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監視と思いの狭間で



「なあ、アサラ」

「何だいきなり」

「笑顔って良いもんだったんだな」

 シュウイチはそう言って笑おうとしたが表情は動かなかった。

「ほんっと何だよいきなり。あ、もしかしてかりんちゃん関連?」

「ああ、練習してる」

「そうかあ、お前がなあ……。それは良いが人前で笑うなよ。かりんちゃんか俺の前だけにしておけ」

 アサラはそう言ってシュウイチの胸に右の拳を軽く当てた。

「なんでだよ」

「オレに良い。オレにお前の笑顔を独り占めさせたい」

「私利私欲かよ」

「まあそんな冗談は良いとして、いきなり笑顔満載になったらみんなが困惑するから少しずつ増やせよ」

「分かった」

「で? かりんちゃんとヤッちゃった?」

 まだだが? と首を振るシュウイチにアサラは目を細めた。

「オレの時は早かったのになあ。まだ親気分がぬけてねえのか?」

「そうかもな」

「でも、近そうだな」

「ん?」

「なんでもねえよ。お前が安らげる場所が増えたのが嬉しいんだよ。友人としても元恋人としても、な」

 アサラはシュウイチに顔を近づけ話があんだろ? 俺に出来る事なら何でも言ってくれと鼻息を荒くした。

「かりんの事だ」

「かりんちゃんの?」

「俺、にんげんをやめようと思う」

 それを聞いたアサラは狼狽えた。

「お、おおお、お前……! かりんちゃんにそれは」

「俺がオオカミだって事だけは話した。アサラ、お前俺の監視役だろ?」

「……、気付いて、いたんだな」

「ああ。オオカミだぞ。匂いですぐに分かったよ」

「そっか。オオカミはイヌだもんなあ」

「イヌと一緒にされるのは心外だが、まあいい。俺はかりんと結婚したい。仔が、かりんとの仔が欲しい。その為に、にんげんである事を、やめる。やめたい」

「そうか。お前の隣、かりんちゃんで埋まったんだな。そっかあ」

 アサラは天を仰いだ。シュウイチが自分に好意を、深い好意を寄せていた事は知っている。判っている。解っていた。振り振られしてきた人生の中で今回の衝撃が1番大きいなとアサラは思った。

「すまん。1番はずっと、お前だと思っていたんだが」

「いや、いいんだ。俺もその思いの強さを知ってるから」

「すまん」

「あやまんなって。実はな、お前の人権を剥奪しろって言われ続けていたんだ。ずっとな」

 シュウイチはえ? と間抜けな声が出た。

 



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