけることは大変だったが、自身の身体に掛かる重力を軽くすることで何とか屋敷まで追い続けることに成功した。


「うわあ。俺の借家何十個分だよ……」


 たどり着いた屋敷は、とてつもなく大きいものだった。屋敷の規模を見る限り、侯爵以上の貴族に思える。

 ……俺はどの階級の貴族がどのくらいの大きさの屋敷を持っているのかは知らないが。なんか「サヴィニア侯爵邸」って感じの屋敷だとぼんやり思っただけで、根拠は無い。


「って、サヴィニアの貴族階級なんかどうでもいいんだよ!」


 サヴィニアの屋敷は孤児院から離れていたため、すでに辺りは暗くなっている。この暗さは、身を隠すには最適と言えるだろう。

 屋敷の外から見る限り、庭には見張り番がいるようだが、一人だけみたいだ。


「別に泥棒に入りたいわけじゃないが、外から見ただけだと何も分からないな」


 これ以上の情報を得たいのなら、屋敷の敷地内に入るしかなさそうだ。さて、どうやって侵入しようか。音をさせるか何かで見張り番をおびき出して、その隙に侵入するのが無難だろうか。いや、それよりも魔法で……。

 などと俺が考えていると、屋敷の中から一人の男が出てきた。しかも男は後ろにモンスターを引き連れている。


「なっ!? 魔法で操ってるのか!?」


 モンスターは男に従順な様子で、大人しくしている。魔法でも使わないと、こうはならない。大抵のモンスターは人間を敵認定しており、人間を見た瞬間に逃げるか襲ってくるかするからだ。


「……会話は聞こえない、か」


 見張り番が男に近づき、何かを話している。

 すると男は頭をかいてから、自身とモンスターに魔法を放った。魔法により、男とモンスターの姿が見えなくなる。


「なるほど。姿隠しの魔法か。それなら俺は……姿見破り――シー・スルー――」


 俺は自身の目に向かって、姿隠しの魔法を見破る魔法を掛けた。すぐに魔法の効果で男とモンスターの姿が再び見えるようになる。


「俺は重力魔法以外にも基礎的な魔法は使えるんだよ。姿見破りの魔法くらい簡単だ」


 屋敷に侵入するか男を追いかけるか悩んだ結果、俺は男について行くことにした。


 一定の距離を保ちながら男を尾行する。

 男は姿隠しの魔法を使っていることで気を抜いているのか、周囲への警戒を怠っているようだ。

 ちなみに俺は、自身に姿隠しの魔法は使用していない。魔法を何個も重ね掛けするには集中力が必要で、サヴィニアの屋敷まで重力魔法を使用していた今の俺にはしんどかったからだ。


「どこまで行くんだ、あいつ」


 そうやってしばらく追いかけていると、ついに男が立ち止まった。

 男が立ち止まった場所は。


「……ダンジョン、か」


 俺は一人で長い息を吐いた。



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