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【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第二章 メスガキ様と過去

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11/39

●11

「……ん?」


 突如として、目の端に動くものが映った。

 もしかして待ちわびていた、お袋の幽霊だろうか!?

 急いでそのナニカのもとへと向かう。すると、そこにいたのは。


「わっ!?」


 くりくりの大きな目をした、金髪の少女だった。年齢は十歳前後くらいだろうか。

 墓地には誰もいないと思ったのに、こんな子どもが隠れていたなんて。


「……って、どうして子どもが墓地に!?」


「えへへ。見つかっちゃいました」


「見つかっちゃったって、あのなあ」


 誰かと会話をしたのはいつ以来だろう。その間も独り言は呟いていたが、他人と会話をするのは久しぶりだ。変な喋り方になっていないか不安だ。少女の受け答えを見る限り、そこまでおかしなことにはなっていないのだろうが。なっていないと願いたいが!


「幽霊……じゃないよな?」


「幽霊のように透き通った儚げ美人という意味ですか?」


「ちんちくりんが何言ってるんだよ」


 この少女、年齢の割に語彙力は高いようだが、どこからどう見ても永久歯が生え揃ってもいない子どもだ。


「ここにいるのは君一人なのか? 保護者は?」


「……お兄さんも保護者が必要な年齢じゃないんですか?」


 それを言われると弱い。俺の十五歳という年齢は、子どもと呼ぶには育ち過ぎているものの、決して大人でもないからだ。少なくとも夜に一人で出歩くことは推奨されない年齢だ。


「……俺は別に良いんだよ」


 だからそんなことを言って、俺から話を逸らして話の焦点を少女に合わせてみる。

 すると少女がにっこりと笑った。


「それなら私も別に良いんです」


 いやいやいや。さすがにこんな小さな少女が一人で夜に出歩くのはダメだろう。一体どこの家の子だ?

 少女は誰だろうと考えて、すぐに近所の子どもではないという事実に気付く。最近はあまり町なかを歩いていないとはいえ、この子は十歳前後だ。近所に住んでいるなら、最低でも一度は目撃しているはずだ。今はこのような状態の俺だが、昨年までは普通に町の人たちとコミュニケーションを取っていたのだから。


「……君、この辺に住んでる子どもじゃないだろ。一度も見たことがないからな」


「最近引っ越してきた家の子かもしれませんよ?」


「ここは大都市ってわけじゃないんだ。誰かが引っ越してきたらうわさになるに決まってるだろ」


 もし本当に少女が引っ越してきたばかりなのだとしたら、俺には分からない。最近の俺は、うわさ話とは無縁の生活を送っているから。しかしうわさ話が耳に入るのがさも当然のように振る舞っていれば、少女がボロを出すと思ったため、こんな風に言ってみた。


「君の家はどこだ?」


「家の場所が何だって言うんですか。この辺に住んでいないと墓地に来ちゃいけない規則でもあるんですか」


 どうやら俺のハッタリは通じたらしい。少女が自分からこの町の人間ではないことを白状した。


「この墓地にそんな規則は無いが……子どもが夜遊びをしちゃいけないってルールはある」


「それなら遊んでいないのでセーフですね!」


 こいつ!?

 丁寧な言葉遣いのせいで隠れていたが、この少女、とっても生意気だ!


「……まあいい。君がどうしてここにいるのかは聞かない。ただし見てしまったからには、俺には君を安全なところまで送り届ける義務がある」


 少女の生意気な物言いに若干の苛立ちを覚えたものの、俺は少女よりも年上だ。クールにいこう。


「そんな義務は無いと思いますよ。お兄さんだって子どもですし」


「俺は、少なくとも君よりはずっと大人だ」


「大人は家族とギクシャクしたりはしません。上手い距離で付き合えます」


「!?!?!?」


 少女の言葉に固まった。

 この町の人間ならまだしも、そうではない少女が俺の家の事情を知っているなんて思ってもみなかったからだ。


「どうしてそれを!?」


 俺が声を裏返らせながら尋ねると、少女は勝ち誇ったような笑みを見せた。


「やっぱり家族とギクシャクしていたんですね。そうじゃないかと思って、カマをかけてみたんです。お兄さんみたいな陰気そうな人は、家族と上手くやれていない気がしたので」


 なんだと!?

 くそっ、俺はカマをかけられたのか。俺よりもずっと小さな子どもに。


「……ムカつくガキだな!?」


 俺が本音を隠さずにそう言うと、少女の勝ち誇った笑みがさらに濃くなった。


「そのガキにいいように手玉に取られているお兄さんって、憐れですよねー」


「お前!? 言わせておけば!」


 俺が少女に手を伸ばすと、少女はするりと俺の手を逃れて、あっかんべーをした。


「悔しかったら捕まえてみてください。私、かけっこは得意なんです!」


「待てっ」


 墓地を飛び出して走っていく少女を追いかける。

 走って走って、いつの間にか町の中まで入り込んでも、少女との差は縮まらない。


「お兄さん、本気で走ってますー? 本気で走っているのに、か弱い少女を捕まえられないんですかー?」


「マジかよ。本当に足が速い」


「私が速いと言うよりも、お兄さんの足が遅すぎるんですよ。運動不足なんじゃないですか、鈍くさいお兄さん♡」



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