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「クラウドさん、今日はご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
自室のソファに優しく下ろされたリディアナは頭を下げた。
それを受けてクラウドはリディアナの隣に腰を下ろす。
「どうしてリディが謝るのですか?悪いのはわたしの両親であり、乱暴を働いた彼らです」
「でも、瞳のことも街中であんな風に皆に知られてしまったし、それにクラウドさんの…」
リディアナは言葉を切り、時間を確認する。
「クラウドさん!パレード!パレードの時間が!!」
(現在14時15分、急げば間に合うのではないだろうか)
「リディ、パレードなどどうでも良いのです。わたしは怖い思いをしたリディを一人にしたくありません」
「駄目です、クラウドさん。騎士団長のお披露目を楽しみにして遠くから来る人もいるんですよね?もちろん王都の皆さんも楽しみにしているはずです」
リディアナは乱れたままのクラウドの髪をそっと撫で付け微笑んだ。
「私は大丈夫です」
「…わかりました。それが貴女の望みなら従いましょう」
クラウドは諦めたように短く息をはいた。
「瞳についても想定外ではありましたが、問題ありません。おそらくは数日中に国王と謁見することになると思いますが、必ずお傍にいます」
リディアナがわかったと頷くと、クラウドはソファから立ち上がった。
「では、仕方がないので行ってきます」
「いってらっしゃい、クラウドさん」
行きたくないオーラをだすクラウドに苦笑しながら送り出そうとして、リディアナは言わなければいけないことを思い出す。
「クラウドさん、今日は任命式の途中なのに助けに来てくれてありがとうございました。…私、クラウドさんの顔をみた瞬間にすごく安心して、もう大丈夫だって思えたんです」
リディアナは自身の両手でクラウドの右手をそっと持ち上げた。
そしてありったけの"ありがとう"を込めて、その手の甲に唇で触れる。
女性から男性の手の甲へ送るキスは"感謝"だったはず。
それを実践してみたのだが。
リディアナは反応がないクラウドを不思議に思い見上げる。
そこには今までみたことがないくらい赤面したクラウドがいた。
(な、なんか恥ずかしい…)
自分まで照れ臭い気持ちになり、おずおずと手を放す。
「なんか、ごめんなさい…!」
「いえ…」
居たたまれない気持ちでいると、クラウドが動いた。
自身の右手を持ち上げて、先程リディアナがキスを贈ったところに唇を当てた。
「ありがとうございます」
今度こそクラウドが出ていき、部屋にはリディアナ一人が残される。
思い返す。
目を閉じて、幸せに浸るようにあどけない笑顔で唇をよせる姿を。
(それは、間接…間接き、きすというのではないでしょうか!!)
温かいお茶を運んできたマリアが、赤くなった頬に両手を当て固まったリディアナをみつけるのは数分後のこと。




