●20
(2)
誘拐犯たちは衛兵によって連行され、救出された子どもたちは診療所へと運ばれた。
あのぐったりしていた少年は入院することになるだろうが、ガブリエラは元気そうだったため、簡単な検査が終わったらすぐに家に帰れるだろう。
ガブリエラの母親の憔悴具合を知っていることもあって、ガブリエラが元気な状態で見つかって本当に良かった。
「これで、めでたしめでたし、だね」
「……ガブリエラの誘拐に関しては、な」
そう、ガブリエラの人身売買に関しては未然に防ぐことが出来た。
しかし誘拐犯たちがさらった子どもは、俺たちが助け出したあの子たちだけではない。多くの子どもたちはすでに売られた後だった。
「誘拐犯の男に聞いたところによると」
俺の意図することに気付いたサイラスが話し始めた。
「子どもを高値で買い取ってくれる金持ちがいるらしい。定期的にその金持ちが寄越す使いの者と落ち合って、さらってきた子どもを引き渡してたんだと」
「子どもの奴隷がほしい金持ちでもいるのでしょうか」
「さあな。誘拐犯は渡した子どもがどうなるのかは知らないようだった。それにその金持ちが誰なのかも知らないんだと。余計なことを詮索しないのも、子どもを高値で買い取る条件だったらしい」
「その金持ちは最悪だが……自らが誘拐はしないんだよな? ということは、この町を騒がせていた子どもの誘拐事件はこれで終わるんだよな?」
「たぶんだが、な」
もしも今回捕まえた誘拐犯グループに残党がいるとしても、厳しい尋問を受けた仲間たちに売られることだろう。悪いことをして稼ごうとするやつの人間性なんてそんなものだ。自分が得をするのなら、他者がどうなろうと知ったことではない。そういうマインドだから、仲間であろうと躊躇なく売るに違いない。
それにアジトが見つかったため、誘拐した子どもを隠しておく場所がもう無い。
これ以上誘拐を続けることは不可能と見ていいだろう。
「今回捕まえた誘拐犯グループの他にも誘拐犯がいたりは……しないよな?」
「たぶんだが、な」
「ちょっと、二人とも暗すぎ。誘拐犯を見つけてボコボコにしてさらわれた子どもたちを救い出して、超スッキリ。でいいんじゃない!?」
複雑な顔をする俺たちに、ミルカちゃんが明るい調子で言った。
「……そうですね! ミルカさんの活躍のおかげで四人の子どもたちを救うことが出来ました。お手柄ですよ」
「そうだな。誘拐犯グループも捕まえたことだし、町のみんなから感謝されるんじゃないか?」
「えへへ、そうかなあ」
照れたように笑うミルカちゃんに対して、サイラスは疲れた顔をしている。
「頼むからもう囮作戦なんてやらないでくれよ。心配で心臓がはちきれそうだったんだからな!?」
「お兄ちゃんって意外とノミの心臓なんだね?」
「ミルカが絡むとノミの心臓になっちゃうみたいだな」
ノミの心臓と述べるサイラスは、誘拐犯のアジトではノミどころかゴリラに見えた。あまりにも腕っぷしが強かったから。いつもは剣で戦っているから、サイラスがあんなに肉弾戦が強いなんて知らなかった。
「ノミどころか、サイラスは腕っぷしが強すぎてゴリラみたいだったぞ。剣士なのに剣を抜かずに敵を倒しちゃうんだからさ。そういえばミルカちゃんも肉弾戦で敵を倒してたよな。二人とも強かった!」
俺の言葉を聞いたサイラスとミルカちゃんが、二人で顔を見合わせた。
「別に強くはないよね?」
「ああ。剣に関してはそこそこ実力があると自負してるが、体術はそれほどじゃないな」
この二人は、普段どんなレベルの訓練をしているのだろう。
もしかして俺だけじゃなくて、サイラスとミルカちゃんもチート級に強いのではないだろうか。
「……わたくし、入るパーティーを間違えたかもしれません。二人の能力についていける気がしません」
二人の強者具合に衝撃を受けているのは俺だけではなかった。オリビアも二人の常人離れした感覚に困惑しているようだ。
「やだやだ、オリビアはパーティーを抜けないでよぉ。アデルバートはどうでもいいけどぉ」
「そうだぞ。オリビアがいなくなったら怪我に怯えて全力で戦えなくなる。オリビアがいるからこそ、俺たちは全力が出せるんだ。オリビアは大切な仲間だよ」
「ミルカさん、サイラスさん……!」
「いやいや、俺の扱いが雑じゃない!?」
ミルカちゃんだけではなくサイラスにまで、アデルバートはさておきオリビアは大切、といった扱いをされるとは。
メスガキ様であるミルカちゃんにだけ、そういう扱いをされたいのに!
「雑で良いんだよ。だってアデルバートは何の役にも立たなかったザコだもぉーん♡」
ザコ、いただきましたああーーー!!
誘拐犯を捕まえてしまったから、もう言ってもらえないと思っていた。
しかしよく考えてみると、囮になった上に誘拐犯の一人を倒したのはミルカちゃんで、残りの誘拐犯を倒したのはサイラスだ。ついでにサイラスは大岩で裏口をふさぐこともしていた。
俺が魔法を使ったのは地下室でだけだから、ミルカちゃんは俺の活躍を一切見ていないのだ。
つまりこれからも俺のことを侮って嘲笑してもらえる!
「こら、ミルカ。仲間にそういうことを言っちゃダメだろ」
「えぇー? うーん、でもなぁー?」
ミルカちゃんがニマニマと嘲笑を浮かべながら俺のことを見ている。
メスガキ様、最高!!!!!




