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その知らせが届いたのは舞踏会前日のことだった。
"王宮への帰り道、国王陛下の乗る馬車が暴走して行方不明に"
すぐさま騎士団による捜索が進み、馬車はすぐに見つかった。
しかし崖下で辛うじて原型を留めているそれの中には国王の姿はない。
馬車が崖から落ちる際に投げ出されたのか、はたまた無事なのかはわからないが、国王陛下が見つかることはなかった。
国王の空席をそのままにしておくことはできない。
名が上がったのは公爵令嬢の母を持つ第一王子シルフィだった。
彼は国王陛下の血を強く引いているのか、傲慢で自分以外など虫けらのようにしか思っていないような男だが、後ろ楯は強い。
彼自信も自分が国王になることを微塵も疑う素振りをみせず、すでにそうであるかのような振る舞いをしていた。
その時、声をあげたのはサフィアスだった。
「わたしがこの1週間ほどこの国に滞在したのはエメンディア国とカタルフィーナ国との友好関係を深くするためである。シルフィ殿とは滞在中に何度か交流をさせていただいたが、彼とは友好を築けるとは思わない。申し訳ないが、彼を国王とする場合は先の話は白紙にしていただく」
それは困る、と王公貴族たちがざわついた。
エメンディア国の資源は膨大で、世界でも随一の貿易国だ。
カタルフィーナも例外ではなく、その恩恵に預かっていた。
「それでは八番目の王子を国王にするのはいかがでしょう」
どこかで声が上がる。
「たしかに、滞在中交流を深めていると耳にした」
「わたしもだ」
「オズワルド殿下は母君が…」
「しかし以前のオズワルド殿下であればともかく、最近は頭もきれると評判ですぞ」
あちらこちらで声が上がり、一度王室会議にて議論されることになる。
「僕は、望まれるのであれば国王となることに否はございません」
そう決意表明をしたオズワルドの言葉で、史上最年少の国王が誕生する。
それを聞いたリディアナはみんなに認められたということに喜び、これから背負うであろう責任を想像し、心配していた。
「姉上!」
「オズ、おめでとう!でも本当によかったの?」
「うん、国民のために何かを考えるのは結構好きなんだ」
照れ臭そうな笑顔にリディアナは安心する。
「なにか辛いことがあったら、いつでも頼ってね。その時は一緒にお茶を飲みましょう!」
力強くいうリディアナにオズワルドは微笑む。
「ありがとう、姉上。…それで僕、出来ることを考えたんだ」
「出来ること?」
「塔を解放する、あんなふうに恐怖で縛り付けてもいつか破綻するだろうから」
「それって…」
「貴女の母上は自由だよ」
塔の鍵はクラウドに預けている、そう言うオズワルドをリディアナは思いっきり抱き締めた。
「ありがとう、オズ!」
リディアナはクラウドを探すべく走り出した。




