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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第三章 メスガキ様と誘拐事件

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●17

「……って、無駄話をしている場合ではありません。ミルカさんを見てください!」


 俺たちとの会話を無駄話だと言い切ったオリビアが、ミルカちゃんを指差した。

 どうやらミルカちゃんに一人の男が話しかけているようだ。


「あの野郎、ミルカに馴れ馴れしく話しかけやがって!」


 今にも飛び出そうとするサイラスを、オリビアとともに二人掛かりで押さえつける。


「落ち着いてください、サイラスさん。あの人はただミルカさんに道を聞いているだけかもしれませんよ?」


「そうだぞ。それにもし誘拐犯だった場合は、アジトを突き止めないと囮作戦の意味が無いだろ!?」


「でもミルカが!」


「見た感じあの男性は戦士職ではありません。身体つきが貧相ですから、きっと冒険者ですらありませんよ。ミルカさんがあの男性に力でねじ伏せられることは無いと思います」


 あらためて考えると、大の男に力でねじ伏せられないと思われているミルカちゃんの鍛え方は尋常ではない。

 そして俺もオリビアの意見に賛成だ。

 単純な力勝負ならミルカちゃんが負けるかもしれないが、ミルカちゃんは戦闘訓練を積んでいるのだ。相手の力を逃がす方法や、カウンターを決める方法を熟知している。腕力だけで押し切ろうとする相手になんか負けるわけがない。


「だけど! 力ではねじ伏せられなくても、ミルカが魔法で操られちゃうかもしれないだろ!?」


 なおも食い下がるサイラスに対して、オリビアが首を横に振った。


「そうならないように、ミルカさんに『魔法無効の腕輪』をはめてもらったことを忘れたのですか? あれ、結構高いのですよ?」


 そうなのだ。もしものことがあってはマズいので、オリビアが所持していた『魔法無効の腕輪』をミルカちゃんに渡している。

 あの腕輪をはめていれば、相手にどのような魔法を掛けられたとしても、ミルカちゃんに効果は表れない。

 かなり優れたアイテムのため価格が高く、俺たちパーティーの中ではオリビアしか持っていない代物だ。

 ちなみにオリビアはあの腕輪を「結構高い」と表現したが、とんでもない。「目玉が飛び出るほど高い」アイテムだ。

 『魔法無効の腕輪』や俺の『アイテム圧縮サック』のように、高価なアイテムはどこまでも高価なのだ。いくら値を釣り上げても購入する人間がいるからだろう。まったくもって、アイテムショップは商売上手だ。


「ミルカさんたちが移動するみたいです。行きましょう」


 俺たちはサイラスが飛び出さないように押さえながら、ミルカちゃんを追って移動をした。サイラスが本気で振り払おうとしたら俺とオリビアは簡単に振り払われてしまうのだろうが、誘拐犯のアジトを突きとめるまでは出てくるなというミルカちゃんの言葉が頭に残っていたためか、サイラスは黙って歩いていた。

 十分に距離を取っているため、ミルカちゃんの横にいる男に、俺たちの存在はバレていないようだ。

 ミルカちゃんと男は大通りから逸れて細い道を進み、しばらくすると一件の寂れた酒場らしき場所に到着した。看板には「会員制酒場」とだけ書かれており、店名は不明だ。

 ミルカちゃんは男とともに酒場に入る直前、俺たちがついてきているかを確認した。そして俺たちと目が合うと、意味ありげにウインクを飛ばしてきた。


「ミルカちゃん可愛い!!」


「あいつ、ミルカに酒を飲ませる気か!? 許せん!!」


「アデルバートさん、サイラスさん、落ち着いてください。どちらの反応も間違いです。それにしても今のウインクは、あの男が誘拐犯に違いない、という意味でしょうか?」


 俺たちに若干呆れつつ、オリビアが言った。


「ただのナンパだから心配しないで、って意味かもしれないぞ?」


「この状況でただのナンパ男に時間を割きはしないでしょう。ミルカさんだって誘拐事件は早期解決しないといけないと分かっているでしょうから」


 だとすると、ミルカちゃんはあの男から誘拐犯の香りを感じ取ったのかもしれない。あまりにも言葉巧みだったとか、手慣れた様子だったとかで。

 遠くから監視している俺たちにはミルカちゃんとあの男が何を話しているのかは聞こえなかったため、ミルカちゃんの直感を信じるしかない。


「よし。外から酒場の中が覗ける場所を探そう」


 俺たちは酒場の周りをぐるりと回ってみたが、中が見える場所は無かった。唯一ある窓には、分厚いカーテンが掛かっている。


「裏口にはカギが掛かってるみたいだな。さっき男が入り口にもカギを掛けてたよな」


「裏口か。出口が二つあるのは厄介だから、裏口は何かでふさごう。俺、ちょっくら大岩を持ってくる」


 大岩はちょっくらで持ってくるものではないと思うが……。

 サイラスにとってだけは「ちょっくら」なのかもしれない。


「俺が戻るまで、二人で入り口と裏口を見張っててくれ」


「まかせろ」


「おまかせください」


 走ってこの場を離れたサイラスは、驚く速さで大岩を持って戻ってきた。

 大通りではないとはいえ、人通りが皆無なわけではない。大岩を持ったサイラスを目撃した通行人は言葉を失ったことだろう。サイラスは、俺の思っていた倍の大きさの岩を持って戻ってきたからだ。


「これを扉の前に置いたら、裏口から出ることは出来ないはずだ」


「その半分の大きさの岩でも出られないと思うぞ」


「いいや、念には念を入れた方が良い。誘拐犯の中に力持ちがいるかもしれないからな」


「確かに大きい分には困らない、か」


 裏口の扉の前に大岩を置いて扉が開かないようにすると、俺とサイラスは表の入り口近くで待つオリビアのもとへと向かった。


「もう岩を持って来たのですか!?」


 あまりにも早い俺たちの登場にオリビアは目を丸くしていた。


「しかもサイラスはとんでもないサイズの大岩を持って来たんだ。あれは絶対に扉が開かないな」


「ああ。だから裏口のことはもう気にしなくていい。現在の状況は?」


 サイラスは得意気にすることもなく、オリビアに現状確認をした。

 あの速さであの大きさの大岩を持って来たのだから、少しは誇ってもいいと思うのだが、サイラス的にはそんな場合ではないのだろう。


「あの後は誰も酒場に入らず、また酒場から出てきてもいません。特に大きな音は聞こえていないので戦闘にはなっていないと思いますが……中の様子が見えないので、もう突入するか否かを考えても良いかもしれませんね」


「ミルカちゃんが誘拐犯からガブリエラの情報を聞き出してる最中だったら困るが、どうする?」


「突入しよう」


 サイラスはそう言うと思った。


「オリビアはどう思う?」


「わたくしは……」


 そのとき、酒場の中から大きな音と複数の足音が聞こえてきた。

 ミルカちゃんとさっきの男の二人分にしては足音が多い。酒場の中に別の人間が大勢いたのだろう。


「ミルカさん一人で対処するには人数が多すぎます。突入しま……」


 オリビアが言い終わる前に、サイラスが酒場の扉を蹴り破った。



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