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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第三章 メスガキ様と誘拐事件

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18/39

●18

 酒場の中では、五人の男がミルカちゃんを取り囲んでいた。

 そしてミルカちゃんの目の前では、先程一緒に歩いていた男が床に倒れている。


「誰だ、お前らは!」


「俺はそこの美少女の兄だ! 妹に何をした!?」


 パッと見た感じだと、ミルカちゃんが何かをされたと言うよりは、ミルカちゃんが何かをしたように見える。おそらく、倒れている男を投げ飛ばしでもしたのだろう。


「何をしただとお!? こいつに暴力を振るわれたのはこっちだ。お前が兄なら、落とし前はつけてもらうぞ!」


 やはりミルカちゃんが男を倒したのか。状況的にそうだと思っていたが。


「お兄ちゃん。この人たち、悪い人だよ。私に魔法を掛けようとしたもん。それで私が抵抗したら、大人数で私のことを取り囲んできたの」


「……何だと?」


 ミルカちゃんの言葉を聞いたサイラスが、地の底から響き渡るようなドスの利いた声を出した。

 あーあ、サイラスがキレちゃった。

 俺、しーらない。

 オリビアもヤバい気配を感じたのか、さりげなくミルカちゃんを自分の近くに誘導しつつ、サイラスから距離を取った。巻き込まれるのは勘弁願いたいと思ったのだろう。


「ミルカに魔法を掛けようなんて、百万年早いんだよ! この小悪党どもがッ!」


 飛び上がったサイラスが、一人の男に膝蹴りをかました。その勢いのままに別の男に回し蹴り。その次は拳で鉄拳制裁。

 踊るように鮮やかに、次々と男たちを撃破していく。

 サイラスが剣を抜いていないことだけは、男たちにとって幸いだろう。それ以外は最悪だが。


「お兄ちゃん。ガブリエラちゃんの居場所を聞かないといけないから、全員は気絶させちゃダメだよ。一人は残して」


 ミルカちゃんがそう言ったが、目の据わったサイラスには響いていないようだった。


「気絶したなら起こせばいいだけだ」


「あっ、それもそうか」


 ミルカちゃんの意見がサイラスに響かないどころか、サイラスの意見がミルカちゃんに響いてしまった。恐ろしい兄妹だ。


「俺の質問に答えろ」


 サイラスが倒れた男の胸ぐらを掴んで持ち上げた。


「お前たちは誘拐犯なのか?」


 散々ボコボコにしてからそれを聞くのか。これでもしこいつらが誘拐犯ではなかったらどうするつもりなのだろう。その場合サイラスは、いきなり酒場に乗り込んで居合わせた善良な町民をボコボコにしたヤバいやつだ。完全にサイラスの方が悪者になる。

 ……まあ、サイラスを止めなかった俺が言うことでもないか。

 サイラスは、持ち上げた男が起きそうもないと判断したのか、その男をまた床に転がした。どさりと大きな音がしたが、それでも男が起きる気配はない。死んではいないようだが、かなり遠くまで意識を飛ばしているようだ。丸一日目を覚まさなくてもおかしくはない。

 俺が起きない男を見ている間に、サイラスが別の男の頬をビンタしていた。完全に悪人側の所業だ。


「おい、お前たちは誘拐犯なのか!?」


「……妹さんは連れ帰って構いませんので許してください。むしろ早く連れ帰ってください」


 今度の男は目覚めたらしく、怯えた目でサイラスを見つめている。


「俺は、お前たちが誘拐犯なのかどうかを聞いてるんだよ! 質問に答えろ!」


「はい、誘拐犯です! すみませんでした!」


 男が即行で白状した。この男はサイラスに完全降伏をすることに決めたらしい。

 無理もない。サイラスにあれだけ一方的に痛めつけられたのだから。

 なおサイラスが一人で五人の男を蹴散らすものだから、俺とオリビアとミルカちゃんの出番は無かった。いや、ミルカちゃんはサイラスが暴れる前に一人倒していたか。


「誘拐した子どもたちはどこにいる」


「もう全員売り払ってしまいました」


「嘘を吐くなッ!!」


「すみませんすみませんごめんなさい。ほとんど売り払いましたが、まだ売っていない子どもはここの地下室に隠しています。明日まとめて売るつもりだったので。教えたので命だけは助けてください」


 一度は子どもをすべて売り払ったと言った男だったが、サイラスに凄まれるとすぐに本当のことを白状した。

 しかしこの機に及んで一度は嘘を吐くなんて、往生際が悪いと言うか、度胸があると言うか。

 とにかく誘拐された子どもたちは、まだここの地下にいるらしい。その中にガブリエラがいればいいのだが。


「地下室への入り口はどこだ。カギを渡せ」


「入り口はそこの酒樽の下にあります。カギはカウンターの裏に」


 男に言われて、オリビアとミルカちゃんが地下室への入り口とカギを探した。

 二人が動き回っても、サイラスに凄まれている男以外は気絶していてピクリともしない。


「あったよ、地下室への入り口!」


「カギもありました」


 俺はオリビアからカギを受け取ると、地下室の入り口に差し込んだ。

 ガチャリとカギが開く。


「開いたね、行こう!」


「いいや、地下室があいつの罠の可能性もある。俺だけが降りるから、みんなはここで待っててくれ」


 そう言い残すと、俺は酒場に置かれていたランプを片手に、地下への階段を下りて行った。



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