●13
「……って、それよりも! どうしてこの人が俺の親父だって知ってるんだよ!?」
俺は少女を見つめたまま、親父を指差した。
何だかめでたしめでたしで終わりそうだが、そうはいかない。
この少女の存在は、あきらかに俺と親父に都合が良すぎる。物語のお助けキャラみたいな人物は、現実にはそうそう現れるものではない。
「愚痴られたんですよ、私。お兄さんの写真を見せられながら『息子が家と墓地の往復しかしなくなった。何をしてやればいいのか分からない』って」
小さな子どもに愚痴る内容ではなさすぎる。と言うか子どもに愚痴を言うなよ、親父。そのときの親父は酔っていたのだろうか。
「お前は何者だ? 親父の何だ?」
「おじさんは私のお父さんの友人なんです。今日お父さんがおじさんの家へ行くって言うから、私もついてきたんです。おじさんにはよく遊んでもらっていましたし」
少女の言葉を聞いて親父の方を見ると、親父はやや恥ずかしそうにしつつも頷いた。少女の言葉は誠なのだろう。
「知らなかった……」
「そうでしょうね。おじさんが隣町にある私の家に来るようになったのは、お兄さんと気まずくなってからなので。お兄さん、あんまりおじさんに迷惑をかけちゃダメですよ?」
「お前もな。こんな時間に出歩いてたら、お前の親父が心配してるだろ」
俺がそう言うと、少女が可愛くウインクをした。
「大丈夫です。私のお父さんは宿で寝てますよ。睡眠魔法を掛けてきたので、ぐっすりです」
「睡眠魔法!?」
この子の年齢で睡眠魔法が使えるなんて、将来有望すぎる。
だが将来有望だったとしても、やっていることはかなり最低だ。親に睡眠魔法を掛けて夜に出歩くなんて、まるで非行少女だ。
「恐ろしい子どもだな」
「恐ろしい子どもじゃなくて、可愛い子どもです」
「いいや、恐ろしくて生意気な子どもだ」
俺が断言をすると、少女は自身のあごに人差し指を当てながら小首を傾げた。
「あれー? もしかしてお兄さんは、好きな子をいじめたくなるタイプですか?」
「はあ!? お前なんか好きじゃない!」
「またまたー」
「本当だっての。親父と会わせてくれたことには感謝してるが、お前みたいなクソガキは恋愛対象外だ!」
そう、この少女は俺にとって恋愛対象ではない。
しかしこの少女の発言はあながち間違いでもなかったりする。
今の俺はこの子のことを天使のようだと思っているし、生意気なのと同時にとっても可愛いと感じている。
……いいや、そんなことを認めるわけにはいかない。
「俺は、自分のことを『わたくし』と呼ぶような、綺麗なお姉様がタイプなんだ。それ以外はクソだ!」
「視野が狭いですねえ。自分の好み以外はクソだなんて、まるで子どもです」
「子どもで悪かったな! 俺は、どれだけ頑張ってもお前にはなることの出来ない美人なお姉さんと付き合ってやる! 悔しいだろ!?」
自分自身に言い聞かせる意図も込めてそう宣言をすると、少女がふわりと笑った。
「今に見ていてください。私、すぐに美しいお姉様になりますので」
「お前には無理だよ。生意気なクソガキ」
俺が大人げなくそう言うと、少女があっかんべーをした。
「すぐに逃した魚は大きかったと気付かせてあげますよ」
「やれるものならやってみろ!」
「そのときになって泣きながら懇願しても、もう付き合ってなんてあげませんから。お兄さんのバーカ♡」




