登場人物紹介 その弐
【織田信長の愛娘】……織田信長の姪
前編最終章、『乱世の弦・宿命の長篠設楽原決戦』での視点人物の一人。筝の名手にして、千里眼の異能を持っているかのような鋭い目を持つ。初対面の信長と会った際には、うつけ者の振る舞いが芝居に過ぎないことを瞬時に見抜いて見せた。以後は信長の手元で大切に育てられ、実の娘以上の愛情を注がれる。
成長すると武田信玄の後継者・勝頼へと嫁ぎ、夫だけでなく義父の信玄に加えて武田四天王からも一目置かれる存在となって織田家と武田家をつなぐ使命をほぼ全うしていた。
一方で信長と同じ桁外れの純粋さを持つがゆえに、奴隷商人を始めとする戦争の黒幕たちが女性や子供を売り買いしていることへの憤怒の感情を制御できず、武田家出入りの奴隷商人に対して激しい敵意を剥き出しにしてしまう。重病を患っていた信玄が死んで勝頼の代となった際に粛清の対象となることを恐れた者たちの企てによって暗殺された。
[史実]信長の妹を妻に迎えた遠山直廉の娘。あの信長が手元に置いて育てた唯一の娘であり、同じ信長の姪である茶々、お初、お江の有名な三姉妹よりも特別な待遇を受けた。わずか21歳で短い生涯を閉じるも死因は不明。龍勝院という戒名が残っているものの、不思議なことに長野県にある龍勝寺とは全く関係がない。よほど都合が悪かったのか、どの寺に入ったかなどの記録も抹消され、加えて息子の難産で死んだと事実まで捏造されている謎多き女性。
【明智凛→後の荒木凛】……明智光秀の長女。
1人目の大罪人の娘であり、前編、本編を通じての主人公(表紙イラストでは中央に位置)。織田信長の愛娘と同種の人物。
光秀の亡き妻・熙子の血を濃く受け継いでいる、光秀最愛の娘。少女の頃から人生の目的と自分に与えられた使命を探し続けている変わり者でもある。父譲りの賢さに加えて物事の本質を見抜く鋭い洞察力を持ち、感受性が強く、思いやりがあって優しい反面、感情に流されやすく喜怒哀楽が激しい。
野心とは無縁で無欲な人物だが、やがて戦国乱世に終止符を打つ女帝の誕生に深く関わることになる。
[史実]倫、岸とも。信長の命令で荒木村次に嫁ぐが、荒木家の謀反によって離縁し明智家に戻る。その後、左馬助と再婚。山崎の戦いの後、死んだという公式記録はない。
【阿国】……凛の侍女頭
前編、本編を通じての視点人物の一人。凛より10歳以上年長で、第一の親友(表紙イラストでは右側に位置)。戦災孤児。親戚たちから虐待された過去があり、その性格に暗い影を残している。
まだ少女の頃、桶狭間の戦いの本質を見事に突いて教師の光秀を驚かせた。彼女の持つ類まれな智謀を目の当たりにした光秀は、しばらく後に養育している親戚から虐待を受け続けている事実を知り、激しい憤怒の感情を制御できなくなった。得意の謀略で親戚たちを罠に嵌めて多額の借金を背負わせ、利息を払えなくなった瞬間に彼女を奪い取る暴挙に出ている。自分を窮地から救ってくれた光秀への秘められた想いを持つ。
【比留】……凛の侍女
凛と同年代で、第二の親友(表紙イラストでは左側に位置)。阿国と同じく戦災孤児。南蛮人に奴隷として売られるところを凛に買い取られた過去を持つ。自分を救ってくれた凛を強く慕っている。
【明智光秀】……凛の父
『戦国乱世に終止符を打ち、平和な世を達成したい』。この使命を全うするために生きると誓い、同じ志を持つ織田信長を主君に選んで実質的なナンバー2となる。当代随一の切れ者であり、目的のためなら手段を選ばない策略家の側面も持つ。強大な武力を得るために摂津国を手に入れようと策略を巡らし、凛の運命を大きく変えた。
[史実]最初は幕府の家臣であったが、信長に共感し以後は信長を主君と仰ぐ。姉川の戦い、比叡山焼き討ちなどで活躍し、坂本城や福智山城などを築いた。歴史書では本能寺の変の首謀者とされ、山崎の戦いで羽柴秀吉に敗北した後に落武者狩りに合って殺されたとされる。首は京都で晒されたが、損傷がひどく本物かどうか誰にも分からなかったらしい。
【織田信長】……実質的な天下人
京の都へあと一歩まで迫った戦争の天才・北畠顕家に強い憧れを抱き、『長く続いた戦国乱世を終わらせ、平和な世を達成したい』と志した戦国屈指の英傑。一方で桁外れの純粋さを持つがゆえに、愛娘の死を企てた京の都の武器商人たち、止められなかった武田家の根絶やしを図るようになる。京の都を焼き討ちにして未曾有の虐殺と略奪を行い、やがて長篠・設楽原の地で同志であるはずの武田勝頼と死闘を演じる。
[史実]その類まれなる実力によって実質的な天下人となる。しかし日本統一を目前にして本能寺の変により自害。
【菅屋長頼】……織田信長の側近筆頭
[史実]信長の盟友であった織田信房の息子。信長によって重く用いられた。本能寺の変で討死。
【堀久太郎→堀秀政】……織田信長の側近
前編、本編を通じての視点人物の一人。仙千代とは価値観を同じくする親友の間柄。智謀では仙千代の方が上だと思っている。
[史実]信長にその才能を愛された側近。名人久太郎の異名を持つ。秀吉もその人柄と才能を高く評価し、重く用いたと伝わる。
【万見仙千代】……織田信長の側近
前編、本編を通じての視点人物の一人。久太郎とは価値観を同じくする親友の間柄。正しいことを行いたいと願う純粋な人柄を持ちながら、光秀に匹敵するほどの智謀の持ち主でもある。その人格と才能の両面を信長から深く愛された。
[史実]信長に最も愛された側近中の側近。
【木下秀吉→後の羽柴秀吉、豊臣秀吉】……織田信長の家臣
光秀と同じく信長の志に共感し、行商人組織の親玉から信長の家臣へと転じた人物。行商人の出身を生かして敵の補給線を断ち、敵を飢えさせる戦法を得意とする。
[史実]信長の家臣として三木城飢え殺し、鳥取城飢え殺し、備中高松城水攻めなどで活躍し出世する。本能寺の変後は、山崎、賤ケ岳の戦いに勝利して天下人となる。
【徳川家康】……徳川家当主
信長の志に共感し、信長の盟友となった。戦国屈指の策略家である光秀に対して尊敬の念を抱いている。外見的には小太りの他にこれという特徴はない。
三方ヶ原合戦では大敗したが、浜松の住民に真実を伝えず、「この浜松城が落ちれば男は殺され、女は凌辱され、子供は売り飛ばされる!」とのデマを流して武器を手に取らせ、浜松城内の至るところに配置するなど目的のためなら手段を選ばない側面も持つ。それでも武田軍全軍で総攻撃されれば落城したと思われるが、武田軍の温存を図りたい信玄が勝頼の度重なる諫言を退けて総攻撃を躊躇したため九死に一生を得ている。
[史実]信長の盟友として対武田家の最前線で奮戦する。信長の死後は豊臣政権で五大老筆頭となり、やがて江戸幕府を開く。
【武田信玄】……甲斐源氏・武田家19代目の当主
甲斐国の人々を洪水から救いたいとの純粋な思いから前代未聞の治水事業・信玄堤の工事を開始する。莫大なお金を必要としたために戦争の黒幕との取引を行い、信濃国への侵略戦争を始めた。兵站重視の戦略によって無敵の武田軍を作り上げる一方で、並外れた純粋さと実力重視によって武田四天王、真田幸隆、山本勘助などの優れた人物が彼に忠誠を誓った。
信長と同盟を結んで信長の愛娘を武田家に迎えるものの奴隷商人と武器商人の企てを防げず、復讐の鬼と化した信長から不俱戴天の敵と見なされて同盟はあえなく崩壊、光秀の策略で鉄砲の弾丸と火薬の補給線を断たれて弱体化の危機を招いてしまう。この経済封鎖の打破を目的として西上作戦なる軍事行動を起こした。
[史実]甲斐国の弱小大名に過ぎなかった武田家を、4ヶ国を支配する東日本最強の大名にまで拡大させる。三方ヶ原合戦で大勝するが、しばらくして病死。
【武田勝頼】……武田信玄の四男
前編、本編を通じての視点人物の一人。信長の愛娘の夫であり、父の信玄を超えるほどの軍略の才能の持ち主ではあるが、その清廉潔白な人柄ゆえに目的達成のためなら相手を徹底的に騙し、欺くような行為ができないという致命的な弱点を持つ。これが父や織田信長、明智光秀、木下秀吉などとの差を生むも、武田四天王や真田一族などの優れた人物が彼に忠誠を誓う。
武田四天王の筆頭・高坂昌信の策によって全軍を率いて本拠の岐阜城から京の都へと向かった信長の背後を突く好機を得るが、あえてそれをしなかった。その後も信長との和平を模索し続けるが最後まで叶うことはなく、武田家の生き残りを賭けて長篠・設楽原の地で乾坤一擲の決戦を挑む。
[史実]歴史書では、父が残したものを壊したという愚か者として扱われることが多い。実際に父が残したものは、代償の方がはるかに大きかったのではあるが。
【高坂昌信】……武田四天王の筆頭
上杉謙信との国境を空にして、岐阜城に近い木曽福島城に武田の大軍を集結させるという離れ業をやってのけた名将。
[史実]かつて信玄の側近であり、勝頼からも厚い信頼を受ける。信濃国・海津城を預かって越後国との国境を守り抜いた。
【山県昌景】……武田四天王
武田軍最強との呼び声高い名将。信玄と勝頼からの評価は高く、武田一族の重鎮よりも重く用いられた。
[史実]部隊の軍装を赤一色に統一した、赤備えで有名。昌景軍があまりにも強いために、赤備えは最強部隊の代名詞ともなった。歴史書では、勝頼に疎まれたと事実を捏造されている。
【内藤昌豊】……武田四天王
三方ヶ原合戦では徳川・織田連合軍を一撃で粉砕した名将。
[史実]あの昌景も一目置くほどの名将。その実力の高さは信玄の弟・信繁に匹敵するとさえ言われた。
【馬場信春】……武田四天王
[史実]不死身の鬼美濃という異名を取ったほどの名将。歴史書では、勝頼に疎まれていたと事実を捏造されている。
【武藤喜兵衛→真田昌幸】……武田勝頼の側近
信玄の人柄と実力主義に共感し、絶対の忠誠を誓った真田幸隆の三男。その絶対の忠誠は信玄の後継者となった勝頼に対しても揺るがなかったと言われている。信玄の弟である信繁を深く尊敬するあまり、生まれた次男に信繁と名付けたことで後の真田信繁、別名で真田幸村という戦国屈指の名将を誕生させたことはあまりにも有名。加えて父の親友であった高坂昌信とも親しく、後に昌の一字をもらって昌幸と名乗った。
[史実]真田信幸と幸村の父。生き残るためなら平気で仕える主人を変える策略家として有名であるが、武田家に対する忠誠だけは最後まで全うしていたらしい。
【穴山信君】……武田一族の重鎮
信玄の娘を妻に持ち、勝頼とは義理の兄弟でもある一族の重鎮。低い身分の出身でありながら実力ではるかに上回る武田四天王を目の敵にして何かと粗探しをし、特に山県昌景に対しては重箱の隅をつつくような非難を浴びせ、反論されれば揚げ足を取ろうとするなど、実際には何の実力もない小心者に過ぎないことを自ら証明している中身のない男。
[史実]一族の重鎮でありながら特にこれという功績もない凡人。やがて主人の勝頼を裏切るものの、最後は徳川家康の手でどさくさに紛れて謀殺されたという説が有力になっている。
【武田信豊】……武田一族の重鎮
信玄が最も信頼した弟・信繁の次男。信繁の血こそ入ってはいるが、その実力と人柄、行動力と決断力を何一つ受け継いでいない優柔不断で無能な凡人。実力ではるかに上回る武田四天王の後塵を拝した。
[史実]一族の重鎮でありながら特にこれという功績もない凡人。武田家滅亡時に脱走を図るも裏切りに合って家族もろとも殺された。




