表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】メスガキ様にざぁこ♡と罵られたいから、真の実力は隠そうと思う  作者: 竹間単
◆第二章 メスガキ様と過去

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/39

●10

(1)

 今はメスガキ様に狂っている俺だが、生まれたときからメスガキ様が好きなわけではなかった。強いて嫌いではなかったものの、注目もしていなかった。

 そんな俺が変わったのは、おそらくあの件がきっかけだろう。

 名前も知らない一人の少女。彼女が俺を変えたのだ。




 お袋が死んだのは、俺が十五歳のときだった。

 お袋は元から病弱だったこともあって、驚きは無かった。その代わり、果てのない喪失感が俺を襲った。

 お袋との思い出の詰まった家に帰ることが辛いのか、日に日に親父は家に帰らなくなっていった。今では月に一度、俺に生活費を渡すために家へやって来る程度だ。

 こんな状態でも俺の生活費を置きに来てくれるのだから、親父は親父できちんと父親の意識があるのだろう。

 ただお袋の死によって出来た傷が癒えていないため、この家で暮らすことには耐えられないのだ。

 ……いや、もしかするとこの家ではなく、親父は俺に会うことが辛いのかもしれない。

 俺にはお袋の面影があるから。

 俺自身でさえ、鏡を見るとお袋のことを思い出してしまうくらいだ。親父の目にも、俺はお袋と重なって見える部分が多いのだろう。

 だから俺は無意識に、お袋が死んだ事実を親父に突き付けてしまうのかもしれない。

 きっとそうだ。だからこそ親父は俺のことを視界に入れたくないのだ。もしこの家が辛いだけなら、俺も一緒に新居に連れて行ってくれているはずだから。

 このまま親父の心の傷が癒えなかったら、親父と俺の関係は自然消滅してしまうかもしれない。親子であるという事実は消えないものの、縁は切れてもおかしくない。



「……いただきます」


 誰もいない家で、一人で夕食を食べる。朝食も昼食も一人で食べた。それが今の俺の日常だ。

 兄弟でもいればまだ良かったのかもしれないが、あいにく一人っ子だった俺は、誰とも話すことがなくなっていった。丸一日誰とも話していない日が連続する。

 近所の店で食材を買う際も、首を縦か横に振るだけになってしまった。近所の人は俺のお袋が死んだことも、親父が家に寄り付かなくなったことも知っているようで、俺に同情をしているためか、言葉を発しようとしない不愛想な俺のことを責めはしなかった。

 俺は、その状況に甘えていた。


「……お袋の墓に行くか」


 食事を終えた俺は外出の準備を始めた。毎日墓参りをしているため、持っていく供え物はもう思いつかなかった。





 集合墓地は町のはずれにある。夕食を食べてから出発すると辺りが暗くなってしまうが、むしろそれが良かった。

 夜に墓地へ行ったら、幽霊になったお袋に会えるかもしれないから。


「と言っても、俺はまだ一度も幽霊を視たことがないんだがな」


 お袋だけではなく、生まれてこのかた何の幽霊も視たことがない。たぶん俺には霊感が無いのだろう。



 墓地に着くと、そこには誰の姿も無かった。夜に墓参りをする人がいないのか、連日墓参りをする人がいないのかは、分からない。どちらにしても、夜に墓地で他人と会うことは滅多に無かった。


「みんなはどのくらいで死んだ人間と決別できるんだろうな」


 こうして毎日墓参りをしている人間は、この町では俺だけなのかもしれない。

 死んだ人間とは決別しないといけないから。いくら悲しくても、生きていかないといけないから。

 現実を生きている限り、死者にだけ心を砕いてはいられない。働かなければ食べるものが無くなるし、子どもがいるなら面倒を見なければならない。俺以外のみんなは、そうやって死者と決別するのかもしれない。

 だが俺は、自分がお袋と決別できる未来が想像できない。何年経っても、何十年経っても、毎日墓地に通い続けるような気がする。


「……って、成人したら自分で稼がないとだから、毎日は無理か。さすがに成人後まで親父に面倒を見てもらうわけにはいかないし」


 だからいつかはお袋が死ぬ前のように、普通の生活に戻らないといけない。普通に町の人たちとコミュニケーションを取って、働いて、笑って。

 ……俺に、出来るだろうか。

 自信は無い。激しく無い。俺はもう一生、笑うことが出来ないような気さえする。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ