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次のダンスの講義では、前回は頭を抱えていたフィラー夫人が目を丸くして驚いていた。
「ヒルデリア王女殿下、ステップは完璧ですわ!長期戦を覚悟していましたが、これならば問題ないでしょう」
頑張りましたね、と微笑まれてリディアナは安堵した。
「途中顔が赤くなることが多いですが、それも慣れたら落ち着くでしょう」
そう言われてリディアナは思い出して、また赤面する。
※※
「なるほど」
リディアナとダンスの練習を始めて、開口一番がそれだった。
「殿下は少し、力が入りすぎているみたいですね」
たしかに、自身でもそれは感じていた。
間違えてはいけない、足を踏んではいけない、と思う度に、頭で描くステップとは違うところに足がでるのだ。
「楽しむために、少し練習方法をかえましょうか」
そういって次にかかった曲はスローテンポのものだ。
「こうして、体を揺らすだけのダンスですよ。会話を楽しむときによく踊られるものです」
ダンスを踊るときのように体を近づけたまま、揺らしながら話をする。
最初はとりとめもない最近の話。
それから少し距離を狭められる。
「そういえば、この体勢ならいつでも名前を呼べますね」
ぼそり、と耳元で囁かれて、あの日を思い出す。
ぼん!と音がしそうなほど赤面したリディアナの耳元に顔を寄せたまま、クラウドはくすりと笑う。
「また力が入ってますよ、リディ?」
その瞬間に、かくりとリディアナの膝が折れる。
「ふふ、それは力を抜きすぎです。さあもう一度」
※※
ということを繰り返した結果、上手く力が抜けるようになった。
ただし、それを思い出す度に赤面するようになってしまったが。
講義が終わったあとのリディアナの顔をみてクラウドは微笑んだ。
「上手くできたようですね」
「できましたけど、今度は赤面する癖がついたみたいです!誰かさんのおかげで」
でもステップは完璧です。
そう胸を張ると、クラウドも笑みを返す。
「では、また赤面しないように特訓しないといけないですね?」
艶やかなその表情にリディアナはまた顔が熱くなるのを感じる。
おや…と目を見張るクラウドに、リディアナは恨みがましい目を向けた。
「…クラウドさんのせいですからね」
両頬を押さえながら背を向けるリディアナの後ろから着いていきながら、クラウドは小さく呟いた。
「…今なら魔獣の首でさえ、素手で叩き落とせそうです」
もちろん魔獣はそんな簡単に落とせる首など持っていない。
人間よりもはるかに太く頑丈で、鋼のような皮膚を持つものが多い。
間違っても素手で落とせるものではない。
「なにか言いましたか?」
「いいえ、なにも言っていませんよ」
くるりと振り向くリディアナにクラウドはいつも通りの笑みを向けた。




